日本オリンピック委員会(JOC)は6月13日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「令和7年度JOC国際人養成アカデミー(JISLA)」の開講式を行いました。このアカデミーは、国内スポーツ組織が国際スポーツ組織との関係を強化することへの支援を目的にした、人材の国際力向上を図る人材育成事業です。本事業を通じて、所属する国内スポーツ組織を代表して国際スポーツ組織において影響力を発揮し、所属組織のプレゼンスを高めることができる人材の育成を目指しています。
過去14年間のなかで、391名の方がこのコースを受講し、うち延べ137名の方がIF(国際競技連盟)、74名の方がAF(アジア競技連盟)でポジションを得ました。 また、4年前の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会においては、多くの修了生が競技運営テクニカルマネージャーとして活躍しました。15年目となる今年度のアカデミーは、19の国内競技団体(NF)等から推薦された 計26名が受講。開講式には受講生とアカデミーのスクールマスターやNFを代表する方々らが参加しました。
最初に主催者を代表して、星香里JOC常務理事が挨拶に立ち、本アカデミーの参加への感謝を述べ、「国際的な活動をするにあたっては、相手方の文化理解を深めて尊重すること、そして同じぐらい自分の国のことを知って誇りに思うこと、それがすごく大事だと気付かされました」と自身の経験にも触れながら、「半年間にわたる84コマの講義の中で、異文化理解や思考法について臆せず学んでいただきたい」と述べました。最後に「半年後の11月の閉講式の際には皆さんが『よし、国際スポーツ組織で頑張ろう』と意欲を持ってくださっていることを心から期待しています。仲間と共に頑張ってください」と参加者にエールを送りました。
続いて、来賓を代表し、スポーツ庁参事官国際担当の小川哲史氏が挨拶を行いました。小川氏は、スポーツ庁が2010年より国際競技団体への人材派遣を、また2015年からはIF役員ポスト獲得支援を進めてきたことに言及しました。選挙活動のサポートや人材育成プログラムの開発などを通じ、多くの日本人がIF役員ポストで活躍している現状に対し、これは競技団体の皆様の尽力によるものだと感謝の言葉を述べました。また、今年開催される東京2025世界陸上競技選手権大会やデフリンピック東京大会、2026年の愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会、ワールドマスターズゲームズ2027関西大会など、今後多くの国際競技大会が日本で開催されることに触れ、これらの機会に日本が国際的なプレゼンスを発揮し、情報収集・発信を行うことの重要性を述べました。さらに、国際スポーツ界への貢献のためには、国際スポーツ組織で影響力を発揮できるグローバル人材の戦略的育成が不可欠であると述べ、JISLAは、まさにこの目標に合致する重要なプログラムであり、スポーツ庁としてもアカデミーと連携し、各競技団体のポスト獲得継続支援や次世代人材育成に注力していく意向を示しました。結びに、「このアカデミーが有益なものとなり、受講生の皆さんが国際人として必要な素養とネットワークを身につけ、近い将来世界を舞台に羽ばたかれることを祈念いたします。頑張ってください」と受講生に対しメッセージを送りました。
次に、アカデミーの理念や方針、カリキュラムや運営等に様々な助言をいただく3名のスクールマスターの紹介があり、代表してワールドトライアスロン副会長ならびに公益社団法人日本トライアスロン連合専務理事を務める大塚眞一郎氏より挨拶がありました。はじめに、参加者に対し「皆様のこの意気込み、前向きなスポーツへの貢献を非常に嬉しく思っております」と歓迎の挨拶を述べました。続いて、「アカデミーは15年目を迎え、その時々の日本のスポーツ界の状況によって、年々皆様に求めるもの、皆様の将来に対してお願いしていきたいことが少しずつ変わってきています」と説明し、東京2020オリンピック・パラリンピックの招致から開催、そして現在までの状況変化に触れました。そしてご自身のIFでの経験も踏まえ、「IF役員の業務範囲が以前より非常に広がっており、皆さんがそこに没入していけるか、没頭していけるか、そういった将来のことも踏まえて、これから84コマの時間を皆さんと共有していければと思っております」と挨拶しました。
続いて、修了生による事業紹介として、令和6年度修了生である公益財団法人日本サッカー協会の雨宮大一郎氏がJISLAを受講して得たもの、そしてこれからJISLAを受講される皆様に経験していただきたいことを話しました。雨宮氏はJISLAを通じて自身の担当業務に関わる分野の関心が広がり、『仲間とネットワーク』『リーダーシップと国際的視野』『発信力とコミュニケーション』の3つを得ることができたと述べました。また、JISLA受講中に大切にしてほしいこととして『ラーニングゾーン』の概念を紹介し、「失敗を恐れないこと、失敗するための研修だと思って、パニックゾーンに行かない程度に楽しんでいただきたい」と話しました。最後に、「I・S・L(インターナショナル・スポーツ・リーダー)を習得、強化し、半年後にはJISLA人になっていただきたい。このI・S・Lの強化を一緒に頑張りましょう」と呼びかけ、スピーチを締めくくりました。
最後に今年度の受講生26名全員の紹介が行われ、和やかな雰囲気で開講式が執り行われました。アカデミーは週末を中心に全8週間の過程で行われます。受講生たちは国際スポーツ界で活躍するために必要な知見に関する講義を受けるほか、プレゼンテーション、ネゴシエーションなどのコミュニケーション方法を英語で学び、最後にアセスメント(修了試験)を受験。各カリキュラムを通じて、国際力向上を目指します。
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