日本オリンピック委員会(JOC)は7月25日と26日の2日間、「TEAM JAPANシンボルアスリート ソーシャルアクション」として、阿部一二三選手、阿部詩選手とともに「ABE CUP 2026 supported by パーク24」を宮城県仙台市のゼビオアリーナ仙台で開催しました。
本企画は、未来を担う子どもたちが柔道を楽しみ、仲間と切磋琢磨する機会を設けることを目的とし、2023年に兵庫県で実施された第1回、2024年に神奈川県で実施された第2回に引き続き開催されました。第3回となる今回は、柔道に励む全国の小学6年生134名(男子87名、女子47名)と中学1年生125名(男子79名、女子46名)が、一二三選手、詩選手の前で熱戦を繰り広げました。
■1日目(中学1年生大会)
開会式が始まって一二三選手と詩選手が登場すると、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。開会の挨拶で一二三選手は「まずは柔道を楽しんでやってほしい。勝ち負けのある勝負の世界ですが、一番は楽しむ気持ちを持って試合に臨んでもらえたら」と語り、詩選手も「みなさんの熱い戦いを見られることをすごく楽しみにしています。全力で頑張ってください」と選手たちへ温かいエールを送りました。続くトークセッションでは、自身の中学時代を振り返りながら「大会や練習を通して何か1つでも自信をつけるきっかけにしてほしい」(一二三選手)、「自分の柔道をいかに試合で出せるかを意識して練習していた。1つのきっかけで強くなれるチャンスはたくさんある」(詩選手)と、成長の糧となる心の持ち方をアドバイスし、締めくくりに一二三選手が「自分の持っている力をすべて出し切って頑張ってください」と力強く呼びかけ、詩選手も「全力で戦う姿は素晴らしいですし、畳の上に立てることへの感謝を忘れず、戦ってください」と温かい言葉を贈り、集まった選手たちの背中を押しました。
そしていよいよ試合開始。男子5階級、女子3階級に分かれて行われた個人戦では、日頃の厳しい稽古で磨き上げた技と意地がぶつかり合う熱戦が続出しました。技を繰り出す鋭い眼差しや、畳を降りて溢れ出す涙は、この大会にかける思いの深さを物語っており、客席の保護者や指導者からも1ポイントごとに大きな声援が飛び交いました。一二三選手と詩選手も終始温かい視線を送り、選手たちの気迫あふれる戦いぶりに惜しみない拍手を贈っていました。
大会を締めくくる表彰式では各階級で入賞を果たした選手たち一人ひとりに、一二三選手、詩選手が特製メダル、ABE CUP、副賞を贈呈して記念撮影。続けて一二三選手と阿部詩選手による大会総評および技の実演解説が行われ、未来の日本柔道界を担う子どもたちへ向けて熱いアドバイスとエールが送られました。
総評の中で詩選手は「一人ひとりが『勝ちたい』という気持ちで戦う姿を見られて、とても充実した一日になりました」と選手たちの健闘を称えました。そのうえで「自分の得意技を持つことの大切さ」に加え、技の掛け切りや組み際の意識について実演を交えながら解説。「途中で手を離さず、最後まで押し切ることが大切。中学生の時期からは、大きく高く入る技を意識することで、将来ポイントを取りやすくなります」と、実践的なアドバイスを伝えました。
続いて登壇した一二三選手は、レベルの高い試合展開に触れつつ「1つの得意技だけでなく、前後の技の連動やフェイントを使うことで、相手の反応を利用して少ない力で投げられるようになります」と展開作りの重要性を解説。得意の袖釣込腰などを実演しながら「相手に柔道衣を持たれても焦らず、まず自分の組むべき場所を徹底して取りに行くこと。練習の中で『相手を投げられる組み手』を追求してほしい」と語りかけました。
質疑応答の場面では、子どもたちからの「背負い投げのコツ」や「組み手が遅くなったときの対処法」といった質問に対し、二人は真摯に回答。「相手に後ろの技を意識させてから担ぎ技に入る」「組み手は1対0または対等の形を作ること、練習で自分の得意な形を模索することが上達への近道」などと伝え、子どもたちは世界トップレベルの指導に目を輝かせながら耳を傾けていました。
続けて、味の素株式会社の栗原秀文氏を講師に招き、一二三選手、詩選手とともに食の大切さを学ぶ「勝ち飯®」教室が開催され、アスリートの栄養サポートを手掛ける同社の取り組みをもとに、強靭な心身をつくるための食事術が紹介されました。栗原氏は「体をつくる(タンパク質)」「動かす(糖質)」「整える(ビタミン・ミネラル)」の3つの栄養素を、「主食」「汁物」「主菜」「牛乳・乳製品」「副菜」によってバランスよく揃える「5つの輪作戦」の重要性を解説。一二三選手も「完璧な栄養素の食事を摂りながらトレーニングを重ねてきた。自分の体は食べたものでできていると実感している」と日頃の意識の高さを明かしました。
