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2022.12.20 選手強化

TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催

TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化事業ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手及びその指導者を対象とした「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を11月19、20日の2日間にわたって開催され、第1日目は味の素ナショナルトレーニングセンターで研修を行い、2日目は国立競技場とオリンピックミュージアムの見学を行いました。

 本プログラムは、JOC選手強化本部スローガンである「人間力なくして競技力向上なし」のもと、他競技選手・指導者との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、さらなる競技力向上を目指すものです。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて63名が参加しました。

TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
オリンピズムについて講義を行う小口貴久氏(写真:フォート・キシモト)
TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
自己紹介の書かれた付箋を持って交流する選手たち(写真:フォート・キシモト)

■「オリンピズムって何? ~オリンピックを目指す有望選手の皆さんへ~」リュージュ・小口貴久氏から学ぶ

 最初のプログラムである「オリンピズム」がスタート。まず、オリンピアンの小口貴久氏の進行で参加した選手、指導者の親睦を深めるため、付箋に①名前②競技③自身を表すキーワードの3つを記入し、3人と交換する時間がとられました。限られた時間の中で他競技の選手、指導者たちの交流が活発に行われました。

 次に、「オリンピックを開催する意義、価値とは何か?」というテーマでオリンピックの歴史や理念について説明が行われました。中でも、オリンピックモットーの「より速く、より高く、より強く」について小口氏は「相手は関係なく、これまでの自分を超えることです。ほんの少しでも今の自分より強くなれるように努力すること、敵は自分の中にいます」と述べました。また、国際オリンピック委員会(IOC)が定めるオリンピックの価値として卓越性(Excellence)、友愛(Friendship)、尊重(Respect)を挙げ、「この3つは特別なものではなく皆さんの中にもあるはずです。それに気づいて意識を高め続けることが重要だと思います」と語りました。

 最後に小口氏から、有望選手、指導者へ「日本のオリンピアンは全員で4000名程います。私たち4000人のオリンピアンは皆さんのことを応援して行きたいと思いますし、力になりたいと思います。ともに一緒に高めあっていけたらと思います」とメッセージを送り、締めくくられました。

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柔道場で実演を行う谷本歩実氏(写真:フォート・キシモト)
TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
ハンドボール場でボール投げの体験をする選手たち(写真:フォート・キシモト)

■味の素ナショナルトレーニングセンターの施設を見学

 続いてのプログラムでは、味の素ナショナルトレーニングセンター内4ヵ所の見学が行われました。はじめに、映像を使って施設の歴史、概要を説明。国際規格のトレーニング環境で集中的、継続的に強化活動を行えることが話されました。

 その後、3つの班に分かれてボクシング場、テニスコート、ハンドボール場、柔道場を見学し、最新のトレーニング環境の説明や設備の体験が行われました。柔道場では体験・経験談、アンチドーピングの2つで講義を行うオリンピアンの谷本歩実氏がマナーや試合の実演を有望選手、指導者たちの前で披露しました。

TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
体験・経験談を語る水鳥寿思氏と谷本歩実氏(写真:フォート・キシモト)
TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
アンチドーピングについて講義を行うオリンピアンの谷本歩実氏(写真:フォート・キシモト)

■オリンピアンの体験・経験談

 次のプログラムでは、2004年アテネオリンピック体操競技金メダリストの水鳥寿思氏と2004年アテネオリンピック、2008年北京オリンピックの柔道で2大会連続で金メダルを獲得した谷本歩実氏がオリンピアンとしての体験や経験が有望選手、指導者から質問を受け付ける形で語られました。また、ジュニア期の過ごし方や練習の工夫などについて経験談が語られ、指導者から「コロナ禍で大会が中止されるなど環境が大きく変わってしまった際に選手へどのようにアプローチすべきか」という質問に対して水鳥氏は「第三者に相談できる環境は怪我やメンタルが不調な時の回復が早いと言われています。ですので、今日出会った仲間とも競技の壁を越えて相談し合える環境を作ってほしいと思います」、谷本氏は「オン/オフのスイッチを自分の中で持っておくことが大事です。競技のことを一日中考えるのではなく、休日の使い方を工夫してみてほしい」と答えました。また、現役生活の経験で生きたこと、学びについて谷本氏は「たくさんの人に応援してもらえるのはありがたいことです。今の時代だからこそ、人間力を磨いてほしい」、水鳥氏は「オリンピックに行くことはとても大切ですが、その過程でどんなことを経験しているか周りは見ています。是非、皆さんには達成したい目標にフォーカスしながら応援してくれる人達に対してふさわしい態度、振舞いをしてほしい」と話し、人間力の重要性を説きました。他には「練習を続けるか、休んで治療するかの判断基準について」「緊張しないように自分をコントロールするためにすべきこと」について選手から質問が寄せられ、それぞれの経験談が話されました。

