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2025.10.16 その他活動

「国際女性スポーツフォーラム」を開催

国際女性スポーツフォーラムを開催(写真:アフロスポーツ)
国際女性スポーツフォーラムを開催(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は9月13日、Japan Sport Olympic Square14階「岸清一メモリアルルーム」にて「国際女性スポーツフォーラム」を開催しました。本イベントは、スポーツに関わる組織・団体を対象に、スポーツを通じた女性の輝くライフステージの実現を目的として、東京都共催で行われました。当日は、カースティ・コベントリー国際オリンピック委員会(IOC)会長、小池百合子東京都知事、橋本聖子JOC会長をはじめ、各分野で活躍するプレゼンターが登壇しました。

橋本聖子JOC会長(写真:アフロスポーツ)
橋本聖子JOC会長(写真:アフロスポーツ)

 開会挨拶では、主催者を代表して橋本JOC会長が「今、世界はジェンダー平等や人権、環境問題、少子化や食料問題など、さまざまな課題に直面しています。私は、スポーツが持つ意義と価値をより多くの方にご理解いただき、スポーツを通じて世界の課題解決に貢献し続ける団体でありたいと考えています。そのために皆さまとともに歩ませていただきたく本フォーラムを開催いたしました。こうした機会に皆さまの想いを共有し、スポーツがあらゆる産業と結びつき、新たな産業を築いていく。その大きな価値を見出すスタートとなる場にしていきたいと思います」と本フォーラムへの想いを述べました。

小池百合子都知事(写真:アフロスポーツ)
小池百合子都知事(写真:アフロスポーツ)

 続いて小池都知事が「東京2020大会の大切な理念の1つが、ジェンダー平等です。(IOCとJOC)両会長とも初の女性会長であり、東京2020大会が目指してきたダイバーシティ&インクルージョンの体現をされており、これはレガシーの象徴と言ってもいいと思います。東京都も大会のレガシーをしっかりと引き継ぎ、女性活躍の輪(Women in Action)を旗印にして、女性が自己実現できるそんな社会づくりを推進してまいります。東京2025世界陸上の熱気を女性活躍の機運醸成へと繋げるべく、皆さま方と力を合わせていきたいと存じます。そしてスポーツを通して勇気をもらい、将来への期待、さらにはスポーツの力で子どもたちを育成していく機会になれば大変嬉しく思います」と挨拶を行いました。

■基調講演

カースティ・コベントリーIOC会長(写真:アフロスポーツ)
カースティ・コベントリーIOC会長(写真:アフロスポーツ)

 続いて基調講演が行われ、コベントリーIOC会長が登壇しました。冒頭では、新型コロナウイルス禍による無観客開催を余儀なくされた東京2020大会の開催に尽力した日本の皆さまに感謝の意を述べました。その後、自身の幼少期やアスリートとしての経験を振り返りながら、次のように語りました。
「競技の場ではジェンダー平等がある一方で、スポーツ界のステークホルダーにはまだ平等が存在しないことに気づきました。この状況を変えるためには、さまざまな政策を始めるきっかけをつくり、発言権を活かして女性が声を上げ意見を述べる機会を提供することが重要です。この平等な機会は、選手だけでなく、コーチやメディカルスタッフ、国際競技連盟(IF)に対しても提供・保障されなければなりません。」
さらに、「女性が能力を正当に評価され、自信をもってリーダーシップを発揮できるよう、政策を通じて文化的な変革を起こす必要があります。これからの道のりは、過去に困難な道を切り開いてくれた先人たちへの感謝とともに、みなが協力してより強く歩むための第一歩となるはずです」と強調しました。
最後に、「日本の選手たちが東京2025世界陸上、ミラノ・コルティナ2026冬季大会、そしてロサンゼルス2028大会において素晴らしい成績を収めることを祈っています」と締めくくりました。

インタビューを実施(写真:アフロスポーツ)
インタビューを実施(写真:アフロスポーツ)

