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2025.09.26 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:9月19日企業説明会を実施

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登壇してプレゼンを行ったアスリートたち(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は9月19日、味の素ナショナルトレーニングセンターウエストで、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。年間を通じて「説明会」を複数回実施し、企業に対してトップアスリートの就職支援を呼びかけています。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまで239社/団体432名(2025年9月19日時点)の採用が決まりました。今回の説明会ではJOC主催のもと、6社10名が参加しました。

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太田雄貴JOC専務理事(写真:アフロスポーツ)

 最初に主催者を代表して太田雄貴JOC専務理事がアスナビ説明会に参加した企業に対する感謝の言葉を述べました。続いて、自身の体験を述べた上で「選手にとって所属先は最後の最後まで守ってくれる家族やパートナーのような存在であり、アスリートがメダルを獲得した際には、会社の一体感を高める誇らしい存在になると思います」と伝え、続けて「採用後にはアスリートも企業を愛し、そのために頑張りたいと思っているため、対等な立場で遠慮なく意見を交換し、良い関係を築いてください」と語りました。最後に、400人を超えるアスリートの就職支援実績に触れ、「今後もこの輪を広げていきたいと思っています。アスリートの雇用を通じて、企業間の横の連携を促進し、新たなビジネスチャンスを創出していただきたいです。プレゼンに臨むアスリートの皆さんには、これまでの努力の証しとして緊張を力に変えて頑張ってほしいです。そして企業の皆さんの心に響くものがあると思いますので、最後まで温かい目で見守ってください」と締めくくりました。

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柴真樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクター(写真:アフロスポーツ)

 続いて、柴真樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターがアスナビの概要を、スライド資料をもとに紹介。アスナビが無料職業紹介事業であることや登録するトップアスリートの概略のほか、就職実績、雇用条件、採用のポイント、アスリート活用のポイント、カスタマーサポートなどを説明しました。

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城北信用金庫コミュニケーション開発事業部スポーツディレクターの常田幸良氏(写真:アフロスポーツ)

 続いて、城北信用金庫コミュニケーション開発事業部スポーツディレクターの常田幸良氏による採用事例紹介が行われました。はじめに金融事業と並行して「地域との深いつながりを創造する非金融の取り組み」に注力し、スポーツの力を活用した戦略を進めていることを説明。その後、採用目的や雇用形態、活動内容などの説明に加え、これまで採用を行ったアスリート職員を紹介。最後に「アスリート個人の発信力と企業ブランドの発信力を組み合わせることで、大きなシナジー効果が生まれています。アスリートのセカンドキャリア支援だけでなく、企業イメージの向上、地域活性化、そして社員の一体感醸成にも繋がっています」とアスリート職員の魅力を紹介しました。

 その後、就職希望アスリート5名がプレゼンテーションを実施。映像での競技紹介やスピーチで、自身をアピールしました。

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佐藤悠雅選手(写真:アフロスポーツ)

■佐藤悠雅選手(フェンシング・サーブル)

