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2016.06.20 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
プレゼンに参加した選手たち。(左から)鈴木選手、山元選手、小林選手、貫井選手、宮山選手、藤野選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
星野一朗JOC理事(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は6月14日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに77社/団体107名(2016年6月1日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は昨年6月に続き板橋区、北区、東京商工会議所の文京、北、荒川、豊島、板橋、足立各支部との共催で、板橋区と北区を拠点とする会員企業/団体31社40名が参加しました。

 主催者代表としてあいさつをした星野一朗JOC理事は「世界で戦うトップアスリートは日本の宝です。この場を契機として、未来のメダリストたちを私どもと一緒にサポートしていただければと思っております」と述べ、「アスリートは周りの皆様に応援をされることで今まで勝てなかった相手に勝ったり、出せなかった記録を更新することができるようになっていきます。経済的な観点のみならず、精神的な面で彼らを支えていただき、目標に向かって努力する姿を一番近くで見守っていただければ幸いです」と協力を訴えました。

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
(左)坂本健板橋区長、(右)花川與惣太北区長(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
(左)株式会社ユーグレナの福本拓元取締役、(右)同社の清水亜久里選手(写真:アフロスポーツ)

 続いて登壇した板橋区の坂本健区長は、過去2回実施した合同説明会で大きな成果を挙げられているとし、「皆様方には素晴らしいアスリートのこれまでの経験や国際的な理解、目標に向かって進んでいく取り組みを見ていただいて、企業のイメージアップに是非活用いただければと思います」と呼びかけました。そして、アスナビに大きな期待を寄せているという北区の花川與惣太区長は「味の素トレセンと区内の企業が近い距離にあるという地理的優位性を生かして、アスリートの経済基盤と練習環境を結びつけるとともに、産業の活性化に通じる取り組みを行い、産業界と連携をした『トップアスリートの町・北区』を構築して参ります」と述べ、区をあげた協力体制をアピールしました。

 次に八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターが、雇用形態や給与水準、勤務スケジュール、配属部署、国際大会での社名の使用などの概要を、資料をもとに説明しました。
 採用企業の事例紹介では、昨年10月にスキー・ノルディック複合の清水亜久里選手を採用した株式会社ユーグレナの福本拓元取締役マーケティング部長が登壇。同社がアスナビでの採用を決めた理由として、トップアスリートの声を取り入れた開発を進め、スポーツ領域での事業展開を考えていたこと、世界を目指すアスリート社員の存在がほかの社員の刺激となり、社内の一体感の醸成を期待したことを挙げました。
 また福本取締役は、冬季競技で遠征が多い清水選手の情報を共有するためにWEB(主にInstagram/インスタグラム)を活用し、清水選手が投稿した日々の活動の様子を社内各所のモニターで見られるようにするといった工夫を紹介。社員のモチベーションアップや清水選手を応援することで生まれる一体感など、期待した効果が得られていると述べました。
 この日会場で同席していた清水選手も続き、「会社に入って半年ちょっとになりますが、企業の看板を背負っていることによってアスリートとしての自覚、責任感が以前より高まり、それが競技成績に反映されてきたことを実感しています」とあいさつ。「ユーグレナに入ってしなければいけないことは、競技への姿勢や結果で恩返しすることです。優勝する姿、世界で活躍する姿を見てもらって感動を共有し、皆さんと一緒に成長していきたいと思います」と力強く語りました。

 続いてアスナビで就職先を探しているアスリート6名がプレゼンテーションを実施。それぞれ自分の考えたキャッチフレーズや共通テーマとして設定された「私のルーティーン」を紹介しながら、自身の強みやオリンピックへの思いを語り、支援を訴えました。

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
(左)テコンドーの鈴木セルヒオ選手、(右)同じくテコンドーの貫井亜沙菜選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
スキー・ノルディック複合の山元豪選手(写真:アフロスポーツ)

■鈴木セルヒオ選手(テコンドー)