■インタビュー

 続いて、読売新聞編集委員の結城和香子氏をファシリテーターに迎え、コベントリーIOC会長、小池都知事、橋本JOC会長へのインタビューが行われました。

 まず、会長の就任動機について問われたコベントリーIOC会長は、「若者・スポーツ大臣として母国ジンバブエに貢献した後に、スポーツには世界を変える力があると信じ、IOCのトップを目指す決意を固めました。(自身の経験から)オリンピックには人生を変える力があり、その恩返しをしたいという思いが強くありました。」と語りました。さらに、アスリートとしての経験を振り返り、こう続けました。「失敗から立ち上がるレジリエンス(立ち直る力)を学びました。また、自分の弱みを克服しようと努力する中で、強さだけでは不十分だと気づき、謙虚さを身につけました。チームワークを重視し、自分を正してくれる仲間やアドバイザーを持つことの重要性を感じました。また、誰もがロールモデルになる可能性があります。大切なのは良いロールモデルになるか、悪いロールモデルになるかという選択であり、たとえ不人気な選択であっても、それが正しいことであれば次の世代に勇気を与えられると信じています。」

 橋本JOC会長は、「女性として初めて日本スケート連盟や日本自転車競技連盟の会長を務めた経験から、女性がリーダーを務めることが当たり前の社会にしたいという想いがありました。また、東京2020大会は新型コロナウイルスの影響で無観客開催となり、スポーツ界や大会に関わる皆が不完全燃焼の思いを抱えていました。この思いを克服し、スポーツの価値をさらに広めたいという強い気持ちもありました。さらに、コベントリーIOC会長が初の女性会長に就任されたことが、政治家でありながら私がJOCのトップを目指す大きな後押しになりました」と語りました。
続けて、自身の競技経験についても振り返り「病気を乗り越え、夏季と冬季の両オリンピックを目指すという、当時の日本では困難とされた挑戦をした経験があります。その経験こそが、自身の務めとして困難な状況を切り開く原動力になっています。」と語り、今後のJOCの展望については、「日本の重要な戦略として、スポーツの力で新たな産業を創出したいと考えています。また、アスリートが輝くJOCを目指し、JOCが変わることで加盟競技団体も変わることができるという意識を根付かせていきたいです」と語りました。

 小池都知事は、「コベントリーIOC会長と橋本JOC会長が世界のスポーツ界をリードしていることは非常にわかりやすく、世界のゲームが変わりつつあることを感じています。多くの女性に励みを与えていることに感謝しています。これは、東京2020大会のレガシーである『多様性と調和』を体現しています」と称賛しました。さらに、女性リーダーとしての信念についても触れ、「常にリスクを取り、挑戦することを後悔しない生き方をしてきました。激動する世界では、女性の力や考え方がゲームを変える原動力となると考えています。意思決定の場に女性がより多く関わることが、世界をより良い方向に変えていくことに繋がります。その背中を次の世代が見ているという自覚を持ちながら進んでいきたいと思います」と語りました。

■東京都が実施する女性活躍の取り組み

女性活躍の取り組みについて講演を行った松本明子東京都副知事(写真:アフロスポーツ)
女性活躍の取り組みについて講演を行った松本明子東京都副知事(写真:アフロスポーツ)

 続いて、松本明子東京都副知事より東京都が実施する女性活躍の取り組みについて講演が行われました。冒頭では、日本における女性活躍の現状と「経済」と「政治」分野における課題を示しました。育児休業などの両立支援制度は整備されているものの、利用者の大半が女性に偏っている現状を示し、「男は仕事、女は家庭といった無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が依然として根強く残っている」と述べました。
東京都は、女性活躍を推進する「女性活躍の輪〜Women in Action〜(WA)」をはじめ、全国の女性首長らが集う「びじょんネットワーク」や、企業経営者が女性活躍について議論する「東京女性未来フォーラム」の開催など、多様な取り組みを進めています。また、男性の育児参画も推進しており、これらは、『2050東京戦略』の一環として、女性のキャリアアップや働き方改革、さらには企業の成長を促す「好循環」を生み出し、性別にとらわれず誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指しています。
最後に今後のビジョンについて、松本副知事は次のように語りました。
「東京都は『2050東京戦略』に基づき、『誰もが自分らしく、性別にとらわれず選択できる社会』の実現を目指しています。この達成に向け、全国で初めて『女性活躍基本条例(仮称)』の制定を検討しており、女性のキャリアアップと働き方改革を通じて企業の成長を促すという好循環を構築していく方針です。女性の活躍というのは、1人ひとりを大切にすることに繋がり、それが誰にとっても輝くことができる素晴らしい社会の形成に繋がると信じています」と締めくくりました。

