日本オリンピック委員会(JOC)は、9月28日から29日の2日間、一般社団法人スポーツを止めるなが主催する災害支援活動にオリンピック強化指定選手、オリンピックネクスト強化指定選手、JOCエリートアカデミー生を対象としたJOCアスリートアカデミーの一環として、西村光稀選手(スキー/スノーボード)、石井さやか選手(テニス)、岡澤セオン選手(ボクシング)、馬塲柚那選手(アイスホッケー)、渡辺瑠伊選手(馬術)、橋本将都選手(カヌー/スプリント)、河合利亜斗選手(テコンドー)、⾼杉柊吾選手(クリケット)が参加し、能登復興支援活動を行いました。
JOC アスリートアカデミーは、JOC Vision 2064「スポーツの価値を、守り、創り、伝える」の活動指針に掲げた「憧れられるアスリートの育成」を目指し、JOC選手強化中長期プロジェクトのアスリートワーキンググループの施策として、2023年度にプレスタートし、2025年度より本格的に始動しました。その過程で、アスリートから「社会課題の解決に関わりたいが、参加のきっかけが身近にない」との声が寄せられたことを受け、JOCアスリートアカデミーにおいてアスリートと社会の様々な課題解決を繋げる機会を設定することとなり、2025年3月に1回目として能登復興支援活動を実施しました。
活動初日は、能登半島の中央部に位置する七尾市の飲食店を訪れ、店主のお二人から断水や停電の続く中での生活など被災体験について貴重なお話を伺いました。その後、輪島市の門前町腰細付近の海岸で地域住民の方と協力してビーチクリーンを行いました。活動後には地元の方々と意見交流会を実施し、「被災地が今、求めていること」「復興への道のり」などの意見を交換しました。1日の活動を終えて、宿泊先にてアスリート交流会が行われ、感想や印象に残った場面、被災地にとって意義ある情報発信の在り方について意見交換し、翌日の学校訪問に向けたプログラムを作成しました。
翌日は穴水町立穴水中学校を訪問し、全校生徒約120名を対象にボクシングとテコンドーの体験・交流プログラムが行われました。選手たちが自ら考えたプログラムを基に、ボクシングとテコンドーを通して生徒の皆さんとスポーツを通じた交流を行いました。
2日間の活動を終えた選手たちはそれぞれ以下の通りコメントしました。
■橋本将都選手(カヌー/スプリント)
「飲食店で谷本JOC理事の人柄と人への接し方に感銘を受け、自分も喜ばれる選手になりたいと思いました。学校を訪れた際には生徒から元気をもらい、改めて頑張ろうと決意し、2日間通して心が動かされる経験が多く、競技力だけでなく人間力も高めたいと強く感じました。参加メンバーは年齢層が幅広かったものの、全員がボランティアへの強い思いがあり、最高のメンバーになれたと実感しています。今後は、結果を残して人の心を動かすことができる選手になり、スポーツ選手として被災地を再訪し、活動に励みたいと思います」
■西村光稀選手(スキー/スノーボード)
「2日間の活動を通し、全員が支え合って生きていること、そしてスポーツも同様に多くの方の支援で成り立っていることを実感しました。この活動では、人前で話すことにチャレンジし、話す力や感謝の気持ちを持つなどの人間性を向上させることができました。ビーチクリーン活動では、震災から時間が経ってもまだ多くのゴミが残されており、人手や継続的な復興支援が必要だと思いました。今後は、自らSNSで発信し、支援に繋がる行動をしていきたいと考えています。この経験を力に、今まで以上に頑張り、恩返しをしていきたいです」
■⾼杉柊吾選手(クリケット)
「今回の活動は、被災地の現状を自分の目で確かめたいという思いから参加しました。震災から1年以上が経ち、震災を覚えている人が少なくなっている現状にショックを受けましたが、定食屋で聞いたスポーツをしている姿を見ると元気が出るという言葉がとても印象的でした。スポーツには人を元気にする力があることに改めて気づくことができました。ボランティアへの参加は初めてでしたが、自分が取り組んでいるクリケットを教えることができ、非常にいい経験になりました。これからはスポーツを通して元気を届けるということを今まで以上に大切にし、日々の競技に励んでいきたいです」
■河合利亜斗選手(テコンドー)
「テコンドーを教えたり、大勢の前で話したりするのは初めてだったため、当初は緊張や不安もありましたが、いざ始まってみると、みなの雰囲気がとても良く、楽しく取り組むことができました。蹴りという難しい動作を教える際も、「まずは楽しんでもらうこと」を一番に考え、互いに褒め合いながら進めることができました。被災された方々が、復興や厳しい生活の中でも前向きに頑張っている姿を知り、自分自身もこれまで以上にテコンドーに励み、結果を残すことで、互いに元気を送り合えるようになりたいと感じました」
■岡澤セオン選手(ボクシング)
「能登の人々がアスリートとの触れ合い自体を喜んでくれたことが非常に印象的でした。人が減るのが寂しいという声を聞き、災害支援だけでなく、能登の魅力を発信することに大きな意味があると感じました。世界選手権直後に参加したのは、この機会を逃すと何もできずに終わるという危機感と、結果を出した今だからこそ子どもたちに伝えられることがあると考えたからです。交流した子どもたちは目を輝かせて楽しんでおり、彼らがスポーツやアスリートとの交流を求めているのを強く感じました。今後は、交流した子どもたちに目指してもらえるような選手になるため、頑張っている姿や結果を見せたいという思いが強くなりました。子どもたちの憧れになることが、競技生活の大きなモチベーションにつながると考えています」
■渡辺瑠伊選手(馬術)
「2日間でビーチクリーンや交流などを通し、多角的に多くのことを学び大変勉強になりました。参加前は物理的な支援を考えていましたが、活動を通してのチームワークや役割分担で私たち自身が成長できました。現地の方から求められている情報発信は復興の遅れといった内容ではなく、アスリートが人とのつながりの中で得た具体的な学びや考えであると教えてもらいました。馬術は個人競技ですが、馬や獣医、コーチなど多くの力が必要なスポーツです。今回の活動を通して、人と人とのつながり方や協力して最大限のパワーを発揮する方法を学び、他の人にも共有しながら今後の競技生活に活かしていきたいと考えています」
■馬塲柚那選手(アイスホッケー)
「被災地訪問を通して、今の環境が当たり前ではないことを改めて実感しました。特に、穴水中学校での交流で見た子どもたちのキラキラした笑顔から、復興支援はビーチクリーンなどの物理的な活動だけでなく、被災地の人々に笑顔や希望を作り出すことが重要だと学びました。また、当たり前が当たり前でなくなったという言葉が心に響きました。最初は緊張しましたが、人とのコミュニケーションを通じて成長できたと感じています。この2日間の経験から学んだ人と人がつながることの大切さを、今後自分のチームにも持ち帰り、活動の中でさらに活かしていきたいと考えています」
■石井さやか選手(テニス)
「ビーチクリーン活動や中学校に訪問して一緒にスポーツをやるというのは初めての体験で、スポーツの力で元気や勇気を与えることができるということを非常に感じました。中学校の生徒たちがすごく楽しそうに取り組んでいる姿や、「教えてくれてありがとう」と目を輝かせて言ってくれる姿がとても嬉しかったです。テニスを通して頑張っている姿や活躍している姿を多くの人に届けられるように頑張りたいと思います」
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