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【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て

カテゴリ:オリンピック
2019.06.14

 開幕が迫ってきた2020年東京オリンピック。JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、今大会の追加種目である野球、ソフトボール、スポーツクライミング、空手道、サーフィン、ローラースポーツでオリンピックを目指すアスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いをさらに詳しくお届けします。


【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
空手道・形の清水希容選手(写真:作田祥一)
【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
「会場が一体となるような演武をめざしたい」と語る清水選手(写真:フォート・キシモト)

空手道:清水 希容選手

「空手道」には、仮想の敵に対する攻撃技と防御技を一連の流れとして組み合わせて演武を行う「形」と2人の選手が1対1で戦う「組手」がある。女子形の清水希容選手に、東京2020大会にかける思いを聞く。(Text/中村聡宏)

■最高の笑顔で笑いたい

――空手道がオリンピック競技に決まった時はどんな思いでしたか。

 オリンピック競技の追加種目に正式決定したのは2016年の8月でしたが、その1カ月半後に世界選手権を控えていました。空手の世界では、2年に1度の世界選手権が最高峰の大会で、「2連覇を達成して辞めよう」と2年間過ごしてきたので、まずはそこに集中したいと思いました。オリンピックが決まったことはうれしかったのですが、その時点でオリンピックについて考えることができませんでした。世界選手権で連覇を果たした後、「世界最高の舞台ができた以上今辞めることはできない」と改めて考え、競技を続けることにしました。東京で開かれるオリンピックですし、特に武道の聖地である日本武道館で、オリンピックという舞台に立つことは生涯一度しかないと思うので絶対に出場したいです。

――印象に残るオリンピックは。

 オリンピック競技採用決定後のリオデジャネイロオリンピックはかなり意識して見ました。テコンドーやアーチェリーには所属先の同期選手が出場していたので、親近感を持って見ました。彼女たちと話をすると、オリンピック競技の選手は長いスパンで競技のことを考えていることに驚きます。2020年はもちろん、その先のオリンピックのことも考えて行動しているので器が違うと感じました。

――東京2020大会まであと1年あまりですね。

 緩急、技の強弱など、表現力を高めるのが今の課題です。正直なところ、期間が足りないと感じて焦ることもありますが、1年間無駄なく過ごせるように、周囲の人たちとも相談しています。今は苦しいことも多く、周囲を笑顔にできない悔しさもありますが、必ず恩返ししたいですね。
 オリンピックでは、皆さんに「すごかった」と喜んでもらえるよう心に残るいい演武をして金メダルをとり、最高の笑顔を見せたいです。戦ってきたライバル選手たちと一緒に、笑顔で表彰台に上がれるような女子個人形にしたいと思っています。

■会場が一体となる演武をめざして

――清水選手が考えるいい演武とは

 私が競技をする上で考える最高の演武とは、審判、会場のお客さんを含めて全員が引き込まれて見入ってしまい、会場が一体となるような演武です。単なる自己満足ではなく、会場の全員で一つのものをつくり上げていくような感覚。オリンピックの舞台で、それが実現できればいいと思っています。

――これまででベストな演武は。

 ないです(笑)。形の演技は2分から3分程度。私も理想をもって戦っていて、動きの中で自分の思い通りに動けたとか流れがよかったということはあります。ただ、本当に自分を表現できたかどうか、見えない相手に対して繰り出した技によってダメージを与えた手応えを感じるところまで表現し切れたかどうかという点はまだまだ課題を感じます。

――普段の柔和な表情に対して、いざ演技となると表情、声、雰囲気が一変しますね。女優やアーティストに通じるような表現力を感じます。

 ありがとうございます。最近「アーティストのようだね」と言っていただくことが多くなりました。私は表現をすごく大切にしているので、競技としての空手に携わる者としてはうれしく思っています。また、武道としての空手の視点からは、想定して戦っている相手が見えるかのような力強さという観点で表現を高められるようにしたいですね。

――空手が注目されることについてはどう感じていますか。

 空手の認知度が上がるのは私もうれしいです。3年前に東京オリンピックが決まり、注目される機会が増えてきましたし、空手の形と聞いて「あの速い動きの空手だよね」と分かっていただけるようになってきたのはうれしく思っています。一方で、街中で声をかけていただくことも増えて、日常から責任を持って行動しようと心がけるようにもなりました。


