日本オリンピック委員会(JOC)は8月1日と8日の2日間、愛知・名古屋アジア大会に向け「TEAM JAPAN Building Up for 愛知・名古屋アジア競技大会」を開催しました。
本イベントは、愛知・名古屋アジア大会TEAM JAPANのアスリートを対象に、競技間の連携を図るとともに、TEAM JAPANとしての自覚と責任、連帯感の醸成を目的として開催されたものです。1日には144名、8日には104名のアスリートが参加し、競技の垣根を超え交流を深めました。
イベントの冒頭では、愛知・名古屋アジア大会TEAM JAPANの井上康生団長が登壇し、日頃から過酷なトレーニングを重ねるアスリートたちへ深い敬意を表した上で、熱いエールを贈りました。
井上団長は、1994年の広島大会以来32年ぶりとなる自国開催の意義に触れ、「地元の声援を間近に感じて戦う経験は、アスリート人生の中でも滅多にない貴重な機会であると同時に、日本代表としての誇りと責任を持った振る舞いがこれまで以上に求められる」と語りかけました。
また、今大会のTEAM JAPANのコンセプトである『ともに、一歩を踏み出す勇気を。』という言葉を引き合いに出し、「挑戦のフィールドや抱える課題は競技ごとに異なるが、だからこそ一つのTEAM JAPANとして結束し、お互いを信じて戦うことに大きな価値がある」と力説。初めて競技に触れた日や怪我を乗り越えた日など、アスリートたちがこれまで積み重ねてきた“一歩”に想いを馳せ、「踏み出した先には必ず新しい景色と成長がある。競技の垣根を越えて刺激し合い、一つの大きな力に変えていきましょう」と呼びかけました。
さらに、JOC選手強化本部が掲げ、自身の指導現場でも大切にしてきた『人間力なくして競技力向上なし』という理念を改めて強調。「勝つための準備を尽くすのは当然だが、その土台にあるのは感謝や礼節、仲間を尊重する人間力であり、真摯に戦う姿勢こそが、応援する人々の心を動かし、次代を担う子どもたちに大きな夢や希望を与える」と、スポーツの本質的な価値をアピールしました。
最後に「試合が近づき不安や緊張を感じたときこそ、自らの努力とチームの仲間を信じてほしい。TEAM JAPAN一丸となって最高の大会を作り上げましょう」と強く訴えかけ、集まったアスリートたちの背中を押しました。
その後、JOC職員からの大会概要説明や味の素株式会社からの大会時のサポート体制の説明に続き、「インテグリティ」をテーマにしたトークセッションが行われました。
1日に登壇した入江陵介さん(水泳/競泳)は、高校2年生で初めて日本代表に選出された2006年のドーハアジア大会を振り返り、「当時は憧れの先輩方と同じ代表ジャージを着て戦うことが信じられない気持ちでした。しかし、アジア大会は選手村の雰囲気を含めて非常に面白く、日本代表としての最初の大きな一歩になりました」と懐かしそうに語りました。
また、『インテグリティ(健全性・誠実性)』をテーマに、アスリートの日常的な振る舞いや自覚について言及。「インテグリティと聞くと『〜をしてはいけない』という制限をイメージしがちですが、そうではなく『自分たちがどう見られたいか、どうありたいか』というポジティブな意識を持つことが大切です」と力説しました。
過去の経験から、遠征先や普段の行動の一つひとつが『TEAM JAPANの価値』を作ることに触れ、「日本代表となるアスリートは常に多くの人々から見られる存在であり、それが代表としての価値でもあります。自分の振る舞いを通して子どもたちに夢をお届けしたり、ファンを増やしたりしていくことが、巡り巡って将来の自分自身へも還元されます。見られることを恐れるのではなく、前向きな意識を持って代表活動の期間を存分に楽しんでほしい」と、集まったアスリートたちにアドバイスを贈りました。