「本日は、競技を始めたきっかけと競技を通して得た強み、今後の展望の3つをお話します。まず、競技を始めたきっかけについてです。男子フルーレ団体が銀メダルを獲得したロンドン2012大会での俊敏な剣先、高鳴るセンサーの音、画面越しでも伝わるスピードと緊張感を目の当たりにし、その瞬間私は心を奪われました。最初は習い事としてフルーレ種目を始めましたが、本格的に競技に向き合いたいと考えるようになった中学3年生の時にサーブル種目に出会い、人生が一変しました。競技映像でもご説明した通りのダイナミックな動きにコンマの世界で勝負が決まるまさに電光石火の競技。私が求めていたのは、このスリルと俊敏さでした。次に、競技を通して得た強みについてです。私が競技で磨いてきたのは、分析力・目標設定力・行動力の3つです。大学2年生の時、U20日本代表を目標に掲げていた私は、最終選考となるジュニアオリンピックカップを前に、十分な結果を残せず、崖っぷちに立たされました。そこで冷静に課題を分析し、課題点が戦術の整理不足とメンタルの不安定さであると特定しました。その解決のため、持ち前の行動力を活かし、人脈を辿り、私は単身で強豪国である韓国へ渡りました。英語と韓国語を交え、現地選手やコーチと交流する中で戦術のバリエーションを増やし、プレースタイルを再構築しました。さらにメンタル面では、大学での自身の専攻でもある心理学の知見を活かし、マインドフルネスを取り入れ、心の安定化を図りました。その結果、ジュニアオリンピックカップで優勝、U20日本代表に内定し、その後のU20アジア選手権では個人8位入賞を果たしました。それに限らず、大会に向けたトレーニング、大学の授業、遠征費捻出のためのアルバイトを自ら調整し、限られた時間を最大限に活かす工夫も続けてきました。こうした経験から、目標に向けて主体的に取り組む力を身につけてきました。最後に、今後の展望についてです。私の目標はロサンゼルス2028大会で金メダルを獲得することです。その夢の実現を通して、挑戦することの価値を自ら体現し、周囲に前向きな変化をもたらす人間になりたいと考えます。自身の挑戦する姿によって社内の挑戦意識や士気向上に寄与するだけでなく、フェンシング体験会を通じた社員の皆様の健康増進やリフレッシュ、社内コミュニケーションの活性化、大会の応援企画を通じた一体感や帰属意識の醸成にも貢献します。競技と社会をつなぐ橋渡し役として、アスリートだからこそできる社会貢献を実現していきたいと思っています」

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西岡隆成選手(写真:アフロスポーツ)

■西岡隆成選手(体操/トランポリン)

「私は小学1年生の頃にトランポリンを始めました。2歳の頃から家の近くのスポーツクラブでマット運動を行っていましたが、そこでトランポリンを教えているのを見て、率直に楽しそうだなと思い取り組み始めました。家の近くだった事もあり、2歳の頃から週6日通っていました。ジュニアの全日本大会で優勝したのをきっかけに、中学3年時にジュニアの日本記録を出し、高校2年時には初の全日本選手権を優勝、高校3年時には世界選手権準優勝とワールドレコードを獲得、そこから大学3年時にオリンピックに出場しました。このように、オリンピックまでは順当に結果を残し、オリンピックのメダル候補としてメディアにも取り上げていただきました。しかし、出場したオリンピックで最下位となり、人生のどん底を味わいます。今まで試合でほとんど失敗することがありませんでしたが、オリンピックで予選から大失敗をし選手村を後にします。今でもオリンピックの記憶がないほど人生のどん底に落ちました。しかし、この失敗を踏まえて学んだ事があります。それは仲間やチーム、組織の助け合いは時に個人の力を上回るという事です。オリンピックに出場するまで、私自身1人が強ければいいのだと思っていましたが、オリンピック出場を通して、個人だけでできる事には限りがあることを身に染みて感じました。今では良い意味で周りを巻き込み、チーム一丸となって物事を遂行する楽しさややりがいを感じています。それに加え、自分の強みである小さい頃から培ってきた目標に対する強い意識とそれに対する計画力は誰にも負けないと思っています。今の目標はロサンゼルス2028大会でトランポリン史上初となるメダルを獲得することです。これまでは、学校・クラブ・協会・サポート企業・友人・両親など、様々な方に頼ってばかりでした。皆さんのサポートは本当にありがたく、これからも必要となってきます。しかしこれから社会人になるにあたり、社会や会社という組織の中で自分の役割を果たせる存在になっていかなければならないと感じています。もしご採用頂けましたら、今までの経験と自分の強みを活かして競技だけでなく企業の一員として必ず貢献出来るように、そしてこれから先壁にぶつかる時もあると思いますが、トランポリンのように飛び越えるつもりで頑張ります」

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岩本鈴菜選手(写真:アフロスポーツ)

■岩本鈴菜選手(フェンシング・フルーレ)

