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2021.11.08 オリンピック

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】平野美宇:一人で戦っている感じはなかったです。たくさんの方の応援がすごく届きました

 JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。

平野 美宇(卓球)
女子団体 銀メダル

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】平野美宇:一人で戦っている感じはなかったです。たくさんの方の応援がすごく届きました
卓球女子団体で銀メダルを獲得した平野美宇選手(写真:フォート・キシモト)

■リオデジャネイロで芽生えた思い

――あらためて、卓球女子団体の銀メダルおめでとうございます。

 ありがとうございます。

――銀メダルを今、手にされていますが、率直な感想をお願いします。

 目標にしていたのは金メダルだったので、決勝で負けてしまって悔しい気持ちもありました。ですが、まずはオリンピックの舞台に立てたことがすごく幸せでした。たくさんの方の支えがなければ実現できなかったですし、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。大会を開催していただいたことにも感謝の気持ちが大きいです。

――リオデジャネイロオリンピックでは、リザーブとしてチームに貢献する形でしたが、今大会は選手として舞台に立つことができました。そのことはどのように感じていましたか。

 前回はリザーブとしてベンチに入らせてもらいました。それまでももちろん東京オリンピックを目指していましたが、リオデジャネイロオリンピックに行ったことで、自分の甘さに気づけて、「このままじゃいけないな」と自分が変わることができたと思います。そこから本気で努力したから自信が生まれました。リオデジャネイロオリンピックの時に、選手ではありませんでしたが、オリンピックの雰囲気を感じたり、他の選手たちの本気度を目の当たりにしたりすることができた経験があったから、今回こうして結果を残せたのかなと思っています。

――オリンピック初出場でしたが、リオデジャネイロでオリンピックの雰囲気を肌で感じていたことが、今大会に活かせたということですね。

 はい、そうですね。そういう実感がありました。選手たちがどんな雰囲気で試合をしているかを前回見ていたからこそ、どこに気をつけるべきかなども想像できたと思いますね。

――今はいろいろと行動が制限されていると思いますが、そこも含めて想像できた状態で臨めたのでしょうか。

 確かに、まさかコロナ禍になっているとは想像できなかったので、実際には違うところもあるのかもしれません。ただ、試合前の準備や、緊張している様子の選手などいろいろと見てきて、これくらいの感覚がいいのかなというのは自分の中で感じることができました。そういう経験があったからこそ今回、納得のいくプレーができたように感じています。

――では自分の中で、うまくチューニングできて試合に臨めたということですね。

 はい、そうですね。うまくできたと思います。

■数々の苦労を乗り越えて

――平野選手は団体のみでの出場でした。その前に混合ダブルスや個人戦がありました。ご自身は挑戦に徹したとお話しされていましたが、この1週間はどのように過ごしたのですか。

 開幕してから1週間ほどは待っている時間だったので、他の選手達よりも調整する時間が長かったと思います。その時間は他の試合を気にしながらも、できる限り自分自身に集中することを考えていました。団体戦が始まる前から、各選手の成績も分かりますので、他国選手、そしてもちろんチームメートの調子も含めて何となく先入観のある状態で試合に入っていくことになります。そのことを少し不安に感じていたのですが、どんな状況でも自分のプレーができるように努力しようと思いました。

――連日会場には足を運んでいたのですか。

 はい、会場に行きました。

――そこで、チームメートや各国の選手の調子をつかんでいたということでしょうか。

 もちろん、全ての試合を見たわけではありませんが、2回くらい練習場へ自分の練習をしに行った時に、2回戦、3位決定戦、決勝と3試合くらい試合を見て、雰囲気を体験しました。大会序盤の雰囲気と決勝の雰囲気を両方味わえたので、見に行ってすごく良かったと思います。

――今回東京でのオリンピックとなりましたが、実際に足を運んだ時や、団体戦を戦っている時はどのように感じていましたか。

 本当は有観客が良かったですし、無観客だと聞いた時はショックでした。ただ、オリンピックに出ることに選手全員が懸けていることもあり、実際に試合をしてみると、選手も自分自身が熱くなっているし、周りが気にならないくらい集中できていたので、無観客という感覚もありませんでした。シングルスの時に試合を見た瞬間から「無観客は気にならないな」と思いました。私自身、意外と違和感なく試合ができたと思いますし、無観客でもたくさんの方がテレビで見てくださっていたので、一人で戦っている感じはなかったです。たくさんの方の応援がすごく届きました。

―― では、時を戻してリオデジャネイロオリンピックからこの5年間のことを振り返ってください。今回代表になるまで、平野選手の中でも山あり谷ありだったと思うのですが、どのようなことが印象に残っていますか。