さらに、32年ぶりの自国開催となる今大会の特別感について語り、「東京2020大会はコロナ禍による無観客で開催され、私自身もどかしい思いもありました。だからこそ、家族や友人が気軽に会場へ応援に駆けつけられる今大会が本当に羨ましく、素晴らしい機会だと感じます。この貴重な巡り合わせをぜひ心から楽しんでほしい」と期待を込めました。
最後に、今大会のTEAM JAPANコンセプトである『ともに、一歩を踏み出す勇気を。』に触れ、「自国開催だからこそ、見られる立場をポジティブに捉えてほしいです。自分たちの行動に自信を持って発信し、スポーツの盛り上がりをさらに加速させ、ロサンゼルス2028大会へと勢いをつなげていきましょう」と熱い言葉で締めくくり、会場を大いに盛り上げました。
8日に登壇した渡部暁斗さん(スキー/ノルディック複合)は、オリンピックに5大会連続で出場した豊富な実績と経験を交えながら、自身の失敗談をもとにインテグリティの重要性を語りました。
渡部さんは「インテグリティ」という言葉について、「難しく捉えがちですが、誹謗中傷を受けず、気持ちよく応援してもらえるアスリートになること。これが本質であり、最も簡単に理解できる捉え方です」と説明。その上で、JOCのシンボルアスリートを務めながらも「昔はシンボルとは言えないようなトガったアスリートだった」と、若手時代の失敗談を明かしました。
競技に情熱を持つあまり、メディアからの意図的な質問に不満を抱き、テレビの生インタビューで不遜な態度をとってしまった経験を告白。「当時は自分の言葉で競技の面白さやレース展開を語りたい気持ちが強すぎ、受け答えの中で反発してしまいました。言葉を正しく扱う力が足りなかったと猛省し、そこから本を読むなどして言葉の力を磨いていきました」と述懐しました。
自身の苦い失敗を経て得た学びとして、「質問をうまくかわしつつ、自分の伝えたいメッセージに繋げていく技術は、自分自身を守る武器になります」と強調。また、近年のアスリートが型にはまった受け答えをしがちな風潮にも触れ、「失敗や批判を恐れて安全な言動に終始するのではなく、言葉の力を磨き、個性を出していってほしい。過度な炎上は避けるべきですが、素直な感情や自分らしさを出していく姿勢こそが、人々の心を動かし、応援される選手になる鍵です」と呼びかけました。
会場のアスリートに「どのような選手を応援したいか」と問いかける場面では、参加者から「結果が良い時だけでなく、上手くいかなかった時でも素直な気持ちを表現できるアスリート」という意見が上がると、渡部さんも深く頷き、「ありのままの自分や悔しがる姿を真摯に見せられるアスリートこそ、ファンとともに戦える選手です」と共感を示しました。
最後に、32年ぶりとなる自国開催のアジア大会に向けて、「今大会には約900人のアスリートが参加します。大勢のメダリストが生まれる中で、いかに自分だけの個性を発揮し、スポーツの魅力をアピールできるかが重要になります。見られる立場を恐れず、自分の言葉と個性という武器を持って、自信を持って大会に臨んでください」と力強いエールを送り、トークセッションを締めくくりました。
インテグリティのプログラムの後、アスリート同士の交流を深める一体感醸成プログラムが実施されました。
1つ目のプログラムは『TEAM JAPAN CHALLENGE ARCADE』と題され、入場時にランダムで結成された競技横断のグループごとに、さまざまなアトラクションに挑戦して点数を競う体験型ゲームがスタートしました。
その最初の種目として、ダブルダッチの世界大会で2連覇を果たしたパフォーマンスチーム『FLYDIGGERZ(フライディガーズ)』が登場。アクロバティックで躍動感あふれる圧巻のパフォーマンスを披露し、会場の熱気を一気に高めました。続いて、同チームのパフォーマンスと連動した「スピードクイズ」が行われ、アスリートたちは自身の動体視力に挑戦しました。これは、FLYDIGGERZのメンバーが30秒間で跳んだ超高速ステップの回数を各チームで予想してスケッチブックに記入するゲームです。目の前で繰り広げられる世界最高峰のスピードに歓声が上がる中、正解発表では近い数字を当てたチームから大きな歓声が湧き上がりました。
