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2015.11.27 選手強化

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
研修には113名の選手、指導者、スタッフが参加した(写真:フォート・キシモト)
東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
古川年正JOC理事によるあいさつ(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手およびその指導者を対象とした「平成27年度オリンピック有望選手研修会」を14日、15日の2日間にわたって味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 本プログラムは他競技選手との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、競技の枠を超えた指導者間の連携を強め、さらなる競技力向上につなげることを目指すものです。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて113名が参加しました。

■人間力なくして競技力向上なし

 14日の午後からスタートした第1部では、まず選手強化副本部長を務める古川年正JOC理事が開会のあいさつ。「東京2020オリンピック競技大会成功へのカギは2つあり、1つは運営する力、もう1つは今日ここにいる皆さんも含めた日本選手の活躍です。ぜひ自国開催で最高の結果を残せるように、みなさんと一緒に頑張っていきましょう」と、5年後に日本代表選手団の中心となる世代であるジュニア選手たちにメッセージを送りました。

 また、選手強化本部長の橋本聖子JOC常務理事からはビデオによるメッセージが送られました。『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンのもと、「競技力を向上させるだけでなく、素晴らしい人間力をもって多くの人から尊敬され、そのことを次の世代にしっかりつないでいく、という視点を持ってスポーツを捉えてください。スポーツの力こそが、我が国に最も必要な人間力向上につながる教育だと思っています。そのことを肝に銘じながら、未来ある皆さんには世界へ羽ばたいていっていただきたいと思います」と激励しました。

 あいさつに続いて東京2020組織委員会の江上綾乃さんが登壇し、東京2020大会招致活動の経験や舞台裏、また、国際オリンピック委員会(IOC)の理念、考え方などを説明しました。また、自身もシンクロナイズドスイミングで2000年シドニーオリンピックに出場し銀メダルを獲得した経験から「自分一人ではなく、先生、コーチ、家族、友達など支えてくれる人はたくさんいます。つらい時こそ色んな人たちが支えてくれる力を思い出してください」と、力強いアドバイスを送りました。

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
チームビルディングで交流を深める選手たち(写真:フォート・キシモト)
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外国語講座では、体を動かしながら英語を学ぶプログラムを実践(写真:フォート・キシモト)

■体を動かしながら学習 日本語禁止のルールも

 休憩を挟んだ後、選手と指導者がそれぞれのプログラムに分かれ、選手は体を動かしながら学ぶ2つのセッションを行いました。
 まず最初に行ったセッションはチームビルディング。グループに分かれ、さまざまなゲームを通してお互いを理解し、協力し、体験的に学んでいこうというものです。
 2人1組でジャンケンをしながらのウォーミングアップでは、ほとんどの選手が初対面だったため照れや気恥ずかしさも見られましたが、8つのグループに分かれてニックネームでの自己紹介ゲームや、円になって手をつないだまま4つの形を作っていくゲームになると、すっかり打ち解けた様子で歓声が飛び交うなど大いに盛り上がりました。小さなマットの上にグループメンバー全員が乗り、1曲歌いきるというゲームでは、どうすれば全員がマットの上に乗れるか知恵を出し合い、体を寄せ合いながら各グループ大奮闘。最初のころの緊張した雰囲気はすっかりなくなり、「初対面だったけどすぐに仲良くなれた」という明るい声があちこちから上がっていました。

 2つ目のセッションは、英語を学ぶことがテーマ。日本語禁止のルールのもと、講師も英語で指示を出し、選手たちも英語でコミュニケーションをとりながらスポーツやゲームを行いました。
 ほとんどの選手が「英語は苦手」と答えた通り、講師がどれだけ大きな声で指示を出しても、選手からは照れや自信のなさからようやく聞きとれるくらいのボリュームの声しか返ってきませんでしたが、体が温まってくるとあちこちから大きな声で英語が飛び交うようになりました。そして、最初は「もっと、もっと大きな声で!」と促していた講師も、最後のゲームが終わるころには「Good English!」と合格点をプレゼント。選手たちも「思った以上に英語を話すことができた」と笑顔を見せ、英語への苦手意識が少しずつ取れてきた様子でした。

