選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

青少年に対するアンチ・ドーピング教育の重要性とオリンピアンがロールモデルとして果たす役割に関する研究

研究者:山形県体育協会 指導員 原田めぐみ
共同研究者:田辺陽子、萩原智子、太田拓弥、小野多恵子

アンチ・ドーピングの組織的役割や枠組みが整備され、グローバルな協同関係が生まれている動きの中で、ドーピングの抑止力としてだけでなく、スポーツの「固有の価値」を主体的に守っていくためのアンチ・ドーピング教育活動の重要性が高まってきている。

スポーツからドーピングを撲滅するための動機のひとつとして根源的な問いとされるスポーツの価値や意義を、若い世代にどのように伝えていくことができるのかが今後の国際、国内レベルでの課題とされている。しかし、若者への「ロールモデル」とされるアスリートがこれまでどのような役割を担い、主体的に関わっていくのか、そしていかなる方法でスポーツやアンチ・ドーピングの基本的理念である「フェアプレイ精神」といったメッセージを伝えていくことが効果的なのかが明らかにされていない。

本稿では、イギリスの事例研究を元に日本のアンチ・ドーピング教育活動を推進するためにエリート・アスリートの教育活動への参加形態、価値の形成について分析をした。

まず、イギリスにおけるスポーツの政策的位置づけ、スポーツに求められる社会的役割の変遷について説明し、その流れの中でアンチ・ドーピング政策が発展してきたかについてふれる。そして、イギリスのアンチ・ドーピング教育の具体的プログラム、実施状況、アスリートのアンチ・ドーピング活動への参加形態について検証する。

イギリスのアンチ・ドーピング教育は、1999年世界アンチ・ドーピング機構設立、2003年世界アンチ・ドーピング規程が制定されるまで具体的な取り組みが行われていたわけではなかった。しかし、2005年にイギリス国内の教育活動として「100%MEキャンペーン」が開始されたことで、アスリート自身が “100%ME”であることが「真のチャンピオン」であることの証となる、という自己認識が可能となる「フォーマルな」機会が創出された。100%MEプログラムがアスリート中心で、アスリートの参加が可能なように簡素でオープンなものとなっているだけでなく、100%ME 自体が「ブランディング化」されたことで、アクティブな関わりをするアスリートのパブリック・イメージがブランド化され、そのアスリートの価値を示す言葉とともに伝えられるようになった。また、エリート・アスリートがスポーツやアンチ・ドーピングの現状分析、問題、課題を検証するような政策のオーナーシップを取っていく過程が生まれている。イギリスの事例は、日本において青少年のロールモデルとしてのアスリートの特質、アンチ・ドーピング教育への参加形態を考察する際の一助となると考えられる。


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