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2022.06.16 オリンピック

【北京2022冬季オリンピックメダリストインタビュー】森重航:感動をもらう側から与える側へ

 JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、北京2022冬季オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。

森重 航(スケート/スピードスケート)
男子500m 銅メダル

【北京2022冬季オリンピックメダリストインタビュー】森重航:感動をもらう側から与える側へ
スピードスケート男子500mで銅メダルを獲得した森重航選手(写真:アフロスポーツ)

■オリンピックで得た自信

――銅メダル獲得、おめでとうございます。(※)メダリストになってみて、変化を感じることや反響はいかがですか。

 正直なところ、まだあまり感じていないんですけど、ただSNSのフォロワーがすごく増えたことが個人的に一番びっくりしています。
(※インタビュー実施日2022年2月19日)

――そういうところに影響しますよね。ご家族の反応はいかがですか。会話はされましたか。

 家族とは本当にいろいろ話をしているのですが、「すごい」「頑張ったね」といった反応で、ありがたい言葉ばかりを受けとっています。

――今シーズンに入ってから距離別選手権で優勝したり、ワールドカップで初優勝したり……、オリンピックに向けて急成長を遂げた「シンデレラボーイ」的な存在として注目を集めるようになったと思います。ご自身としては、その間どのような手応えをつかんできたのでしょうか。

 そもそも自分の中で、オリンピックについては本当に考えもしていなかったほどですから、この4年間をかけて準備してきようなことももちろんありませんでした。ただ、このタイミングで成長できて、また、オリンピックという舞台で力が発揮できたことが、今後の自信につながると感じています。今までのオリンピックでは、感動を与えてもらう側の立場だったのですが、今大会では少しでも自分の力で感動を与えられたということがすごく良かったです。

――500mのレースではフライングがありました。ますますプレッシャーがかかったのではないかと見ている側はドキドキしたのですが、ご自身としてはいかがでしたか。

 レース当日は本当に緊張することもなく楽しめていました。1回目のフライングがあった時点では、どちらがフライングしたんだろうと確認しながら「今のがフライングか?」と疑問に感じていたのも事実です。そして、2回目。失格のことも頭をよぎりましたが、そんな中でも2回目としてはベストのスタートが切れたと思います。

――一人のスケート評論家として、ご自身のことを見つめた時に、メダルをとったレースのどのようなところが良かったと思っていますか。

 全体として落ち着いてスケートができていたことではないでしょうか。どうしても焦ってしまうことがあると思うのですが、バックストレートで前の選手を追えたことや、2個目のカーブで自分の強みを十分に発揮できたことは良かったと思っています。

――レース後は涙を流すシーンもありました。

 (首をかしげて)そうでしたっけ(笑)。
 本当にうれしい気持ちがあります。今回モットーにしていたのが「悔しいと思わないようなレースをする」こと。タイム的にはまだもう少し伸ばせたように思うのですが、その中でも自分としては出し切ったと思えているので、うれしさが大半を占めています。

――良かったです。私たちもうれしい気持ちでお話を伺えます。そして、昨日の1,000mはいかがでしたか。

 1,000mも上位を目指して挑戦していったのですが、自分の課題としている最後の1周が、思うようにいかずに残念な結果になってしまいました。これからも500mだけじゃなく、1,000mという距離が課題になってくるのかなと思っています。

■刺激をもらえるライバルたち

――ともに戦った村上右磨選手、新濱立也選手は同郷でもありますね。森重選手にとってどんな存在でいらっしゃいますか。

 二人とも本当に心強い先輩選手だったので、自分はのびのびと本大会に臨めました。本当に力を合わせて、プレッシャーも分け合いながらオリンピックを戦えたと思っています。

――二人から何か言葉はありました?

 新濱さんはレース当日、「3位おめでとう」そして「日本勢としてメダルをとってくれて良かった」と言っていただきました。村上さんからも次の日に会った時「おめでとう」と言っていただくとともに、「みんな、もうちょっといけそうだったよね」という話をしました。

――ライバルの存在は森重選手にとってどういうものですか。

 自分は二人のことをすごくライバル視しているということはないのですが、でも、「負けたくない」という気持ちはありますし、レースごとに気持ちを高めてくれて、高いレベルで競技ができている点ですごく刺激になっていると思っています。

――初めてのオリンピックに参加して、どんな印象、どんな魅力を感じましたか。

 緊張してしまうのではと想像していたのですが、参加してみると本当に楽しくスケートができました。また、多くの方々に注目されるので、それも含めて参加して良かったと思える大会でした。

