選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

国際競技力向上のためのユースエリートに対するキャリア支援の在り方とナショナルトレーニングセンターの役割に関する調査研究

研究者:(財)日本オリンピック委員会NTC本部 JOCキャリアアカデミー事業 アシスタントディレクター 相馬浩隆
共同研究者:八田茂、和田貴広、徳野涼子

近年、国際競技力向上に向けた取り組みの中に「選手のキャリア支援」を位置づける国が増えている。各国で取り組まれているキャリア支援プログラムは、その普及はある程度競技スポーツの高度化に伴っていること、プログラムの目的は競技の成果追求と引退後のキャリア追及の両立を支援していることなどが、共通していると指摘されている。

しかし日本におけるトップアスリート向けのキャリア支援は活動が始まったばかりで、そのプログラム内容の検討の十分とはいえない状態である。そこで本研究は、国際競技力向上に向けた取り組みの一環としての、キャリア支援プログラムの検討に焦点を当てた。

プログラムの検討のために、北京オリンピックでのメダル獲得数上位国のうち、共産主義国を除いた上位国であるアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアにおけるキャリア支援プログラム内容を概観し、さらにアメリカにおけるユース年代向けキャリア支援プログラムの実施状況を調査した。これによると、各国ともにトレーニングと教育や職業訓練の両立を支援の柱に据えている。そのためにアドバイザーなどの専任担当者を置き、相談に応じたり情報提供をしている。

各国のユース年代アスリートへの支援のキーコンセプトは、教育や訓練を通じて学位や資格を得て競技引退後に備えておくこと、そして教育や訓練の場でのさまざまな経験を通じて自己効力感や自己有能感を養い、トレーニングへの動機付けに繋げることである。また、ユース年代アスリートが学ぶことを動機付けるためには、日常的に選手に接するコーチの理解や指導が重要となる。

わが国において実施すべき、国際競技力向上に向けた取り組みの一環としてのユース年代アスリート向けキャリア支援プログラムは、各国同様に、トレーニングと教育の両立を積極的に支援する必要がある。そのために、コーチの理解や協力を得るための、コーチ向け教育プログラムも必要となる。ただし日本と欧米間にある、学位の労働市場における価値の相違、自らのキャリアについて自覚を促す社会環境の相違を適正に評価する必要がある。

また、わが国におけるキャリア支援の拠点はナショナルトレーニングセンターに置かれているが、現在のところ西が丘地区1ヶ所に設置されているのみである。今後の支援のあり方として、競技別強化拠点を含むJOC拠点ネットワークにおける支援ネットワーク作りも検討していくべきである。


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