選手強化

スポーツ科学基金(アクエリアス基金)

2008年度 助成スポーツ科学基金 研究報告概要

高地トレーニングのためのガイドライン及び有効活用に関する研究

研究者:三重大学 教育学部 准教授 杉田正明
共同研究者:伊藤穣(ナショナルトレーニングセンター・拠点ネットワーク・情報戦略事業アシスタントディレクター)

我が国において高地トレーニングは、国際競技力向上のための手段として重要なトレーニングと位置づけられている。しかし、平成18年3月には不幸にも高地トレーニング実施中に死亡に至る事例も見受けられている。平成20年1月21日に東京都北区にナショナルトレーニングセンター(NTC)が開所し、NTC本部では対応できない高地トレーニングについては、既存のトレーニング施設をNTC競技別強化拠点として指定し、トップレベル競技者がより質の高い育成・強化活動を行うことが可能な環境の整備を図ることとなっている。このNTC高地トレーニング強化拠点としては、飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア(岐阜県高山市、下呂市)と蔵王坊平アスリートヴィレッジ(山形県上山市)の2施設が平成20年度に指定を受けている。

本研究では、高地トレーニングにおける国内外のガイドラインを概観するとともに、アメリカ、スペインのナショナルトレーニングセンターの現状を現地調査し、高地トレーニングを安全で効果的なものとするためのガイドラインの作成を目的とした。

高地トレーニングのガイドラインとしてアメリカでは競技種目を限定せず、トレーニングに特化したかたちのガイドラインと体調管理に関するガイドラインの2種類があり、スペインでは10の心得がガイドラインとして提示されている。日本体育協会の競技別(陸上競技)のガイドラインによれば、種目を限定したかたちでもあっても体調管理を含めた幅広い観点からガイドラインが作成されている。これらは本質的な内容に大きな相違は見られないものであった。USOCではガイドラインで示している標高よりもさらに高い標高3000mの場所でのトレーニングを検討していることや、高地環境で酸素を補給しながら高強度のトレーニングを可能にするための携帯型の酸素補給ユニットを開発し、トレーニングに利用して成果をあげている等、新たな取り組みを行っている。

国内外の高地トレーニングに関するガイドライン等を参考として、高地トレーニングNTC競技別強化拠点における安全で効果的に高地トレーニングを実施するためのガイドラインを作成した。高地トレーニングをより効果的なものとするためのガイドラインと高地での生活における体調管理面からのガイドラインの2種類とした。前者については、標高、期間、トレーニング、下山後の試合、体調管理の方法、その他の観点から構成されている。後者は、高地環境での生活が心拍数、脱水、糖質、鉄、免疫、酸化ストレス、紫外線、身体組成、精神面、睡眠などに与える影響を考慮した上で推奨される行動をまとめたものである。これまでに作成されている内容から大きな変更はなく、むしろ幾つか挙げられている視点を統合し、盛り込むかたちの新たなガイドラインとした。高地トレーニングがより安全で効果的なものになることと、国際球技力向上の更なる一助となることを大いに期待したい。


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