また、試合当日のコンディショニングにおいては「汁物(味噌汁や出汁スープ)」の活用や、試合スケジュールに応じた計画的なエネルギー補給がカギになると説明。詩選手は「試合の合間にゼリーや干しバナナを適切なタイミングで摂ることで、最後まで体力や集中力が切れることなく戦えるようになった」と実体験を語りました。
その後、一二三選手と詩選手のオリジナルTシャツが当たる抽選会がサプライズで行われ、当選した10名の選手たちが両選手と一緒に記念撮影を行いました。
最後に熱戦を終えた選手たちに向けて一二三選手と詩選手から感謝と激励のメッセージが送られました。
大会初日を振り返り、一二三選手は「みんなの元気な柔道を見て、僕自身もっと頑張らなければいけないと力をもらいました。僕もこれから頑張るので、一緒に頑張っていきましょう」と選手たちの健闘を称え、さらなる飛躍を誓いました。続いて詩選手も「素晴らしい熱い戦いを見ることができ、素敵な一日になりました。私もロサンゼルス2028大会に向けてもっともっと頑張りたいと心から思いました。みんなで柔道界を盛り上げていきましょう」と呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれました。式の最後には、参加した子どもたちへサイン色紙やポストカードのプレゼントが2人から手渡されたほか、会場内には一二三選手と詩選手が獲得した東京2020大会の金メダルと、一二三選手のパリ2024大会の金メダルが特別展示されました。間近で見る本物の金メダルに子どもたちは目を輝かせ、将来への夢を膨らませながら大会初日は大盛況のうちに幕を閉じました。
■2日目(小学6年生大会)
大会2日目は小学6年生の部を実施。開会式で挨拶に立った一二三選手は「あいにくの雨の中お越しいただきありがとうございます。皆さんの熱い戦いを楽しみにしています。全力で頑張ってください」と語り、詩選手も「楽しく、怪我なく、全力で戦う姿を楽しみにしています」と選手たちへ温かいエールを送りました。
トークセッションでは、自身の子ども時代に話題が及びました。一二三選手は「小学生の頃はあまり強くなかったですが、6年生の時に優勝した大会は今でも思い出に残っています。この大会が皆さんにとって人生の思い出になれば嬉しいです」と振り返り、詩選手も「小6の時は経験を積むことを意識して試合に臨んでいました。後悔のないよう、自分らしい柔道を出し切ってほしいです」とアドバイスを送りました。
さらに、強くなるための秘訣について問われると、「大会や練習を通して自信をつけることが強くなるきっかけになります」(一二三選手)、「勝っても負けても自信をつけられるような試合をすれば、後から結果はついてきます」(詩選手)と語り、自信を持つことの大切さを伝えました。
最後に一二三選手から「持っている力を出し切って頑張ってください」、詩選手から「畳の上の舞台に立てる喜びを噛み締めながら楽しんでほしいです」と力強い言葉が贈られ、未来の日本柔道界を担う子どもたちの戦いがスタートしました。
試合では前日の中学1年生に負けず劣らずの熱戦が繰り広げられました。日頃の練習の成果を存分に発揮し、果敢に攻め立てる選手たちの姿は真剣そのもの。悔しさに涙をのむ場面も含め、畳の上のドラマティックな光景に客席からは温かくも力強い歓声が送られました。一二三選手、詩選手の両名も選手たちの一挙一動を熱心に見つめ、一試合ごとに温かい拍手でその健闘を讃えました。
前日と同じく、試合後には表彰式、そして総評・実演解説が行われました。総評の中で一二三選手は、レベルの高い熱戦をくり広げた子どもたちを称えつつ、自身の小学生時代を振り返りながら「豪快な技を決めるためには『目線』が大切。畳に目線を落とさず、常に前や上を向くことで体が大きく使え、豪快に投げることができる」と語り、実演を交えて解説しました。
詩選手は「中学校へ進むと相手の力も強くなりチャンスが減る。技をかけた際、最後まで手を離さないことが何より重要」と熱弁。さらに「一本の技に強引に入るのではなく、まずは相手を崩す意識を持つこと」と、今後の成長に欠かせないポイントを伝授しました。
続く質疑応答コーナーでは、子どもたちから「大学で一番きつかった練習」「背負い投げのコツ」「モチベーションの保ち方」「内股のトレーニング法」など、多岐にわたる質問が寄せられました。詩選手は怪我の予防として「寝る前5分でもストレッチを習慣づけること」の大切さを語ったほか、試合に敗れた際の向き合い方について「落ち込むだけでなく、自分に何が足りなかったのかをしっかり分析して次の課題にすることで、モチベーションを維持できる」とアドバイス。また、内股の上達には「足首に重りを付けて壁に向かい1日50回の足上げ打ち込みを反復した」と独自の練習法を明かし、参加者たちは真剣な表情でトップアスリートの言葉を吸収していました。
