選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

スラップスピードスケートにおける蝶番位置の違いがスケーターのパワー発揮に及ぼす影響に関するバイオメカニクス的研究

研究者:信州大学大学院 教育学研究科 竹中俊輔
共同研究者:斉川史徳(信州大学大学院 教育学研究科)、結城匡啓(信州大学 教育学部)

本報告では、ブレードに作用する力が計測できる特製スラップスケートをいくつかの異なる支点位置に設定し、足長などの形態の異なる6名のスケート選手に履かせて氷上でキック動作を行わせ、3次元的に解析することにより、足に対する支点の相対位置が下肢のパワー発揮に及ぼす影響についてバイオメカニクス的に検討することを目的とした。

大学男子選手に3種のスラップ支点位置に設定してセンサー内蔵の特製スラップスケートを履かせ、氷上で静止した滑走姿勢から全力で側方にジャンプさせ、その動作を3次元的にとらえるとともに、スケートに作用した力を解析する実験を行った。

その結果、以下のことがわかった。

  • 3種類のスラップ支点位置での水平跳躍距離は、前方位置でセンターおよび後方位置よりも大きかった。
  • 身体重心の水平速度は、ジャンプ動作の前半ではセンター位置のもので立ち上がりが早い傾向にあるが、離地時(100%時)には差がなかった。鉛直速度は、ジャンプ動作の終盤(80%時)以降で前方位置の値が大きい傾向にあるが有意な差ではなかった。
  • 身体重心速度の水平に対する角度は、40%動作時以降で跳躍方向に方向づけられ、60%動作時で後方位置の角度がセンター位置の角度よりも有意に大きく(p<0.05)、80%動作時で前方位置の角度がセンター位置の角度よりも有意に大きかった(p<0.05)。
  • ブレード反力の水平成分は、3試技ともに80%動作時まで徐々に大きくなるように変化していた。試技間の比較では、10%動作時あたりで前方位置の水平反力がセンター位置のそれよりも大きかった(p<0.05)。
  • ブレード反力の鉛直成分は、3試技ともに80%動作時まで徐々に大きくなるように変化し、10%動作時あたりで前方位置の鉛直力がセンター位置および後方位置の鉛直力よりも大きかった(前方位置>センター位置:p<0.05、前方位置>後方位置:p<.05)。
  • 股関節角度は、動作開始時では3つの試技ともに50°前後の屈曲した姿勢になっており、50%動作時あたりから急峻に伸展し、離地時でピークに達していた。試技間の比較では、動作開始時(0%)で前方位置での股関節角度がセンター位置のものよりも有意に小さかった(p<0.05)。
  • 股関節の伸展角速度は、30〜60%動作時で前方位置の試技のものが後方位置のものよりも有意に大きく(p<0.05)、膝関節でも60%動作時で前方位置の試技のものが後方位置のものよりも大きかった(p<0.05)。足関節では、30%動作時のセンター位置の伸展角速度が、後方位置のものよりも大きかった(p<0.05)。

 

これらのことから、スラップ支点が前方に位置する試技でジャンプ距離が大きかったことは、(水平方向では差がなかったが)発揮した総パワーが大きく、やや上向きに空中に飛び出したために「跳躍」動作としてパフォーマンス(飛距離)に優れていたものと考えられる。


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