その後、各グループは会場内に用意された多様な体験ブースへと向かい、だるま落としやグラウンドゴルフ、モルック、クレーンゲーム、セルフフォトブースでの記念撮影といった各種アトラクションに挑戦。アスリートたちは初対面のメンバーも多い中、作戦を練ったり声を掛け合ったりしながら真剣かつ笑顔でアトラクションを楽しみました。真剣勝負さながらに熱く盛り上がる中で自然とハイタッチが交わされるなど、競技の垣根を越えたチームワークと連帯感が一気に醸成されていきました。
続いて行われたプログラム『TEAM JAPAN ONE TEAM CANVAS』は、アスリートのAIリテラシー向上を図るとともに、最新の生成AIを活用して「TEAM JAPANを体現するバンダナ」をグループごとに制作するワークショップです。
冒頭では、AI担当者およびJOCアスリートアカデミーの担当者が登壇。スポーツ分野におけるAI活用の可能性や、生成AIツールへ適切な指示(プロンプト)を与えるための5つの要素(「役割の付与」「目標の定義」「聞き手の指定」「制限事項の提示」「出力形式の指定」)について解説が行われました。アスリートたちは、AIを自身のアイデアを具現化するための思考パートナーとして捉える視点を学びました。
ワークショップは「自己紹介」「アイデアの書き出し」「要件整理」「デザイン制作」「発表」のステップで進行。まず各グループで「あなたにとってのTEAM JAPANとは」「ともに一歩踏み出したいこととは」という2つのテーマに対し、アスリート一人ひとりが手書きの付箋(ポスト・イット)に自身の想いやメッセージを書き出しました。
続いて、グループ内で話し合いながら共感する意見を集約し、付箋をスマートフォンやタブレットで撮影して生成AIにアップロード。AIとの対話を重ねることで、出された多様な意見や情熱を集約し、「情熱」「結束」「挑戦」といったチーム独自のコンセプトへと一気に言語化・要件整理していきました。
さらに、整理されたコンセプトや指定のキーワードをもとにAIへデザイン制作を依頼。各テーブルの画面上に「ヒーロー映画のキャラクターのような力強さ」「和の伝統モチーフと未来感の融合」など、各チームの個性が詰まった色鮮やかなバンダナのデザインが生成されると、あちこちから大きな歓声と驚きの声が沸き上がりました。
代表チームによる成果発表では、デザインに込めた熱いメッセージやAIとの対話における工夫が披露され、会場は一体感あふれる大きな拍手に包まれました。作成されたバンダナのデジタルデザインは、大会期間中に選手村や各拠点に掲示され、離れた場所で戦う選手たちをつなぐ連帯感のシンボルとして活用される予定です。アスリートたちはデジタルツールの利活用と創造的なチームビルディングを通じて、TEAM JAPANとしての絆をより深めました。
すべてのプログラムを終えた後、参加したアスリート全員による記念撮影が行われました。
イベントのフィナーレを飾る締めくくりでは、再び井上団長が前へ立ち、「『GO!』と合図をしたら、力強く『TEAM JAPAN!』と応えてほしい」と呼びかけ、全員で掛け声の練習を実施。次第に熱を帯びる会場の空気に、井上団長からも笑みがこぼれました。
そして迎えた本番。井上団長の「GO!」という力強い発声に合わせ、会場全体から「TEAM JAPAN!」と地鳴りのような歓声が響き渡りました。
競技の垣根を越えて結ばれた確かな絆と、自国開催となる愛知・名古屋アジア大会に向けた並々ならぬ熱意。最後は万雷の拍手と笑顔に包まれる中、本イベントは盛大に幕を閉じました。
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