続いて行われた「勝ち飯®」教室では、質問コーナーも実施。参加した保護者からの「食が細い子どもへの工夫」や「体重を増やすコツ」といった質問に対して活発な意見交換が行われました。幼少期のお気に入りの家庭料理を聞かれた場面では、詩選手が「オムライス」、一二三選手が「ラタトゥイユ」と笑顔で答えるなど、終始和やかな雰囲気に包まれました。
サプライズ抽選会の後の閉会の挨拶では、一二三選手と詩選手が参加者や関係者に向けて感謝と今後の決意を語りました。一二三選手は「仙台で開催することができ、皆さんの柔道を見てすごくパワーをもらいました。協力いただいた皆様のおかげで大成功に終わることができました」と謝辞を述べました。続けて「今年は世界選手権で優勝し、2年後のロサンゼルス2028大会で優勝するために頑張っていきます。皆さんも柔道を楽しく続けてください」と、自身の目標とともに子どもたちへ力強いメッセージを送りました。続いて詩選手も「皆さんの頑張る姿に感動し、自分自身ももっとがむしゃらに柔道に向き合わなければと感じました。目標はロサンゼルス2028大会で金メダルを持ち帰ることです。みんなと一緒に頑張っていきたいです」と感謝と決意を語り、温かい拍手に包まれながら大会は幕を閉じました。
大会終了後、一二三選手と詩選手が報道陣の囲み取材に応じ、東北で初開催となった第3回「ABE CUP」の総括や、選手たちへの想いを語りました。また、今大会を制した野口隆選手(小6男子軽中量級)と大野陽菜選手(小6女子重量級)も加わり、世界トップアスリートと未来のスターによる和やかな交流が行われました。
第3回大会を無事に終え、詩選手は「小学生の勝ちたいという気持ちや柔道に真剣に取り組む姿を見て、私自身すごく刺激をもらいました。がむしゃらだった子ども時代の気持ちを思い出せた2日間でした」と晴れやかな表情で振り返りました。
一二三選手も「小学生や中学生の戦いを見て、自分もオリンピックという舞台を目指して頑張っていた頃を思い出しました。初心に帰って『また頑張ろう』と心に火がつきます」と語り、大会を重ねるごとに強まる自身のモチベーションを明かしました。
また、初の東北(仙台)開催について一二三選手は「どの場所でやっても多くの方が出場してくださりありがたい。今後はさらに多くの地域の選手が参加できるよう広げていきたい」と展望を述べ、詩選手も「今回東北で開催できたことで、次回以降もより多くの東北の選手が参加してくれるきっかけになれば嬉しいです」と手応えを口にしました。
勝敗を超えた育成の場としての意義について、一二三選手は「僕自身も小学生の頃は負けることの方が多かった。負けて知ること、勝って知ることがそれぞれある。全国の選手と組み合い、輪を広げていってほしい」とエールを送りました。
インタビュー後半には、今大会の小学6年生男子・女子の部でそれぞれ優勝を果たした野口選手と大野選手が登場。世界王者二人を前に緊張気味の野口選手は、「めっちゃ嬉しい気持ちもありますが、自分の実力にびっくりしています。生で会った二人は思っていたよりも体が大きかった」と素直な感想を口にしました。
大野選手も詩選手を目の前にして「オーラがやばいです(笑)」と照れ笑いを見せると、詩選手も「嬉しい!」と目を細めて喜ぶ一幕もありました。
将来の目標を問われると、野口選手は「オリンピックに出て優勝すること」、大野選手は「世界チャンピオンになること」と力強く宣言。二人の頼もしい言葉に、一二三選手と詩選手も「素晴らしい!」と大きな拍手を送りました。
得意技の話題では、野口選手が「小外刈り」、大野選手が「ケンケン小外刈り」と小学生離れした技術を挙げ、一二三選手らを「渋い!」「高度ですね」と唸らせました。最後に「好きな選手は?」と聞かれた野口選手が「豪快に一本で投げる一二三選手です」と答えると、一二三選手はその回答に対し満面の笑みで「テレビ出れるわ!」と喜びを爆発させ、会場は温かい笑いに包まれました。
世界を見据える二人の王者は、今夏以降の国際大会や2年後のロサンゼルス2028大会に向け、「しっかり気持ちをリセットし、集中して挑みたい」(一二三選手)、「心も体も元気。張り切って頑張りたい」(詩選手)とさらなる飛躍を誓い、未来の夢を背負う子どもたちとともに熱い2日間を締めくくりました。
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