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
新竹優子さん(中央)とディスカッションをしながら意見を書き出す選手たち(写真:フォート・キシモト)
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グループでまとめた意見を模造紙に書いていく(写真:フォート・キシモト)

■オリンピアンから学ぶ人間力の鍛え方

 体をたくさん動かした後は、待ちに待った夕食の時間。ここからはゲストオリンピアンとして、加藤ゆかさん(水泳・競泳/ロンドンオリンピック銅メダル)、峰幸代さん(ソフトボール/北京オリンピック金メダル)、平岡拓晃さん(柔道/ロンドンオリンピック銀メダル)、石野枝里子さん(スケート・スピードスケート/トリノオリンピック出場)、杉林孝法さん(陸上競技・三段跳/シドニー、アテネオリンピック出場)、新竹優子さん(体操・体操競技/北京、ロンドンオリンピック出場)、成瀬野生さん(スキー・クロスカントリー/トリノ、バンクーバー、ソチオリンピック出場)、ハニカット(旧姓:太田)陽子さん(陸上競技・走高跳/シドニーオリンピック出場)が参加。
 チームビルディング時の8グループそれぞれにオリンピアンが入り、まずはイラストを使った自己紹介を行った後、一緒に夕食を取りました。

 休憩の後、初日最後のプログラムである第2部がスタート。ここでは「オリンピアンから学ぶ 人間力をどのように鍛えれば競技力が向上するのか」をテーマにグループワーク、ならびにディスカッションが行われました。

 夕食時と同様に8つのグループにそれぞれオリンピアンが一人ずつ入り、まずは自分が10代だったころの経験をジュニア選手たちに伝えました。選手たちはゲームや夕食時の明るい笑顔から一転、真剣なまなざしをオリンピアンに向け、用紙に余白がなくなるくらいメモを書き留めていました。その後「人間力と競技力」について話し合い、5年後、10年後の自身の目標設定にチャレンジしましたが、なかなかペンが進まず苦戦している様子も見受けられました。

 最後に今日のプログラムからから学んだことを模造紙にまとめ、各グループが発表。2分という限られた時間の中、どのグループも個性的かつ、的確にまとめられた発表を行いました。憧れのオリンピアンから経験や体験に基づくアドバイスを直接聞き、学んだことを自分の言葉として発表することは、これからの日本スポーツ界を担う若い世代にとって、何にも代えがたい貴重な時間となったに違いありません。

 選手たちの発表を受けてオリンピアンがそれぞれメッセージを送り、初日のプログラムは終了。発表後はお互いに記念写真を撮り合うなど、短い時間ながら交流を楽しんでいました。

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
ラケットを片手に熱弁をふるう日本テニス協会強化副本部長の松岡修造さん(写真:フォート・キシモト)
東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
SNSから自分を守り、より良い活用方法を説明する上田大介さん(写真:フォート・キシモト)

■松岡修造さんの“早朝熱血講義”

 2日目は、日本テニス協会強化副本部長の松岡修造さんによる講演からスタートしました。テーマは「僕がスポーツから学んだこと」。現役時代から現在に至るまで、自身の成長のために様々なことを試すのが好きだという松岡さんは、目の使い方や感覚を鍛えるために速読を学んだり、よりよい声で応援をするためにボイストレーニングに通ったり、リラックスする方法を身につけるために古武術を習うなど、実践してきたチャレンジを紹介。そして、「才能のある無しは関係なく、できないことにはそれぞれの理由があります。できない理由をすべて『できる』方にもっていければ、間違いなくできるようになります」と語り、成長のためのヒントを提示しました。

