HOMEニュース「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催

ニュース

「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催

カテゴリ:その他活動
2021.06.10
「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催(写真:フォート・キシモト)
「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
日本スポーツ記者協会の志方浩文会長(上)、籾井圭子JOC広報専門部会部会長(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は5月31日、日本スポーツ記者協会とともに「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」をオンラインで開催しました。本セミナーはオリンピック・ムーブメント推進事業の一環として、メディアと国内競技団体(NF)の相互理解を図ることを目的に行われ、今年度は「多様性について考える」をテーマに、国内スポーツジャーナリストやJOC加盟団体関係者、東京2020組織委員会などから約100人が参加しました。

 はじめに、日本スポーツ記者協会の志方浩文会長(朝日新聞社)が登壇し「スポーツの多様性について考えることは、とても意義のあることだと考えております。本日は杉山文野さん、河合純一さん、馬瓜エブリンさん、小谷実可子さん、それぞれの皆さんの見識から色々と勉強させていただきたいと考えておりますので、本日はどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶しました。

 続いて、籾井圭子JOC広報専門部会部会長が本セミナーの趣旨を説明。「まずは何ができるかを考える前に、しっかりと我々自身が多様性についての知識を得ることが重要と考え、今回のテーマに至りました。今日は登壇者の皆さまから様々なインプットをいただきながら、多様性が何を意味するのかを学び、そのうえで多様性の受容に向けてスポーツ界ができることは何か、あるいは受容するのに足りない部分はどこかということを一緒に考えていく機会になればと考えています」と述べました。


「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
杉山文野さん(写真:フォート・キシモト)

■LGBTの視点からスポーツ界の多様性を考える

 次に、本セミナーの最初のプログラムである基調講演が行われ、「スポーツ界の多様性を考える~LGBTの視点から~」と題し、元フェンシング女子日本代表でNPO法人東京レインボープライド共同代表理事である杉山文野さんが登壇しました。

 トランスジェンダーでもある杉山さんは、まず多様な性の存在やLGBTについての基礎知識を解説。トランスジェンダーは日本では「性同一性障害」と疾患名をつけるケースもあるが、「世界的に見れば障害でもなんでもなく、一つの生き方なんです」と強調しました。一方で、性のあり方は「目に見えない」ことが、LGBTやセクシャルマイノリティを考える際の1つのキーワードであると語った杉山さん。セクシャリティは目に見えづらい、つまり自己申告であることから、LGBTの人たちが普段の生活で感じている苦悩や、カミングアウトできない日本社会の課題などを実体験を交えながら説明するとともに、自身の転機も高校生当時にカミングアウトしたことだったと話すと、「もちろん、そこからすぐに全てがうまくいったわけではないですが、友人たちにも受け入れてもらい、少しずつ自己肯定感を取り戻して、今に至るのではないかと思います」と振り返りました。

 そして、これらLGBTに関する基礎知識を踏まえ、LGBTと企業、LGBTとスポーツにおける現状の課題や、取り組みへの重要性についても言及。特に日本のスポーツ界においてはカミングアウトすることがまだまだ難しい現状であることを述べた一方、この問題を考える際のキーワードとして杉山さんは「心理的安全性」を挙げました。これはLGBTに限らずスポーツ界全体の課題であると話すと、「発揮できていないポテンシャル、潜在能力を皆さんはもっと持っている。だから、この心理的安全性を高めていけば個人としてもチームジャパンとしても、もっともっと活躍できる、そんな伸びしろがたくさんあるということだとも思っています」と述べました。

 最後に、オリンピック憲章に掲げられているジェンダー平等や多様性についても触れた杉山さんは、メディアに対して正しい発信を求めるとともに、「決してLGBTのことだけ分かってくださいというつもりはありません。誰だって一人一つくらい、人に言えないマイノリティ性ってあるのではないか。マイノリティの課題に向き合うことはきっとマジョリティの課題に向き合うこと。マイノリティにとってやさしい社会、スポーツ界というのはきっとマジョリティにとってもやさしい社会、スポーツ界になっていくのではないかと思います。ぜひ、今日の話がLGBTに限らず、これからの多様な課題に向き合うときの一つのきっかけなり、ヒントになれば嬉しいなと思います」とまとめました。


「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
日本パラリンピック委員会の河合純一委員長(写真:フォート・キシモト)
「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
馬瓜エブリン選手(写真:フォート・キシモト)

■パラリンピックを通して考える共生社会

 続いてのプログラム「学び(1)」では、「パラリンピックを通して考える共生社会」と題し、日本パラリンピック委員会の河合純一委員長が講演を行いました。

 前提として、“障がい”とは個人の側にあるのではなく、社会が生み出しているものであるという考え方が重要であり、またパラリンピックはそうした様々な社会課題の改善、解決に取り組んでいるものであることがポイントだと述べた河合委員長。そのことを踏まえ、パラリンピックの始まりとその歴史、パラリンピックが掲げる4つの価値「勇気」「強い意志」「インスピレーション」「公平」、また、国際パラリンピック委員会が目指す究極のゴールである「パラリンピックムーブメントの推進を通してインクルーシブな社会を創出すること」などについて解説しました。