 まずは、リオデジャネイロオリンピックが終わった後に自分が変われたことが大きかったのかもしれません。すぐに成績が出るようになり、オリンピック直後の1年間は本当に出る大会全てでほとんど良い成績でした。自分の納得いく試合ばかりでしたし、本当に調子が良かったんです。でも、そこから2年くらいは本当に納得のいく試合が全く記憶にないほどで……。そのギャップが大きすぎて、本当につらくて、卓球があまり好きではなくなりました。代表争いの選考がかかっている間も正直なところかなり苦しくて、「卓球をやりたくない」と思うことが多くなりました。ただ、今回オリンピックに出場して、「卓球を続けていて良かったな」と久しぶりに思いました。

――代表権をつかめたことは、これからの卓球人生に向けてもいい機会になりましたか。

 そうですね。本当にいきなり成績が出たことも、卓球をやめたくなったことも、これまでなかったんです。その初めての経験がこの 5年間で全て出てきました。中学生の頃はただ自分が成長するだけでしたが、だんだん年下の選手が活躍するようになってきて、それで難しさを感じるようになりました。本当に卓球をやりたくない時もあったので、それを乗り越えた今、自分の自信につながっていると思います。

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】平野美宇:一人で戦っている感じはなかったです。たくさんの方の応援がすごく届きました
平野選手は念願のオリンピックに出場し「卓球の楽しさを久しぶりに感じることができた」と振り返った(写真:フォート・キシモト)

■オリンピックで思い出した卓球の楽しさ

――卓球以外の競技だったり、親交のある選手だったり、今大会で何か気にかけていたものはありますか。

 競泳の池江璃花子選手とは仲が良くて、食事に行くこともあるので、彼女の試合を少し見ました。

――池江選手の様子を見てどうでしたか。

 出場できていること自体が本当にすごいことだと思います。私たちには分からないくらい本人は苦しい時期もあったと思うのですが、それを乗り越えてここまでできているという姿に本当に感動しました。本当に泳げていることだけでも素敵だなと。自分も今回プレーできて幸せだと感じることができたので、好きな競技をプレーできているということだけで本当に幸せなことだなとあらためて思いました。

――平野選手と池江選手の間で何かメッセージはやりとりされたのでしょうか。

 大会前は「お互いに頑張ろう」という話をしていました。終わった後、「おめでとう」というLINEをもらって、本当にうれしかったです。

――感動的なシーンも多いオリンピックですが、一方でオリンピックに対する否定的な意見も多く聞かれた大会になりました。スポーツに対してネガティブな感情を持った人もいると思います。平野選手がオリンピアンとして、そしてメダリストとして、今後どのようにスポーツの良さを伝えていきたいと思っていますか。

 オリンピックが開催されることもそうですし、試合ができることもそうですし、全てが当たり前じゃないということをこの1年で実感することができました。今回試合ができたことはすごく幸せでしたし、いろいろな方に開催していただいて感謝したいと思っています。批判的な意見も確かにあります。そのことも理解できますが、私たちは私たちができることをやるしかありません。私は音楽などから元気をもらうことが多いのですが、同じように、私たちの試合を見て頑張ろうと思ったとか、元気になったとか、そういう方が少しでもいたならうれしく思います。

――音楽が好き、アイドルが好きと伺っています。試合前や調整中に、聞いていた音楽はどのようなものですか。

 櫻坂46の『BAN』という最新曲が好きです。乃木坂46など、いわゆる坂道系の曲を聴いています。

――オリンピックが終わって、ライブに行きたい気持ちもありますか。

 そうですね。食事に行ったりライブに行ったりというのが全然できませんでしたから、好きな友達と自由に会えるといいなという思いはあります。

――また3年後にパリオリンピックが近づいています。今後の目標を伺えますか。

 これまで東京2020オリンピックのことで頭がいっぱいでしたので、正直、今、パリオリンピックのことを考えられないです。でも今回戦ってみて、オリンピックは本当に楽しいなと思いました。卓球の楽しさを久しぶりに感じることもできたので、またこれから頑張っていきたいとい思っています。

(取材日:2021年8月7日)

■プロフィール
平野 美宇(ひらの・みう)
2000年4月14日生まれ。山梨県出身。母が指導する教室で3歳から卓球を始める。13歳の時にドイツオープンに同い年の伊藤美誠選手と組んだ女子ダブルスで出場し、ワールドツアー史上最年少で優勝。16年のリオデジャネイロオリンピックではリザーブとしてチームに帯同した。その悔しさをバネに17年のアジア選手権では中国のトップ選手を破って頂点に立つ。21年東京2020オリンピックではシングルスの代表切符は手にできなかったものの、女子団体メンバーに選出され、銀メダル獲得に貢献した。日本生命所属。

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