 自身が手がけた日めくりカレンダーを教材にしながら、これからトップアスリートとして頂点を目指す上での心得を伝授。失敗を恐れないこと、自信を持つことの大切さ、自立してはっきりと意思表示をすること、逆境に陥ったときにプラスに転じるための気持ちのあり方、緊張感やプレッシャーとの向き合い方など、熱くユーモアにあふれる講義を展開しました。
 早朝の座学にもかかわらず、選手たちは時間が経つごとに“修造ワールド”に引き込まれ、講演終了後には大勢の選手が集まり即席の写真撮影会がスタート。松岡さんも時間の許す限りリクエストに応え、一人一人に声をかけながら交流を深めていました。

■SNSとの付き合い方 自分の価値を上げる活用法とは

 続いて、スポーツ界を中心にSNSの研修プログラムを手がけるTRENSYSの上田大介さんを講師に迎え、情報発信やコミュニケーションに欠かせないツールとして多くの選手が使っているソーシャルメディア(SNS)の良い面と悪い面、トップアスリートの立場における活用方法について学びました。

 上田さんはソーシャルメディアを「明日の自分の価値を作るもの」と定義。失敗やスキャンダルで稼ごうとする悪意のある人たちに常に狙われているという悪い面を挙げ、「日本のトップアスリートを目指す皆さんは、たった1度の失敗で仲間や所属先の将来を奪う可能性があります。爆発的に注目されてからでは遅い。いまのうちに出来る限りの対策をしてください」と訴えました。そして、過去の投稿の見直し、なりすましや乗っ取りなどへの具体的な対策方法を説明するとともに、誤った投稿を避けるためには「(スマートフォンでよく使う)親指をしっかりコントロールすること」というポイントを伝えました。

 一方で、会話ややり取りを楽しめること、工夫した投稿をしてファンを巻き込むことで自身の価値を上げられる、というプラスの活用方法も紹介。実際にうまく活用できている選手の例を挙げながら、「自分の周りにあるソーシャルメディアも意識しながら、自分だけの楽しみ方を見つけてください」と呼びかけました。

東京2020を目指すジュニアが集合 「平成27年度オリンピック有望選手研修会」開催
男子選手でも扱うのが難しいロープトレーニング。体をいっぱいに使ってロープを動かす(写真:フォート・キシモト)
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未来のオリンピアンにメッセージを送る福井烈JOC常務理事(写真:フォート・キシモト)

■他競技のトレーニングを体験

 講義が続いた後は柔道場と卓球場に移動し、「異競技トレーニング」で競技間の交流を図りました。柔道場では遊びの要素を取り入れながら体幹を鍛えるメニューや、2本のロープを持って床に打ち付けるトレーニングを実施。初体験の選手たちは重いロープをなかなか思うように扱うことができませんでしたが、普段からトレーニングに取り入れている柔道やレスリングの選手からアドバイスを受け、だんだんとコツをつかんでいきました。
 卓球場では、卓球のストローク練習のほか、1kg〜2kgのメディシンボールを使ったボール投げ、スケート競技などのトレーニングで使用するスライドボードを体験しました。スライドボードでは重心コントロールの感覚をすぐ覚えてスムーズに滑る選手が多く見られましたが、卓球では独特のフットワークとストロークの実践に四苦八苦。各競技のトップアスリートがぎこちなくボールを打つ様子に、見学していた指導者たちも和やかな空気に包まれていました。

 すべてのプログラム終了後、選手強化副本部長を務める福井烈JOC常務理事が閉会のあいさつを行いました。福井常務理事は、2012年のロンドンオリンピック後に銀座で行われたパレードの様子について「あれほどスポーツが持っている力を実感した瞬間はありません」と述べ、「皆さんが目指すところはそれほど影響力の高いところです。是非その高みを目指して下さい」と激励。常に周りに感謝の心を持ち、毎日全力で取り組むことが『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンにつながってくる、と締めくくりました。

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