MENU ─ ニュース
2012.03.23 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
アスナビ説明会に出席したオリンピックを目指す選手たち
JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
市原則之JOC副会長兼専務理事

 日本オリンピック委員会(JOC)は2月7日、トップアスリートの就職支援ナビゲーションシステム「アスナビ」の説明会を愛知県名古屋市で行いました。「アスナビ」とは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技を安心して続けることができる環境を作るために、企業側のサポートを呼びかける活動です。5回目の説明会となる今回は、ロンドンオリンピック・ソチ冬季オリンピックを目指す選手7名(ビデオ登場アスリート3名含む)が、中部経済同友会および岐阜県経済同友会のメンバー64社81名の企業役員に対して、就職先を見つけられない状況を説明し、それぞれが企業のために貢献できることを話した上で支援を求めました。

 市原則之JOC副会長兼専務理事は「トップアスリートの活躍は国民、特に子どもたちに大きな夢や希望を与えてくれます。一方で、トップアスリートでもなかなか就職できず将来の生活に対する不安を抱えているのが現状です。JOCとしては、選手たちの雇用をサポートしていかなければならないと考えております」と、アスナビを始めた経緯を説明しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
山下泰裕JOCゴールドプラン委員会委員
JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
荒木田裕子JOC理事・JOCゴールドプラン委員会副委員長

 続いて、山下泰裕JOCゴールドプラン委員会委員が、自身のオリンピックでの経験を話した後、「オリンピックを目指し、競技生活をしているアスリートたちはいろんなものを体験し学んでいる。目標に向かい努力すること、仲間とのチームワークの大切さ、ルールを守り戦った相手を尊重する、フェアプレー精神などは、必ず社会人として発揮でき、会社の力になると思っている」と先輩アスリートとして訴えました。

 さらに、荒木田裕子JOC理事・JOCゴールドプラン委員会副委員長は、「日本のトップスポーツは企業に支えられてきましたが、バブル経済の崩壊後、企業のスポーツに対するニーズが変化し、スポーツを企業理念と結びつけ強化に取組む企業と、休廃部により撤退に向かう企業の二極化が進んでいます。結果、多くの選手が職や支援を失い、競技生活を断念、または就職活動との同時進行を余儀なくされ、十分な練習時間の確保に苦労しています。昨年3月11日の東日本大震災の時には、アスリートたちがすぐに立ち上がり、現地に向かいました。アスリートの行動力は、企業で役立てていただけけると信じております。本日は選手4名が登壇し、海外遠征・大会などで登壇できない選手がビデオで登場しますので、アスリートの声を聞いていただきたいと思います。また就職支援を希望する14競技団体22名の選手のエントリーシートも配布しました」と説明しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
実際にアスナビを活用した企業による説明
JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
64社81名の企業役員が出席

 また、アスナビを活用し、昨年、水泳/競泳の上田春佳選手、カヌーの竹下百合子選手の2名を採用したキッコーマン株式会社の松崎毅人事部長と、名古屋フラーテルホッケーチームの運営母体であるNPO法人愛知スポーツ倶楽部の永井東一専務理事が登壇。
 松崎人事部長は、「選手を雇用したことにより社内が明るくなり、試合があるごとに、社員が大会会場に応援に行き活気も出てきました。社員の連帯感、一体感を醸成するにはアスリートはとても貴重な存在だと思いました」と採用のメリットを挙げました。
 永井専務理事は、1985年表示灯株式会社の20周年記念の一環として、ホッケーチームを設立したが、予算や活動に制限がかかるようになったこともあり、組織の存続と新たな運営モデルを模索し、2005年に5社が中心となり、NPO法人愛知県スポーツ倶楽部を設立し、翌年名古屋フラーテルが活動を開始しました」とチーム設立経緯を説明。その後、雇用先での選手の仕事内容や様子などを写真で紹介し、「選手は採用された職場の同僚に応援してもらえるような雰囲気になり、試合会場へも皆が足を運んでいます。選手が入社したことで、その企業にホッケー支援の輪が広がっています」と話しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
今井啓介選手
JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
坂本鷹志選手

 その後、就職先を探している7名(ビデオ登場3名含む)が81名の企業役員などを前に緊張しながらも、それぞれの思いを語りました。

■今井啓介選手(ビーチバレー)
「現在、アルバイトをしながら、6月のロンドンオリンピック最終予選に向け日々練習をしています。今はロンドンオリンピックを目指していますが、私は以前、6年間パナソニック社員としての経験があるので、それを生かし引退後は社会人としてスポーツ振興に携わり社会貢献したいと思っています」

