日本オリンピック委員会(JOC)は2月3日、「令和7年度JOC/NFアスリート委員会合同ミーティング」をJapan Sport Olympic Squareとオンラインで開催しました。
JOCでは、アスリートを取り巻く環境が日々変化する中、アスリートの声を汲み上げ、組織の意思決定に意見を反映できる仕組みの構築と、各国内競技団体(NF)とアスリートの意思疎通が行われる環境を整えることが不可欠と考え、NFにアスリート委員会の設置を推奨しています。
本ミーティングでは、各NFアスリート委員会の現状や課題、JOC アスリート委員会との横断施策企画立案等について、参加者と意見交換を行い、JOC 及び NF アスリート委員会との更なる連携強化を図り、今後のNFアスリート委員会における活動指針決定等の際の有益な情報共有の場として開催されています。
今回は、JOC役員、JOCアスリート委員会とNFアスリート委員会のメンバーら約87名が参加。NF間でアスリート委員会の現状と課題についての情報共有と意見交換が行われました。
■羽根田卓也JOCアスリート委員長による開会挨拶
ミーティングではまずJOCアスリート委員会の羽根田卓也委員長が挨拶に立ち、「3年ぶりにこの合同ミーティングを開催できたことを非常に嬉しく思います。本日はJOC加盟団体の中から、50以上のNFのアスリート委員会の事務局の方やご担当者様にも広くご参加いただいております」と感謝を伝え、「このミーティングを通してJOCアスリート委員会と各NFのアスリート委員会の連携を深めていきつつ、アスリート委員会はそれぞれの組織の中で中心に立って声を発信し、それを組織に反映していくことが重要ですので、そういった意識も共有していきたいと考えております。JOCアスリート委員会からだけではなくNFアスリート委員会の皆様からも情報の発信や共有をいただき、活発に議論をしていただいて意識の共有を図っていきたいと思います」と参加者に呼びかけました。
■AINAGOCアスリート委員会活動報告
続いて、JOC理事であり、公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会(AINAGOC)の谷本歩実アスリート委員長が、本年開催される愛知・名古屋アジア大会に向けた活動状況を報告しました。谷本AINAGOCアスリート委員長は、AINAGOCとの意見交換をはじめ、オリンピアン・パラリンピアンによる学校訪問事業や各種イベントへの参画、競技会場および宿泊施設の視察といった具体的な活動内容について説明。大会期間中に運営を支えるボランティアの中学生をアスリートが引率する計画を紹介し、参加者へ協力を呼びかけました 。最後に谷本AINAGOCアスリート委員長は自国開催となる愛知・名古屋アジア大会は、何としても成功させなければなりません。皆様のお力添えをいただきながら機運を醸成し、アスリートが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えていきたい」と決意を語り、報告を締めくくりました。
■JOCアスリート委員会活動紹介
続いて羽根田JOCアスリート委員長が、同委員会の活動について紹介を行いました。羽根田JOCアスリート委員長は、委員会の開催や一部委員による理事会への出席といった従来の活動に加え、新たにJOC常務理事会との連携会議を実施したことを紹介。また、主要事業として「オリンピアン研修会」「JOC/NFアスリート委員会合同ミーティング」「JOCアスリートフォーラム」の実施のほか、国際フォーラムやイベントへの積極的な参加を挙げ、オリンピック・ムーブメントの推進やアスリート委員会のプレゼンス向上に向けた多角的な取り組みを説明しました。あわせて、本年実施される「JOCアスリート委員会 冬季大会選挙区選出委員選挙」についても言及し、冬季オリンピアンへ向けて積極的な立候補と投票を呼びかけました。これに関連し、夏季大会選挙区選出委員である入江陵介JOCアスリート副委員長は、「私自身、選挙を経て委員会に加わったことで、競技の枠を超えて多くのNFの方々と繋がり、多種多様な知見を得ることができました」と自らの経験を共有しつつ、参加を呼びかけました。
■IOC国際アスリートフォーラム参加報告
活動紹介に続き、羽根田JOCアスリート委員長から2025年6月に開催されたIOC国際アスリートフォーラムへの参加報告が行われました。国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員会が主催する本フォーラムは、2年に一度開催される世界最大規模のアスリート代表会議で、世界各国からアスリート代表が集い、その声を国際スポーツ界の意思決定へ反映させるための極めて重要な場となっています。羽根田JOCアスリート委員長は、現地で実施されたトークセッションやスキルアップセッションの具体的な内容を報告するとともに、「IOCや他の国や地域のNOC(国内オリンピック委員会)関係者と直接コミュニケーションを図り、情報を共有できる貴重な機会となり、現地に身を置いてこそ得られる経験がありました」と、国際舞台に直接参加する意義を強調し、「IOCや各IF(国際競技連盟)が主催する国際フォーラムがあれば、アスリート委員会の立場から積極的に参加を促していきたい」と語りました。最後に「こうした国際的な場に主体的に参加し、発言を通じて日本のプレゼンスを高めることが、日本スポーツ界全体の活性化に繋がります。ぜひ一緒に参加していきましょう」と、参加者へ向けて呼びかけ、報告を締めくくりました。