「私が今までの競技人生の中で大切にし、継続してきたことは、静寂の中でも自分を出すことです。フェンシングという競技は、想像する以上に静かな空間で行われます。試合中、会場には張り詰めたような緊張感が漂い、観客、選手、そして審判でさえも、一瞬の動きを見逃さないように集中しています。その静寂の中で、私はただ技術を出し尽くすだけでなく、覚悟を全力でぶつけています。そして、自分らしさをアピールするために、声を出すことにより自分自身を鼓舞しています。自分の剣にこれまで積み重ねてきた努力や挫折、挑戦への思いを乗せ、ここだけは絶対に譲れないと強く訴えながら戦っています。1点を取るために、自分のすべてをかける。その積み重ねこそが、私のフェンシングです。私はこれまで、勝つことだけでなく、どう戦うかについても向き合ってきました。以前の私は、自分のやりたいように戦うだけで、相手を感じることを忘れていました。フェンシングが静寂の中での対話であると気づいたとき、私の戦い方が変わりました。相手の動作や呼吸の仕方、変化を観察し、心理を読んだうえで瞬時に判断し、自らの動きを変化させていく柔軟さをもって戦うようになりました。静寂の中で自分を出すことは、変化の激しいビジネスの世界でも活きると確信しています。自分の軸を持ち、常に環境に対応しながら最善の選択を重ねていく。それはまさに、私がフェンシングで培った力です。また、私は国際大会を通じて世界中の選手たちと戦い、多様な価値観に触れてきました。言葉も文化も異なる相手と向き合う経験は、競技力だけでなく人間としての器を広げてくれました。コミュニケーション力、異文化理解、そしてどんな環境にも適応する力は、これから社会で働く上でも必ず活かせると確信しています。特に2023年と2025年に参加したFISUワールドユニバーシティゲームズにおいて、通訳として他競技の選手と関係者の関係を築くことができたのは自分の中でも特別な経験となっています。私は、この静寂の中でも自分を出すという姿勢を競技の中だけで終わらせず、ビジネスの世界においても、目に見えない努力を惜しまず力強く結果を掴みにいきたいと考えています。そして、私が1点にすべてを懸けてきたように、社会の中でも本当に大切な1つにこだわれる人間でありたいと思います」

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千葉大輝選手(写真:アフロスポーツ)

■千葉大輝選手(スキー/ノルディック複合)

「私は北海道札幌市出身で、物心つく前からスキーをしていました。小学1年時に兄の影響で札幌ジャンプ少年団に入団してスキージャンプを始め、練習を重ねるごとに遠くへ飛べるようになり、大変楽しく夢中で飛んでいました。その後クロスカントリースキーもはじめ、複合の選手となりました。ソチ2014冬季大会でメダルを獲得した葛西紀明選手と渡部暁斗選手を見て小学生ながら大変感動し、自分も世界の舞台で戦いたいと思うようになりました。中学で全国優勝を経験し、高校ではJOC主催のジュニアオリンピックを2連覇することもできました。高校2年時に全日本の強化指定選手に選ばれ、高校3年時、大学1年時にはジュニア世界選手権に出場するチャンスがあったにもかかわらず、調整不足により出場ができず、挫折を経験しました。その後、全日本選手権で入賞し、これからもっと上を目指していくと意気込んでいた時に腰の怪我をしてしまい、シーズンを終えました。怪我の影響で次の年も成績が振るわず、もう全日本には戻れないかもしれないと思いましたが、葛西紀明選手の『不屈の翼』という本を読み、諦めないことの大切さを学び、まだ世界を目指したいという思いからトレーニングや考え方を見直しました。その結果、宮様国際スキー大会で2位、全日本A級公認伊藤杯コンバインド大会で優勝という成績を収めることができ、今年度再び全日本に戻る事ができました。この出来事が私の挑戦心を燃やし、一度諦めかけた世界をもう一度本気で目指したいと思いました。私はまだ国際大会の経験はありませんが、これまでの挫折の経験や悔しさを糧に這い上がっていきます。今年のシーズンで必ず国際大会に出場して活躍するという目標があり、最終的にはフランスアルプス2030冬季大会でのメダル獲得を目標としています。私が競技を通じて得たものは、諦めずに目標へ進み続ける力と、課題の発見とそれを解決する力です。そしてスキージャンプとクロスカントリーという2つの競技を極め、学業にも取り組んでいくための時間管理能力とストイックさも身につける事ができました。特に2つの競技と学業を両立してきたことは社業と競技の両立をしていくにあたっての強みだと自負しております。ご縁をいただき入社した際には、これらを社会人として最大限に発揮していき、時間管理能力や課題発見、解決力を社業に応用していくことで、会社の一員として貢献をしていきたいと考えています。目標に対し努力し、挑戦していく姿を皆さんに見てもらい、勇気や希望を与えられるような存在となっていきたいです」

