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2021.11.09 オリンピック

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】芳田司:正直悔しい気持ちはありますが、メダルをとれて良かったんだな……と

 JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。

芳田 司(柔道)
女子57㎏級 銅メダル
混合団体 銀メダル

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】芳田司:正直悔しい気持ちはありますが、メダルをとれて良かったんだな……と
柔道女子57kg級銅メダル、ならびに混合団体で銀メダルを獲得した芳田選手(写真:アフロスポーツ)

■自分の持っている力を出し切る

――まず、女子57kg級で銅メダル、そして混合団体では銀メダル獲得となりました。率直な感想としてはいかがですか。

 金メダルをとりたかったので、正直なところ、悔しい気持ちがあります。

――金メダルをとりたかったんだろうなというのが、競技中、そして談話や振る舞いから伝わってきていました。少し時間がたちましたが、今も、その気持ちにあまり変化はないですか。

 銅メダルをとった直後はいろいろとこれまでの思いが、シャワーのように降ってきて、感情が爆発してしまいました。今は少し落ち着いて、体が疲れたな……といった思いはありますが、いろいろとオリンピックをかみ締めている状況です。正直悔しい気持ちはありますが、メダルがとれて良かったんだな……と。何もなかったら、ものすごく後悔したと思います。

――手元にメダルが2個あるということで、少しポジティブになれてきている感じでしょうか。オリンピックメダリストとなれた要因はどのように感じていますか。

 オリンピックを初めて見たのは小学2年の頃、柔道を初めてすぐでした。確か2004年のアテネオリンピックだったと思います。準決勝、劣勢で迎えた最後のギリギリ残り1秒、袖釣り込み腰で一本をとって逆転勝ちした横澤由貴選手を見て「かっこいい!」というのがオリンピックで印象に残っているシーンです。
本格的にオリンピックまでの道のりをイメージするようになったのは中学の頃。地元を離れて柔道に集中する、いわゆる「柔道一直線」という道を歩み始めました。身近な存在だった田代未来先輩が強化選手になり、「ああ、強化選手という道があるんだ」と知りました。その姿がすごくかっこよかったんですよね。柔道が大好きというよりは、初めて打ち込めるものができた、という感じでした。だからこそ、柔道という存在が大きくて、柔道を介して自分が成長していくのを感じて、その成長を試合で表現してきました。勝つとみんなが喜んでくれて、だからうれしい、ということを繰り返してきた人生でした。

――先ほど中学時代から親元を離れたという話もありましたが、今回同じ道場で一緒にやってきた田代選手、渡名喜風名選手と3人で代表に選ばれたことについてはどのように感じていましたか。

 本当に幸せだなと思っていました。こうやってメダリストがたくさんいる中で、二人とは一緒の中学でしたし、日本一を目指して一緒に戦ってきた存在でした。そこからオリンピックという頂点にある大会に出ることになり、結果も残せたということは、今後思い返した時に大きく残るものになりました。

――渡名喜選手にもお話を伺いましたが、大会中、「お互いにとくに言葉はかけていないですが、自分の中ではすごく心強かった」とおっしゃっていました。芳田選手は、田代選手や渡名喜選手と一緒にオリンピックに出て、その活躍を見ながら何か感じたことはありましたか。

 二人とも私があまり喋るのが得意ではないのを知っています。喋るよりも、試合が舞台だと思っていますので、試合を見たり会ったりすれば調子がすぐに分かるし、そうやって伝わったのかなと思うとうれしく感じました。

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】芳田司:正直悔しい気持ちはありますが、メダルをとれて良かったんだな……と
延期期間は自分と向き合うことを重点的に行った(写真:アフロスポーツ)

――今大会は、新型コロナウイルス感染症拡大という前代未聞の状況で、1年延期されて実施されました。この1年、芳田選手が何か取り組んで来たことや、重点的にやってきたことはありますか。

 ケガをすると治すのも大変ですが、柔道の練習ができないことで、心の部分を試合につなげるのにすごく時間がかかってしまいます。ですから、まずは自分と向き合うことが大事だと思います。自分と向き合うことで自分の違和感に気づくことができますし、練習の数をこなしていく期間で問題点や成長できる部分を探していくのは本当に地道な作業です。いろいろな合宿にも参加させてもらいましたが、場所によっても選手たちの技やカラーが違うので、そういうところでも流れを読みながら自分の練習に工夫を取り入れるようにしています。そうやって、ずっと試行錯誤しながら自分を正していくだけですね。ただ、相手の研究をし過ぎてしまい自分の軸がなくなってしまうのもいけないので、自分の持っている力を出し切れば優勝できると思ってやってきました。

――最後になりますが、芳田選手の活躍を見て、オリンピックを目指したい、柔道をやってみたいと思う子どもたちがいると思います。ぜひメッセージをお願いできますか。

 はい。とにかく柔道を楽しんでください。

――シンプルでいいと思います。ありがとうございました。

 ありがとうございました。

(取材日:2021年8月1日)

■プロフィール
芳田 司(よしだ・つかさ)
1995年10月5日生まれ。京都府出身。小学2年の時に柔道を始める。中学時代には相武館吉田道場に入門。田代未来らとともに全国中学大会などで優勝。初出場となった2017年の世界選手権では女子57㎏級で銀メダルを獲得し、翌年の同大会では初の金メダルを手にした。19年の世界選手権では銀。21年1月の国際大会で優勝。同年の東京2020オリンピックでは女子57㎏級で銅メダル、混合団体で銀メダルを獲得した。コマツ所属。

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