【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
将来はコーチとしてもトップになることが夢という(写真:作田祥一)
【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
アジア大会は2014年、2018年と連覇を達成した(写真:アフロスポーツ)

――空手家は日常、どのように過ごしているのでしょうか。

 私は一日中道場にこもっていることが多いです。空手には「組手」と「形」とがありますが、形は練習する技の種類が多いのでどうしても練習時間が長くなってしまいがちです。でも、空手に打ち込んでいることが楽しいので、オフの日も誰かに誘ってもらわないと出かけるのが面倒になってしまいます(笑)。また、空手に生かす知識を増やすために、自己啓発系などさまざまな本を読んでいます。

■空手の魅力を伝えたい

――清水選手ご自身は、東京2020大会の先についてどんなことを考えていますか。

 東京オリンピックを一番のピークにしたいので、その先の競技に関しては分からないですが、いつか必ず引退をする時がくるので、指導者として一から勉強をして知識を増やして、コーチとしてもトップになりたいという夢はあります。自分自身が後進に憧れられる存在になりたい気持ちもありますが、一方でもっともっと上を見た選手を育てたいです。主観的な立場の選手と客観的な立場のコーチとでは、全く違う知識が必要になると思うので、大変そうな反面、楽しみでもあります。

――選手は主観的とおっしゃいましたが、形は自分自身を客観的に見なくてはいけない競技だと感じます。

 そうですね。基本的に練習は一人なので、普段からビデオを撮ってモニターに映して確認します。コーチと一緒の時は、練習を通して自分の主観的な感覚と、コーチの客観的な感覚を言葉に出してコミュニケーションをとり、その後ビデオを見て感覚を鮮明にしてすり合わせます。
 試合では、国や大会によって、マットも、会場の雰囲気も、審判団の見方も違います。審判の無言の圧力に負けないように、というような駆け引きもあります。ただ自分自身が思った通りの動きができるかどうかだけではなく、自分の演武に対する感覚と審判の採点を分析して、自分の考え方や見せ方に反映させていくことも大切です。


【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
東京2020大会のピクトグラム発表イベントで笑顔を見せる清水選手。関連イベントへの参加も増えている(写真:アフロスポーツ)

――いつ頃からそのように考えるようになったのですか。

 小学生の頃は習い事で楽しく空手をやっていました。中学時代、勝敗を気にするようになって負けたくない気持ちが強くなり、全国大会で初めて勝った時にその喜びを知ってしまって、以来やみつきになりました(笑)。

――内なる戦いであると同時に、大会では1対1で対戦しながら勝ち上がっていく要素もありますね。ライバルの存在はどう考えていますか。

 最大のライバルはサンドラ・サンチェス選手(スペイン)です。試合になったら相手の演武は見ないで自分のことだけに集中しますが、稽古では意識しています。彼女はどういう練習をしているだろうと想像したり、試合で変えてきたポイントを研究したりして、自分の演武をどうするか考えます。自らを奮い立たせる存在です。

――東京2020大会を機に、競技の魅力をどのように伝えていきたいですか。

 選手ごとに特徴があるので、同じ形を打っても同じようにならないのが面白いと思います。力強さ、スピード、美しさなど、単純に見て感じてほしいと思います。自分自身としては、最終的に会場の皆さんとつながって引き込むような形をしたいと思っていますし、そういう自分の演武を通して空手の魅力を伝えたいです。

 年齢性別を問わず、いつでもどこでもできるのも空手の魅力。全身運動のスポーツであると同時に、武道の要素もあるので礼儀作法も身につきます。見るだけでなく、空手をやる人が増えるとうれしいですね。


【東京2020インタビュー #4】清水 希容:聖地で頂点を極めることを夢見て
(写真:作田祥一)

■プロフィール
清水 希容(しみず・きよう)

1993年12月7日生まれ。大阪府出身。小学3年で空手道を始める。高校時代にインターハイ優勝、2014年、大学3年時に世界選手権で初出場・初優勝。16年には世界選手権連覇を達成。14年、18年とアジア競技大会では金メダルを獲得。ミキハウス所属。





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