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大坂谷明里選手(写真:アフロスポーツ)

■大坂谷明里選手(陸上競技・棒⾼跳)

「私が棒高跳を始めたのは高校1年生の頃です。小学4年生から走高跳を続け、中学生で全国大会を逃した悔しさから、もっと高く跳びたいという思いで棒高跳に挑戦しました。棒高跳といえば、ものすごい高さから落下する競技ですが、よく怖くないのかと聞かれます。私は全く怖さを感じず、むしろ非常に楽しいと答えます。私のベスト記録4m20㎝はキリンの全長ほどの高さです。深さ20㎝のボックスにポールを刺し、その反発を利用してキリンを超える高さを跳ぶことに大きな魅力を感じています。始めた当初は練習を重ねるごとに上達し、怖さすら楽しさに変わり、棒高跳が大好きになりました。現在でも変わらず棒高跳が大好きで、時には壁にぶつかりながらも乗り越える過程を楽しみ、目標に向かって努力を続けています。私の目標は3年後のロサンゼルス2028大会に出場し、日本人女子初の決勝進出を果たすことです。そのために、日々練習に励んでいます。これまでの競技生活の中で、大学卒業時には競技継続のためポール購入のクラウドファンディングを立ち上げました。初めての挑戦で苦戦もありましたが、発信方法の工夫や支援者への丁寧な対応を積み重ね、最終的に目標金額を達成することができました。支援者の方々への返礼として、高校生への技術指導や交流会を行い、人とのつながりを大切にする姿勢を改めて学ぶ貴重な経験となりました。競技面では、日本選手権で2年連続2位という結果を残しました。優勝を逃す悔しさもありましたが、それは私の負けず嫌いな性格を刺激し、成長の原動力となっています。また、アジア選手権大会に出場し、海外での経験を積んだことも大きな財産となりました。さらに、自己記録を更新し、自己タイ記録を3度跳ぶなど安定したパフォーマンスを発揮できるようになり、競技力の向上を実感しています。現在はナショナルトレーニングセンターで練習を積み、世界陸上に出場するトップ選手の背中を追いながら日々挑戦を重ねています。また、小学校を訪問し、子どもたちに走る楽しさを伝える活動も行っています。こうした取り組みを通じて、年齢や立場を問わず人と関わり合う力を培ってきました。もしご採用していただけましたら、競技で培った挑戦心や粘り強さに加え、クラウドファンディングや子どもたちへの指導活動を通じて身につけたコミュニケーション力を活かし、企業の一員として貢献したいと考えています。競技で成果を出すことはもちろんですが、人とのつながりを大切にしながら、社内外に良い影響を広げ、企業のイメージ向上につながるような活動にも積極的に取り組んでまいります」

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就職希望アスリートによる座談会を実施(写真:アフロスポーツ)

 プレゼンテーション終了後には、登壇した就職希望アスリートによる座談会を実施。柴JOCキャリアアカデミー事業ディレクターの進行のもと、競技の魅力を伝えるなど自らの考えを述べました。説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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