――注目されるのはやっぱりうれしいものですか。

 はい、そうですね。ワールドカップをライブ中継でやっていても注目度はそれほどでもないですし、これだけ注目されるオリンピックという舞台に参加できて良かったです。

――他競技の選手と選手村で会えるのもオリンピックならでは良いところだと思うのですが、選手村で体験したエピソードがあれば教えてください。

 いえ、本当に交流が全然なかったです。交流できれば良かったと思うのですが、競技の出番も後半の方になってしまいましたし……。次回以降、もし参加できたらいろいろな種目の皆さんと触れ合ってみたいなと思います。

――閉会式には参加されるのでしょうか。

 はい、する予定です。

――そこでまた、いろいろな選手たちコミュニケーションをとれると良いですね。

 そうですね。話したり、写真を撮ったりできるとうれしいです。

【北京2022冬季オリンピックメダリストインタビュー】森重航:感動をもらう側から与える側へ
スピードスケート男子500mで銅メダルを獲得した森重航選手(写真:アフロスポーツ)

■感動を届けていきたい

――東京2020大会は延期となって昨年1年遅れで開催されましたが、ご覧になっていましたか。

 はい、見ていました。スケートボードの堀米(雄斗)選手はすごいと思ってずっと見ていました。もちろん、普段横乗りのスポーツなどを自分でするわけではないのですが、スポーツを見るのも本当に好きなので、どんな種目を見ていても、勇気を与えてもらっています。堀米選手は、本当にただただ「すごい」の一言です(笑)。

――普段見るスポーツには他にどんなものがあるのでしょうか。

 普段見るのは、バレーボールなどですかね。男女関わらず、どちらも昔からは好きです。

――今大会では、何か刺激を受けた競技はありましたか。

 スノーボードは以前からずっと注目していたので、スノーボードの平野歩夢選手は本当に強いなと思って見ていました。あとは、スキージャンプ、フィギュアスケート、ショートトラック、さらにはリュージュなども見てきました。どの競技を見ていても、金メダルをとる難しさをあらためて感じます。そして、強い選手はこういった重圧のかかる舞台に立っても本当に強いんだなと思いました。

――話に出たスケートボードやスノーボードでは、選手たちが良いパフォーマンスをするたびに「イエーイ!」といった感じで褒め合っている姿が見られたりします。みんなより良い色のメダルをとりたいという気持ち以上に、それぞれが良いパフォーマンスをしたいと頑張っている姿を目の当たりにします。森重選手はそういうところを見てどのように感じていますか。

 自分も本当に良いタイムを出した人や、すごいなと思うパフォーマンスを目にした時は、レース前でも拍手をするタイプなので、ああいう姿を見ると素直に「いいね」と思っています。選手同士ももちろん競い合って争うわけですが、良いタイムを出したら「すごいな」って素直に褒めたいと思っています。ベストを尽くし合ったその先の順位は単なる結果でしかないですからね。それよりも、自分自身が良いパフォーマンスをする、納得のいく滑りができることが最も重要だと思います。

――オリンピアンとなり、さらに、メダリストとなり、注目度はますます高まると思います。森重選手は今後、どのようにしてスポーツやスピードスケートの魅力を伝えていきたいですか。

 まだ、そういうことは考え切れていないです。今大会を通して、同世代、同年代の人たちから「感動した」とか「勇気をもらった」といったメッセージを数多くいただきました。僕でもそういうものを届けられることを実感できたので、これからも自分自身の競技を通して感動を届けていきたいと思います。

――4年後、またオリンピックに出場したいと思いますか。

 はい、またこの場所に来たいですね。

――またこうしてお話を伺えることを楽しみにしています。今後の抱負を教えてください。

 次のオリンピックに向けては4年間あります。1年1年を大切にして、一歩一歩自分の中で成長していきたいと思います。

――これからも頑張ってください。あらためて、おめでとうございます。

 ありがとうございました。

■プロフィール
森重 航(もりしげ・わたる)
2000年7月17日生まれ。北海道出身。
幼い頃からスケートに親しみ、小学2年で本格的に競技を始める。頭角を現すと、中学時代には中学記録も打ち立てる。21-22シーズンよりナショナルチームのメンバーに。21年10月には全日本距離別選手権で男子500mで優勝、12月にはワールドカップ第3戦では男子500mで日本人2人目となる33秒台をたたき出し初優勝を果たす。初出場となった北京2022冬季オリンピックでは男子500mで銅メダルを獲得。TEAM JAPANスピードスケート男子チームにとって3大会ぶりのメダルとなった。専修大学所属。

(取材日:2022年2月19日)

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