日本オリンピック委員会(JOC)は9月3日、「The Building up Team JAPAN 2021 for Beijing」をオンラインで開催しました。5か月後に控えた第24回オリンピック冬季競技大会(2022/北京)に挑むにあたり、日本代表候補選手と監督・コーチ等(ナショナルコーチ等、専任コーチ等をはじめとする強化スタッフ)を交えた研修会を実施することで、機運醸成を図り、Team JAPANの一員としての自覚と責任、連帯感を高めることを目的に開催。北京2022大会の日本代表選手団候補選手・監督・コーチ等、本会関係者など約300名が参加しました。
最初にオープニングメッセージとして、伊東秀仁JOC理事が本研修会の目的・主旨などを説明した後、「ぜひ積極的に参加していただき、代表選考会、北京2022大会に向けての気持ちを高めていただきたいと思います」と挨拶。また、前回の平昌冬季オリンピックではメダル13個、入賞数43と過去最高成績を収めたことを振り返り「今回の北京も平昌と同様、時差による影響が少なく、良いコンディションで大会に臨めると思っています。北京2022大会はすぐにやってきます。事前準備で後悔のないように、着実に取り組んでいただきたいと思います」と呼びかけました。
続いて、室伏広治スポーツ庁長官から寄せられたビデオメッセージを紹介。メダル獲得数、入賞数ともに過去最高だった東京2020大会の成果や、一方で新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって思うような結果を残せなかった競技の要因を分析した室伏長官は、「コロナ禍のような難しい状況で成績を残すためには、自分自身の立ち位置を正確に把握し、一つひとつ着実に目の前のことに取り組む姿勢が重要だと思いました」と参加者にアドバイス。そして、北京2022大会に向けて「今度は皆さんが活躍する番です。それぞれの最高の瞬間を迎えられますよう応援しています。頑張ってください!」とエールを送りました。
次に、「Chat With Champion!~東京2020大会メダリストから北京2022を目指す皆さんへ~」と題し、東京2020大会のメダリストによる講話が行われました。このプログラムにはJOCシンボルアスリートでレスリング女子フリースタイル57kg級金メダルの川井梨紗子選手、同じくJOCシンボルアスリートでフェンシング男子エペ団体金メダルの見延和靖選手、柔道男子60kg級金メダルの髙藤直寿選手、バスケットボール女子銀メダルの髙田真希選手が参加。上田大介JOC選手強化本部インテグリティ教育ディレクターによる進行のもと、主に「東京2020オリンピックまで半年前の当時を振り返って」「日本代表選手に決まってからの過ごし方」「大会期間中の出来事」「競技直前、競技中、好成績の要因」「大会を終えて今だから考えられること、北京2022大会を目指す選手へアドバイス」について、メダリストそれぞれから経験談などが語られました。
これら5つのテーマに沿う形で、コロナ禍における練習状況・海外選手との実力比較・不安解消などについて川井選手、髙藤選手が個人種目の観点からアドバイス。また、団体種目でメダルをとった見延選手、髙田選手からはチーム作りにおいてオンラインを活用したコミュニケーションの取り方などの工夫が紹介されました。さらに、行動制限が課せられたバブル方式での大会期間中の過ごし方や、SNSとの向き合い方などについても、メダリストそれぞれが自身の経験や実践したことなどを共有。一方、研修会に参加した冬季競技の選手たちからもコロナ禍におけるモチベーションの維持、無観客と有観客の違い、ピーキングのコツに関してなど積極的に質問が寄せられ、夏季・冬季競技の枠を越えた活発な情報交換の時間となりました。
プログラムの最後に、各メダリストから北京2022大会を目指す選手に向けて「思っているよりも早く大会が来るように感じると思います。1日1日を大事にして、金メダルを目指して頑張ってください」(髙藤選手)、「私たちは今回銀メダルを獲得することができましたが、それ以上に仲間たちと過ごしてきた時間の方がメダルよりもすごく価値のあるものだなと気づかされた部分もあります。ですので、それぞれの競技、チームで大会までの過程を楽しんでほしいなと思います」(髙田選手)、「オリンピックでメダルをとるには本当にどれだけ大会を楽しめるか、楽しんだもの勝ちだと思いますので、まずは自分が大会で活躍する姿を鮮明にイメージして、大会が始まったら雰囲気から何から何まで楽しんで、それを結果に結びつけてほしいと思います」(見延選手)、「オリンピックには魔物がいると言われたりしますが、私自身はそう思ったことがなく、魔物というのは自分の中の不安が試合で出てしまうことだと思っています。大会までの残り時間、オリンピックを目指す選手にとってはみんな平等な日数ですので、悔いのないように戦い抜いてほしいと思います」(川井選手)と激励の言葉が送られました。
引き続き上田ディレクターの進行のもと、「日本代表選手団候補者向けプログラム、スポーツ・インテグリティ総論~北京2022大会を目指す皆さんに求められるものとは~」と題し、インテグリティ教育プログラムを実施しました。
上田ディレクターはまず、前提としてスポーツは「する人」だけではなく、「見る人」「支える人」がいて初めて存在すると説明。そのうえで、新型コロナ禍はこれら「見る人」「支える人」に対して大きな影響を与えており、その結果、スポーツと国民の間には大きな溝ができている現状であると述べました。そのような状況下で、また、スポーツ界でいまだ不祥事が相次ぐ中、社会からの信頼を確保することが日本を代表するトップアスリートに求められている重要なポイントであると強調した上田ディレクターは「大きなお願い」として、リスクマネジメントの徹底、自分の判断基準と向き合うことを挙げました。これらリスクとその対応について具体例を紹介した後、オリンピックに出場するためにはただ強いだけではなく、人間力を高めていくトレーニングの必要性を訴えました。
最後に、伊東JOC理事がクロージングメッセージとして「コロナの影響で思うような練習や合宿、遠征が組めなかったり、感染対策に気を配ったり、普段のオリンピックとは異なり大変なことも多いと思います。しかし、この厳しい状況での取り組みが今後の未来を変えると思っています。今後、直前まで情報が変更になるなど様々な困難がやってくると思いますが、残された5カ月で皆さんが着実に前に進めるよう一丸となって頑張っていきたいと思います」と、あと154日後に迫った北京2022大会に向けた激励の言葉を述べました。そして「次に皆さんが一堂に介するのはおそらく北京2022大会の壮行会だと思います。元気な顔で、成長した姿でまたお会いできることを楽しみにしています」と述べ、研修を締めくくりました。
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