「中学3年生までボリビアで育ち、15歳の頃にテコンドーを極めるため単身で韓国の強豪校に進学することを決意し、3年後に日本に戻って大東文化大学に入学しました。今年の4月にリオデジャネイロオリンピック出場をかけたアジア大陸予選に出場しましたが、あと一歩、あと1点を目の前にして出場を逃しました。延長戦に入るまでは自分の流れだったので、勝利を確信し気が緩んでいたのです。ですが、そのお陰でどんな状況でも絶対に気を緩めてはいけないということ、戦いの中では目の前の相手に全力で集中しなければならないということを学びました。この教訓は必ず次の東京オリンピックに生かします。
 3つの国で生活し、育ち、その国の言語や文化を知り、私の強みとなったのは、1つの価値観に固執しない柔軟性と環境に適応する能力です。そしてもう1つの強みは、国際大会や世界での戦いに抵抗を感じないことです。このような能力は競技だけではなく、社会にも必ず生かせると思っています。是非私を御社の多様性のシンボルとして採用してください。宜しくお願いします」

■貫井亜沙菜選手(テコンドー)

「小学生時代は空手、中学・高校では陸上の駅伝部で長距離走をやっていました。それが役に立つと考え、オリンピックの舞台に立つことが夢ではないと思い大東文化大学に進学してテコンドーを始めました。しかし現実は甘くなく、オリンピックどころか国内ですら勝てませんでした。ある日監督が『勝ちたい理由は何だ? 目標ははっきりしているか?』と皆に問いかけたことをきかっけに、はっきりした理由と目標を立て、それを常に頭において練習するようになり、去年の全日本学生選手権大会でようやく努力が報われました。初出場した海外の試合で強豪選手と戦えたことで世界のトップレベルを肌で感じ、私ももっと世界で戦っていきたい、東京オリンピックに出たいという思いがより一層増しました。競技暦は短いですが、努力を忘れず、まずは日本代表選手となり、東京オリンピックへの出場、金メダルの獲得に向けて頑張っていきたいと思います。
 また、私は5人兄弟の長女として育ち、常に自分自身が明るく周りを元気づけるように心がけてきました。企業に入っても、周りの雰囲気を明るくできるような存在になりたいと思っています」

■山元豪選手(スキー・ノルディック複合)

「ノルディック複合はいわばスキー界の“二刀流”で、スキー・ジャンプとクロスカントリーで相反する2つの要素を持ち合わせているとても過酷な競技です。高校2年生で開催されたユースオリンピックでは選手団の主将を務め、選手をまとめながらも人生で初めて国際大会で銅メダルを獲得できた経験が私のスキー人生の転機になり、今ここまでやって来られたと思っています。
 私はやると決めたらとことんやらないと気が済まない性格ですが、それが私の強みでもあります。ジャンプの成績が伸び悩みすごく苦しんだ時期も、いいイメージを作ってはトレーニングで実践し、ビデオで確認する作業を気の済むまで行ったことで思いがけないところからヒントを得ることができ、スランプから脱出できた経験があります。私の目標は平昌オリンピックでメダルを獲得することです。この先もたくさんもがき苦しむと思いますし、到底一人で達成できるような簡単な目標ではありません。私と一緒に戦ってくれる企業を探しています。どうかご支援、ご協力を宜しくお願いします」

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
スキー・ジャンプの小林諭果選手(写真:アフロスポーツ)
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(左)フェンシングの宮山亮選手、(右)同じくフェンシングの藤野大樹選手(写真:アフロスポーツ)

■小林諭果選手(スキー・ジャンプ)

「大学2年生では前年度にメンバー選考漏れをしたユニバーシアードで3つのメダルを獲得し、全日本選手権でも連覇を果たすことができましたが、昨年の秋、ひざ半月板断裂の診断を受け本格的なシーズンを目前に手術を決断しました。仲間たちがスキーに乗っている間、陸上でのリハビリ生活は心が折れそうになりました。早く復帰したいという焦りもあり悪循環になっていましたが、兄弟の活躍や家族の言葉、支えてくださる皆さんの言葉に何度も助けられ、リハビリで他競技の選手と出会い刺激を受けることもできました。
 ピンチはチャンス、けがも手術もリハビリも意味のある時間だと前向きに捉えられるようになり、今後は皆さんに結果で恩返しできるよう頑張っていきたいと思います。私は負けず嫌いを自負しており、どんな困難であろうとかならず乗り越える力、1度決めたことはどんなに時間がかかっても必ず達成する力を持っています。その力は競技活動だけではなく、どんな場面でも生かすことができると思います。採用していただいた企業様へは、競技活動の中で結果を残すことは当然のことながら、メディアや競技活動で会社をアピールし、社会貢献していきたいと思っております」