■パネルディスカッション「スポーツ界のジェンダー平等と多様性について」

パネルディスカッションに登壇した來田享子JOC理事、杉山文野JOC理事、一般社団法人SDGs in Sportの井本直歩子代表理事、一般社団法人スポーツを止めるなの伊藤華英代表理事(写真:アフロスポーツ)
パネルディスカッションに登壇した來田享子JOC理事、杉山文野JOC理事、一般社団法人SDGs in Sportの井本直歩子代表理事、一般社団法人スポーツを止めるなの伊藤華英代表理事(写真:アフロスポーツ)

 続いて、來田享子JOC理事の進行により、一般社団法人SDGs in Sportの井本直歩子代表理事、一般社団法人スポーツを止めるなの伊藤華英代表理事、杉山文野JOC理事によるパネルディスカッションが行われました。

 伊藤氏は、現役時代に生理不調に悩んだ経験を踏まえ、スポーツ界に貢献したいという思いで立ち上げた「女子学生アスリートが抱える『生理×スポーツ』の課題に向き合うための教育・情報発信プロジェクト」である「1252プロジェクト」について紹介しました。スポーツ界は社会の縮図であり、スポーツ界の課題解決が社会全体の変革に繋がるとの考えを示し、「男性にも課題を共有してもらい、共に解決策を考えることが重要です。女性の声が届きにくい現状を変えるために課題の『見える化』を進め、将来的にはこのプロジェクト自体が不要なる社会の実現を目指しています」と語りました。

 井本氏は、スポーツ報道がジェンダー平等に与える影響について言及しました。男性種目の報道が圧倒的に多い現状や、女性アスリートは容姿に過度に注目される実態を指摘し、IOCのジェンダー平等、公平性の確保のための「ポートレイヤル(表象)ガイドライン」を紹介しました。そのうえで、「『アクティブな姿を強調する』『容姿に不必要に注目しない』『平等な光を当てる』『多様性をとらえる』『らしさのステレオタイプを避ける』などの視点が重要であり、メディアだけでなく、アスリート自身や協会、視聴者を含めた社会全体の意識改革が求められます」と述べました。

 杉山JOC理事は、「すべての人の尊厳が守られるスポーツを目指して」と題し、LGBTQ+への理解促進を目的とするプライドハウス東京の取り組みを紹介しました。スポーツ界に根付く「強い男性リーダー育成」という歴史的背景から、カミングアウトできない選手が多い現状を指摘し、トランスジェンダーと性分化疾患の違いについて説明しました。その上で、「競技における公平性」と「人権の尊重」の両立が必要であるとし、「トランスジェンダーを取り巻く問題は政治的に利用されやすく、選手がその犠牲になっている現実があります。スポーツ本来の価値を大切にし、スポーツ界が先導となって分断を乗り越え結束すべきです」とパネルディスカッションを締めくくりました。

閉会の挨拶を行った渡辺守成JOC副会長(写真:アフロスポーツ)
閉会の挨拶を行った渡辺守成JOC副会長(写真:アフロスポーツ)

 最後に、渡辺守成JOC副会長よりIOCが積極的に女性の登用を進めている現状について言及があり、「日本の女性登用については単なる社会的な問題ではなく、ビジネスやマーケティングの観点からも重要であり、組織に女性がいないことは大きな機会損失につながる可能性があります。IFにおける女性会長の人数はまだ少ないものの、今後は変わっていく必要があり、講演を通じて多くの学びがありました」と参加者に向けて感謝の意を伝え、フォーラムを締めくくりました。


当日の記録映像は、こちらからご覧ください

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