選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

競技者のデンタルコンディショニングに関する研究〜適切な水分補給によるカリエスリスクコントロール〜

研究者:東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 准教授 上野俊明
共同研究者:中野真帆(東京医科歯科大学大学院 スポーツ医歯学分野・国立スポーツ科学センター スポーツ医学研究部)、高橋敏幸(東京医科歯科大学大学院 スポーツ医歯学分野・国立スポーツ科学センター スポーツ医学研究部)、豊島由佳子(国立スポーツ科学センター スポーツ医学研究部)、川原貴(国立スポーツ科学センター スポーツ医学研究部)

【目的】う蝕(虫歯・カリエス)や酸蝕症の発生リスクは口内環境の酸性化や乾燥化によって高まることが知られているが、競技者では発汗ならびに脱水に伴う唾液分泌減少の影響が大きいことが示唆されている。脱水予防ならびにパフォーマンス改善のための有効対策は適時の水分補給であるが、この水分補給によって口内乾燥も当然改善されうる。従って適切な水分補給によって、運動に伴う唾液分泌減少が改善され、虫歯の発生・進行をコントロールすることが可能であると推論される。そこで本研究では、この点に着目して、高強度運動負荷時の口内環境の経時変化を捉え、カリエスリスクに対する水分補給の有用性を科学的に検証することを目的とした。

【方法】健常者22名(平均26.9歳)を対象とした。各被験者には水分補給なし(条件N)、ミネラルウオーター補給(条件W)、スポーツドリンク補給(条件S)の3条件下で、最高脈拍80%レベルの自転車エルゴメータ負荷運動試験を隔日で各1回計3回行わせた。水分補給のタイミングと摂取量は随意とした。試験前後の唾液分泌量、pH、緩衝能およびストレプトコッカス・ミュータンス菌数(SM)レベルを測定し、3条件下で比較検討した。

【結果】条件WおよびSでの平均飲量は各々502.7mlおよび690.7mlであり、条件N、WおよびSにおける平均体重変化率は各々−0.96%、−0.16%および0.16%であった。運動直後の唾液分泌量に関して、条件Nでは平均31.3%の減少を示したのに対して、条件WおよびSでは、各々平均18.0%および9.3%の減少に止まった。条件WおよびSでは運動後60分および30分に唾液分泌量がベースラインに回復したが、条件Nでは60分後も回復しなかった。運動直後の唾液緩衝能に関して、条件N、WおよびSで、各々平均0.15ポイント、0.14ポイントおよび0.33ポイントの減少を示した。条件Wでは運動後30分にはベースラインに回復したが、条件Sでは60分を要した。SM菌数レベルに関して、いずれの条件下でも、運動負荷による有意な影響は認められなかった。

【考察】本研究結果より、運動時の水分補給は脱水予防やパフォーマンス改善のみならず、唾液分泌機能の低下を抑制し、カリエスリスクをコントロールすることにも有効であり、適切かつ十分な水分補給は良好なデンタルコンディションの維持・改善にも資する可能性が示唆された。


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