■宮山亮選手(フェンシング/サーブル)

「大学卒業時、オリンピックの舞台でメダルを獲得したいという自分の夢をかなえるために現役続行を決意しました。ロンドンオリンピック男子サーブル団体で金メダルを獲得した韓国チームのコーチをしていたリー・ウッチェコーチが日本のナショナルチームのコーチに就任し、オリンピックでメダルを獲得できると本気で思えるようになりましたが、あと一歩のところでリオの出場権を獲得することができませんでした。それにより所属先との契約が打ち切られましたが、今後私が世界のトップ選手になるためには何が必要で何が不必要なのかを今一度見つめ直し、自分の新たな方向性を決めることができました。
 東京オリンピックへの道はもう始まっています。東京までの4年間を新たな企業に支援していただき、新たな企業の元でオリンピックメダリストになるという夢を実現させたいです。私は中学生の時生徒会の副会長をしていたり、高校・大学のフェンシング部では主将を務めた経験から、人をまとめていくことが得意です。さらに、私のフェンシングの最大の持ち味である、足を使った素早いフットワークを仕事にも活かし社業に貢献していきたいと思っています」

■藤野大樹選手(フェンシング/フルーレ)

「私が社会人としてもスポーツ選手としても心がけているのは、自分の能力や価値を最大化するために考え抜くという作業です。『人間の体には限界がある。馬のように速く走ることはできないし、海外の大型選手に力で勝つことはできないけれども、勝つために頭で考え抜くことは無限にできる』とウクライナ人のコーチに言われた言葉がとても印象的で、この考え抜くという習慣はフェンシング選手として競技を続けるためにスポンサーや企業の方々に自分を知っていただくことにも役立ちました。
 自分がスポーツ選手として何を求められているかを考えたとき、20年以上一つのことを極めるコツや、自分の能力や強みを分析して目標を達成するという成功体験ではないかと思っています。そして、その成功体験はフェンシング以外でも大きな武器になると考えています。私の競技者としてのラストチャンスは東京オリンピックです。4年後に訪れるラストチャンスを応援していただき、最終目標を達成した後にフェンシングを通した成功体験や目標を達成する能力を、企業に生かすチャンスをください。企業のために何ができるのかを考え抜いて、必ず戦力となり戦います」

JOCの就職支援「アスナビ」:板橋区・北区への説明会を実施
水鳥寿思リオオリンピック男子体操強化本部長(写真:アフロスポーツ)

 最後に、アテネオリンピック体操男子団体金メダリストで、現在体操男子代表チームを率いている水鳥寿思リオオリンピック男子体操強化本部長が登場し、アスリートへの応援メッセージとしてスピーチを行いました。
 水鳥本部長は、現在多くの企業からサポートを受けている体操競技も、バブル崩壊後に企業の体操部廃止や撤退が相次ぎ、それに比例するように成績が低迷した時期があったと明かしました。しかし、その中で選手を受け入れて支えてくれた企業があったからこそアテネでの金メダルにつながったとし、「企業様の支援というのはアスリートの競技力向上には本当に欠かせないものだと感じています」と述べました。
 また自身の経験から「企業の拡大や社会貢献という観点から考えると、アスリートが日頃行っている取り組みや練習と企業の取り組みはプロセスが近い」という水鳥本部長。「1つのことを競技者としてやり抜こうとしている選手は、引退後も企業で実力を発揮できると思います。もし企業に採用いただいたときは、選手の皆さんには自分はどんなことができるかを常に問いかけながら過ごしていただきたいと思いますし、企業の皆様にはアスリートのポテンシャル、未熟な部分も含めて是非応援をしていただけるとありがたいです」と、参加企業、アスリート両者に語りかけました。

 また、説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、懇談会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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