■坂本鷹志選手(体操/トランポリン)
「現在、日本体育大学で助教として、学生に講義をしていますが3月末で契約が切れます。ロンドンオリンピックでは男子の出場枠2枠の内、1枠は既に選手が内定しています。残り1枠は4月に開催される最終選考会で決定するため、そこで優勝することが今の目標です。また、オリンピックとは別に、個人での世界新記録の樹立も学生時代から目標にしているので、今年行われるワールドカップシリーズのいずれかで、再び挑戦したいと考えています。トランポリンは1日2時間位の練習となる為、海外遠征や大会期間以外は勤務も可能で、社内外でのトランポリン教室実施などでも会社に貢献できると思います」

JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
星野貴智選手
JOCの就職支援「アスナビ」:中部経済同友会および岐阜県経済同友会メンバーへ選手が現状説明
吉田拓選手

■星野貴智選手(フェンシング)
「フェンシングは経験が重要な競技なので、小中学生から始めている選手がほとんどの中、高校生から始め日本代表選手になることができた。競技生活を通して培った、人一倍努力をすること、あきらめない強い気持ち、コミュニケーションの能力などは、会社で生かせる強みだと思っています。フェンシング競技は、ヨーロッパ遠征が多くなりますが、オフシーズンにはできる限り勤務したいと思います」

■吉田拓選手(カヌー)
「ロンドンオリンピック出場が叶わず挫けそうになったが、気持ちを切り替え、リオを目指すことにしました。しかし、マイナースポーツは稼ぎながら勝負を続ける事は難しい。現役中はカヌーに専念させていただき、オフシーズンは可能な限り勤務したい。現在、川下りのガイドのアルバイトなどをしているが、そこで培ったコニュニケーション能力、リーダーシップ、責任感なども社会人として生かしていけると思います」

≪ビデオ登場アスリート≫
■柏原理子選手(スキー/クロスカントリー)
「私が小学校1年生の時、自宅の近くで長野オリンピックが開催され、それ以来オリンピックを夢見て頑張ってきました。今は2年後のソチオリンピックに向けてトレーニングに励んでいます。競技者として戦うためには、たくさんの経験が必要だと思っています。そのためには漠然とした大きな目標だけでなく、小さな目標からコツコツと積み重ねて確実にクリアしていくことが大事だと思っています。社会人として、仕事の経験を積みながらソチオリンピックを目指したいと思います」

■桜井美馬選手(スケート/ショートトラック)
「現在、早稲田大学の3年生で、周りの友達は既に就職活動を始めていますが、練習や大会などで活動をすることができないことからこのアスナビにエントリーしました。ショートトラックは個人種目ですが、リレー種目もあり、チームワークがとても大切になります。もし会社に入ったら、チームワークや人との繋がりを大切にしていきたいと思っています。バンクーバーオリンピックでは納得のいく滑りができず悔しい思いをたくさんしたので、ソチオリンピックでは必ずリベンジしたいと思っています。私がよいパフォーマンスや成績を収めることにより、会社の人たちとともに喜びを分かち合うことができたら嬉しいと思います」

■羽根田卓也選手(カヌー)
「高校卒業後、単身でカヌーの本場スロバキアに留学しました。日本ではカヌーはマイナー競技のため、トップ選手でも競技生活は苦しいのが現状です。前回の北京オリンピックでは納得のいく成績が出ませんでしたが、昨年の世界選手権、ロンドンオリンピックの選考会では、日本人史上初となる決勝進出を果たし、10位という結果を残すことができました。ロンドンオリンピックでは、メダルを獲得し、カヌー・スラローム競技をアピールし、ご支援していただいた企業には、メダルの獲得を通して恩返しがしたいです」

 この「アスナビ」は、平成22年10月に経済同友会の協力により説明会をスタートし、現在、水泳/競泳の古賀淳也選手が「第一三共株式会社」、水泳/競泳の上田春佳選手とカヌーの竹下百合子選手が「キッコーマン株式会社」、フェンシグの下大川綾華選手が「テクマトリックス株式会社」、ビーチバレーの朝日健太郎選手が「株式会社フォーバル」、スキー/スノーボードの家根谷依里選手が「大林組」にそれぞれ就職が決定しています。
 JOCは今後も、企業と選手のより良いマッチングを行うために「アスナビ」による支援を行っていきます。

写真提供:中部経済同友会

ページをシェア

CATEGORIES & TAGS


キャリア支援 の最新ニュース

    最新ニュース一覧