日本オリンピック委員会(JOC)は5月24日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「令和6年度JOC国際人養成アカデミー(JISLA)」の開講式を行いました。このアカデミーは、国内スポーツ組織が国際スポーツ組織との関係を強化することへの支援を目的にした、人材の国際力向上を図る人材育成事業です。本事業を通じて、所属する国内スポーツ組織を代表して国際スポーツ組織等の政策決定過程に関与できる人材、国際的な折衝において活躍できる人材、あるいは国際連携・貢献を実践できる人材の育成を目指しています。
過去13年間のなかで、368名の方がこのコースを受講し、うち117名の方がIF(国際競技連盟)、67名の方がAF(アジア競技連盟)でポジションを得ました。 また、3年前の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会においては、多くの修了生が競技運営ディレクターやテクニカルマネージャーとして活躍しました。
14年目となる今年度のアカデミーは、18の国内競技団体(NF)等から推薦された 計23名が受講。開講式には受講生とアカデミーのスクールマスターやNFを代表する方々らが参加しました。
最初に主催者を代表して、JOC国際委員会委員長でもある横井裕JOC副会長が挨拶に立ち、「JOC国際委員会では、一昨年JOCの国際戦略の基本方針として『JOC自身の国際力の向上』『NFの国際力向上の協力・支援』『国内外のスポーツ組織の連携の推進『これら3つを推進するための国際人材の育成』を掲げました。様々な施策を推進していく上ではまず何よりも国際人材の育成が最も重要とみなしており、そして14年目となるこの国際人養成アカデミーがその中核となると考えています。国際人材として今後どのように活躍したいのか、このアカデミー終了後にどのようなキャリアを目指していくかということをぜひ具体的に考えていただきたいと思います。皆さんが国際的な舞台で大きく羽ばたけるように、最大限の支援をしていきたいと考えています」と受講生に対しメッセージを送りました。
次に、JOC国際委員会委員であり、アカデミーの講義や運営等に様々な助言をいただくスクールマスター3名が紹介され、続けてスクールマスターの1人であり、ワールドラグビー理事、日本スケート連盟副会長等を務める齋木尚子JOC国際委員会委員が「国際的に活躍する人材」というテーマでスピーチを行いました。スピーチの冒頭、齋木JOC国際委員会委員は「日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提とした上で、豊かな語学力、コミュニケーション能力、主体性、積極性、異文化理解の精神といったものを身に付けており様々な分野で活躍できる人材が、国際的に活躍できる人材とされている」と紹介しました。
続けて、齋木JOC国際委員会委員が出会った国際的に活躍できる人材の実例として、日本人として初めて国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏に関するエピソードをいくつか紹介した上で、「緒方氏は使命感を持っておられました。それは生きる意味と言い換えても良いものかもしれません。この使命感は、国際的に活躍する人材にとって最も重要な資質の一つと言えるのではないかと思っています」と語りました。
最後に受講生に向けて「皆さんはスポーツの分野で国際的に活躍されることが期待されております。スポーツには人や社会を変える力があると思います。スポーツを通じてより良い社会を目指す、人のために尽くすという使命感を持っていただき、この国際社会の中で活躍できる人材を目指して、これから8ヶ月、本アカデミーにて頑張っていただきたいと思います」とメッセージを送りました。
続けて修了生による事業紹介として、本アカデミー修了生の平井蘭子氏(日本スケート連盟フィギュア委員会委員、国際スケート連盟審判資格)が登壇。本アカデミーによって身につけた内容を紹介した上で、「オランダの大会にチームリーダーとして派遣されたのですが、アカデミーで学んだ内容を活かして現地スタッフとバスの時間の交渉をすることができました。その結果チームの負担が軽減され、実力通りの順位を残すことができました」と、交渉の目的や進め方といったアカデミーで学んだ内容を活用することができたエピソードを述べました。最後に受講生に向けて「アカデミーでは充実した時間を過ごせると思いますので、多くの方とお話してたくさんのことを吸収していただけたらと思います。ご自身や所属団体の活動におけるヒントが必ず得られると思いますので、楽しんでください」とアドバイスしました。
最後に今年度の受講生23名全員の紹介が行われ、和やかな雰囲気で開講式が執り行われました。
アカデミーは週末を中心に全8週間の過程で行われます。受講生たちは国際スポーツ界で活躍するために必要な知見に関する講義を受けるほか、プレゼンテーション、ネゴシエーションなどのコミュニケーション方法を英語で学び、最後にアセスメント(修了試験)を受験。各カリキュラムを通じて、国際力向上を目指します。
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