■OCAアスリートフォーラム参加報告
続いてのセッションでは、村上めぐみJOCアスリート副委員長から2025年9月に開催されたOCA(アジア・オリンピック評議会)アスリートフォーラムへの参加報告が行われました。村上JOCアスリート副委員長は、フォーラムを通じて共有された「アスリート委員会の役割は、単なる競技生活の支援に留まらない」というメッセージを紹介し、「競技力の向上や選手の保護はもちろんのこと、キャリアトランジションや自主的な学習、さらにはアントラージュへのサポートまで、アスリートの人生全体を多角的に支える存在であるべきだという指針が示された」と説明しました。また、自身の経験を振り返り、「委員に就任した当初は活動の模索段階にあったが、本フォーラムへの参加が今後の取り組みを深く考える転換点となった」と述べました。その上で、自身が考えるアスリート委員会の役割として競技力向上の支援、選手の安全と権利の保護、キャリアや学びを含めた人生の支援、そしてスポーツと社会を繋ぐ存在であることの4つを挙げました。
■NFアスリート委員会の事例紹介
続いては入江JOCアスリート副委員長が、公益財団法人日本水泳連盟アスリート委員としての立場から、同委員会における取り組みや今後の課題について事例紹介を行いました。将来の日本代表を目指す子どもたちに、トップレベルの競技会の舞台を体験してもらうことを目的とした特別な始泳式の実施やエスコートキッズの導入といった具体的な成果を提示し、同委員会の特徴として「当委員会では、各事業の担当ごとにグループ分けを行っています。私自身は『普及』を担当しており、大会期間中にトークショーや保護者向けの企画などを実施しています。委員会内の役割を細分化することで、各グループが確実に課題解決へと繋げられるような仕組み作りを徹底しています」と組織を細分化した運営体制について説明しました。
また、同セッションでは各NFのアスリート委員からも積極的な発言、質問がありました。
NFアスリート委員会の参加者からは、愛好家向けの講習会や体験イベントの実施、キャリアデザイン支援、ジュニア育成のための資金確保など、各団体で進めている取り組みが紹介されました。一方で、委員会活動を進める上では、実現したい施策と現実的な運営とのバランスに課題を感じているとの声も上がりました。
これに対し入江JOCアスリート副委員長が「大会の中でイベントを実施したい場合などは、アスリート委員が競技委員の方など決定権がある方と直接調整をしています。複数の窓口を経由すると時間を要するため、直接の連絡先を把握し、迅速に連絡を取ることを意識しています」と自身の経験に基づいた実践的なアドバイスを送るなど、JOC、NFの垣根を越えた活発な意見交換が行われました。
■アンケート結果を基としたNFアスリート委員会参加者との意見交換
プログラムの締めくくりとして、羽根田JOCアスリート委員長よりJOC加盟70団体を対象に実施したアンケート結果の報告が行われました。報告では、各NFにおけるアスリート委員会の設置状況や構成、活動内容、選手への意識調査の実態などが明らかにされ、これらを踏まえた活発な意見交換が展開されました。
委員の確保をめぐっては、NFアスリート委員会の参加者からは、「次期委員への立候補者が集まりにくく、次代の担い手をいかに確保するかが喫緊の課題」との現状が共有されました。相談体制のあり方については、既存の相談窓口が設置されている一方で、心理的なハードルから利用をためらう選手の声がある」との相談が寄せられました。これに対し、入江JOCアスリート副委員長は日本水泳連盟での事例を挙げ、「秘匿性を担保した定期アンケートの実施に加え、日常の競技会で自然な形で声をかけるなど、心理的な壁を作らないコミュニケーションを意識している」と、実効性のあるアプローチを提示しました。
また、「選手の意見をいかに組織の意思決定層へ届けるか」という課題に対しては、羽根田JOCアスリート委員長は「アスリートの声を組織に反映させることは、委員会の最重要任務の一つ」と強調。続けて「JOCや一部のNFで導入されている『アスリート委員会の委員長が団体の理事を兼務する制度』の構築を、各団体へ働きかけていくことも有効な手段ではないか」との提案をしました。
別のNFアスリート委員会からは、体験に基づく運営の工夫として、アスリート委員での分担により選手約600名への直接ヒアリングを敢行し、課題を分類・優先順位化して理事会へ報告した事例が紹介されました。「現在はアンケートフォームを活用し、継続的に問題を可視化する体制を整えている」と、地道な活動の重要性を説きました。
最後に入江JOCアスリート副委員長が「自団体のみで完結せず、他競技の委員会と知見を共有し、協力し合うことこそが本合同ミーティングのあるべき姿だと思います。ぜひこの場を機に、横の繋がりを強固にしていきたいと思います」と総括し、本セッションが締めくくられました。
■閉会挨拶
最後に村上JOCアスリート副委員長が閉会の挨拶に立ち、登壇者ならびに参加者に感謝の言葉を述べ、「ぜひ皆さんの力を合わせて、アスリートの持っている力で社会に貢献できるような活動を増やしていけたらと思っています。今後も皆様と一緒に、アスリートが安心して挑戦できる環境づくりに取り組んでいければと思っております」と呼びかけて、ミーティングを締めくくりました。
関連リンク
CATEGORIES & TAGS