選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

高強度スポーツ実施者がスポーツ飲料に求めるもの

研究者:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 体育科学専攻 講師 麻見直美

かなりの発汗を伴うことが多い高温環境下や、高強度の運動時には、熱中症予防や体液バランスの維持のために水分補給がとくに重要である。一方で、運動による身体の変化に適応した飲料の成分設計が明らかになってきている。しかしこれらを考慮した飲料が、アスリートが好んで摂取する飲料かどうかは明らかにされていない。また、アスリートが実際にどのような飲料を選択し、それらに何を求めているかも明らかとなっていない。そこで、運動中や運動後にも美味しく飲める飲料の開発のための基礎データとして、運動中の飲料に求める要素を明らかにし、さらにスポーツ飲料の飲料快適度と濃度が脱水に及ぼす影響を検討した。

研究Ⅰでは、運動時の飲料摂取状況、および運動中・運動後にどのような飲料を好んで摂取しているかを明らかにし、運動時に摂取する飲料に求めている要素を検討した。T大学体育会に所属する運動部員305名を対象とし、運動時に摂取する飲料に関する質問紙調査を行った。

練習時・試合時を通して運動時に飲んでいる飲料は、水やお茶が最も多く、スポーツ飲料ではポカリスエットおよびアクエリアスが多く飲まれていた。これらは水分補給を目的として飲まれており、スポーツ飲料に関しては部活での提供という理由も多く見られた。全体的には、水分補給、おいしさ、エネルギー補給が飲料を選ぶ理由として多く挙げられた。また、スポーツ飲料に求める効果は「効率の良い水分補給」が最も多く、次いで「エネルギー補給」、「電解質補給」であった。競技別検討においても、すべての競技で「効率の良い水分補給」が最も多かった。しかし、次いで求める効果は競技によって異なり、これらは実際に飲んでいる飲料を選択している理由とほぼ同様の傾向を示していた。以上より、高強度スポーツ実施者が運動時の飲料に求めるものは水分補給であった。しかし、練習や試合などの運動のタイミングなどによって選ばれる飲料が異なることや競技の種類によっても選ばれる飲料が異なることから、練習・試合それぞれの状況に見合った飲料選択がされている可能性が考えられた。

研究Ⅱでは、アスリートの運動時の発汗が嗜好に及ぼす影響および嗜好的に好む飲料の摂取量と発汗量との関係を検討した。対象はT大学硬式テニス部に所属する女性8人、およびバスケットボール部に所属する女性12名であった。ミネラルウォーターおよびアクエリアスをミネラルウォーターで50%、75%、100%に濃度調節したスポーツ飲料を用いた。通常練習時にそれぞれ各回1種類配布し自由飲水してもらい、各回の水分摂取量および発汗量を算出した。

水分摂取量は水と比較し75%濃度のスポーツ飲料の摂取量がテニス群で有意に多く(p<0.05)、バスケットボール群では多い傾向が見られた。水分摂取量と発汗量について、テニス群、バスケットボール群ともに75%濃度スポーツ飲料で最も強い相関が見られ、発汗量に見合った水分摂取ができていたと考えられた。飲料快適度の順位はテニス群、バスケットボール群ともに運動前1位は75%濃度が最多であったが、運動後は100%濃度が最も多くなった。なお、順位による水分摂取量、体重減少率に有意な差は見られなかった。以上より、飲料の濃度により運動時の水分摂取量が変化し、運動により味嗜好が変化する可能性が示唆された。一方で、快適度の高い飲料の摂取が発汗量に見合うわけではないことが明らかになった。


ページトップへ