 また、地球上には何らかの不自由さ、不便さを感じている人が2割程度いると国際連合が発表しており、そうした方たちへの配慮として、東京2020大会でもアクセシビリティを重視した取り組みを行っていることを説明。その中の例として、競技会場や宿泊、選手村においてパラリンピアンが快適に過ごせ、誰もが使いやすいユニバーサルデザインを目指していると述べました。

 そして、パラリンピックとは「人間の可能性の祭典なんだと思っています」と力を込めた河合委員長は、最後にまとめとして「共生社会とは『共に生きる』という名の状態から、『共に生かしあえる』という意味の共生社会に進化、発展していくべきだと思います。個性をすりつぶして混ざり合うミックスジュース型ではなく、お互いの良さを生かしあえて、フルーツの素材や食感、色合い、味わいを感じながら混ざり合うフルーツポンチ型の共生社会というのが、これから我々がしっかり取り組んでいかなければいけないポイントなのではないかと思います」と提言しました。

■多様性について馬瓜エブリン選手が体験談を語る

 続いての「学び(2)」では「多様性について」と題し、バスケットボール女子日本代表候補である馬瓜エブリン選手が自身の体験について語りました。

 両親ともにガーナ出身の馬瓜選手は愛知県で生まれ育ち、14歳の時に家族そろって日本国籍を取得。しかし、幼いころから肌の色で差別を受け、「悲しい気持ちでいっぱい。胸が張り裂けそうな思いでした」と打ち明けました。しかし、母から教えられた「自分を愛するかのように隣人を愛しなさい」という聖書の一節にある言葉によって悩みから救われ、人生を変えることができたと言います。「私は当初、その言葉の意味が理解できませんでした。でも、幼いながらに嫌な気持ちを抑えて、自分から明るく接する態度に変えることで、周りも楽しく話しかけてくれるようになりました」と馬瓜選手。さらに、その頃から本格的に始めたバスケットボールを通して理解してくれる人たちも増え、「私自身、人と違うところがあるとすごく恥ずかしかったり、表に出られなかったりしたのですが、母からの言葉をきっかけに自分の人生が変わった気がしました」と振り返りました。

 そして、この経験から学んだこととして「今日これまで話されてきた多様性とか人種の問題、またセクシャリティ、障がいなども含めて、結局のところ、愛と創造力の問題だと思います」と強調。一つの物差しでしか測ることができない人が他人を傷つけるのではないかと述べるとともに、自身の体験から感じている日本社会の課題も挙げました。

 最後に、一番伝えたいこととして「自分とは違う人がいたら、愛をもってその人を受け入れてください。全力でそうした人を応援できるようになっていただきたいと思います」と述べた馬瓜選手。「どんなアスリートであっても日本のために戦うと決めた選手であれば、全力で背中を押すような環境であってほしい。そのためには、やっぱり日本はもっと世界に目を向けて、愛をもって、創造力をフル活動させて、自分とは違うところがある人を受け入れるということを、オリンピックに向けてももっとできることだと思いますし、スポーツに限らず、そうした心で接してほしいと思います」と呼びかけました。


「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
参加者による活発な意見交換が行われた(写真:フォート・キシモト)

■参加者による意見交換

 次の「意見交換」では杉山さん、河合委員長、馬瓜選手が参加し、朝日新聞の稲垣康介さんがモデレーターを担当。話題は東京2020大会招致決定から現在までの世の中の変化、マイノリティとしてスポーツに救われた経験、オリンピック・パラリンピックの大会分離についてなど、多岐にわたりました。密度の濃い意見交換を終え、杉山さんはメディアへの要望として「スポーツに限らず、問題を解決するために発信することが本来あるべき姿。問題をどう解決していくのか、しっかり当事者たちの言葉を聞きながら発信していただけると有り難いです」と伝えました。


「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
小谷実可子東京2020大会組織委員会スポーツディレクター(写真:フォート・キシモト)
「2021年度スポーツジャーナリストセミナー」を開催
宮嶋泰子JOC広報専門部会副部会長(写真:フォート・キシモト)

■東京2020大会組織委員会からの情報提供

 続いて、「情報提供」として小谷実可子東京2020大会組織委員会スポーツディレクターが、同大会での取り組みを紹介しました。橋本聖子東京2020大会組織委員会会長の就任後、同組織委員会ではジェンダーイクオリティ(平等)と調整と調和の推進を行うチームが立ち上がり、小谷スポーツディレクターがチームヘッドに主任。チームで「目に見える取組」「ムーブメントを起こす」「レガシーに繋げる」という3つの柱を設け、活動を推進する旨を語りました。

 最後に、宮嶋泰子JOC広報専門部会副部会長が「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)という言葉が最近流行っていますけれども、誰もが心の中に持っているものですよね。それに一人ひとりが気づくこと、これが全てを変えていく基になるのだと思います」とコメントし、セミナーを締めくくりました。





ページトップへ