 そして、谷本氏からは「この環境は財産です。たくさんのことを吸収し、協力していってもらえたらと思います」、水鳥氏は「有望選手研修会は年に一回の貴重な機会です。この仲間たちと励ましあってコミュニケーションの場を広げてもらえたらなと思います。僕も皆さんに自分の競技経験をお話できてすごく嬉しかったです。皆さんも後輩に伝えていけるような存在になってもらいたいと思います」とメッセージを送りました。

■アンチドーピングについて学ぶ

 次のプログラムではアンチドーピングの取り組みについて谷本氏が講義を実施。「ドーピングについて」「義務」「環境」「ドーピングの事例」「意図しないドーピング防止」の5つのテーマで説明が行われ、意図せずドーピング違反となってしまった事例などを共有し、防止するために心掛けることとして「みんなで一緒にご飯を食べること、サプリメントなどで摂取したものは証拠として必ず少量残しておくこと、製品表示の成分は必ず検索すること」の3点を挙げました。まとめとして「何かあった時に出場停止になってしまったらもう手遅れです。トップアスリートとしての自覚を持ち、万が一に備えて対策する習慣をつけておいてほしいと思います」と語りました。

TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
栄養学について講義を行う栄養 科学サポート部員の古川由佳氏(上)と睡眠についてオンラインで講義を行う睡眠 情報・科学サポート部門長の杉田正明氏(写真:フォート・キシモト)
TEAM JAPANとして世界で戦うアスリートを目指して「令和4年度オリンピック有望選手研修会」を開催
2日目は国立競技場(上)とオリンピックミュージアムの見学(下)を実施(写真:フォート・キシモト)

■トップアスリートの栄養、睡眠

 次に栄養 科学サポート部員の古川由佳氏を講師に迎え、トップアスリートの栄養学について「トップアスリートとスポーツ栄養学」「食事の基本」「食事の実践」の3つのテーマで講義が行われました。今まさに成長期である選手へ向けて「どんどん体も変わっていっている時です。当たり前のことかもしれませんが、成長期に栄養不足の状態で一生懸命トレーニングしているのと、必要な栄養をしっかり取って、栄養状態が良い状態でトレーニングするのでは全然違います。そのため、大事な食事設定というものをもう一度考えてもらえるといいかなと思います」と述べました。講義の中で当日の朝ごはんについて自身で評価する時間がとられ、一日に必要な栄養素とその役割について説明が行われました。そして、主食、主菜、副菜の3つを意識して摂ることを勧め、遠征時などでもバランスよく食事するためのアドバイスとして「レトルトやフリーズドライ食品、缶詰、ふりかけなど手軽に調理できるものを活用していってほしい」と述べました。

 最後の講義では、睡眠 情報・科学サポート部門長の杉田正明氏がオンラインで登壇。サッカーW杯南アフリカ大会で専門家としてサポートした経験などを事例に睡眠における心と体のコンディションの関係性について話されました。実験をもとに一日に約8時間12分程度の睡眠時間が必要だと述べ、5~7時間程度の睡眠を繰り返す選手と比較すると怪我をする割合が極端に少なくなる結果が発表されました。このように睡眠時間によって怪我のリスクや競技のパフォーマンスに影響することを選手、指導者へ伝えると「自分の体は自分でしか守れないと常に考えて行動し、何事も楽しむことや当たり前のことをやり続けること、当事者意識を持つことがトップアスリートであり続けるうえで大切なポイントになります」と語りました。そして、杉田正明氏は、「パフォーマンスを最大限に高めるための考え方や習慣をしっかり持ってください。アスリートとして何をすべきかという意思決定を行い、課題を解決するために最適なものを常に選び、色々なことを取り入れながら素晴らしい競技人生を歩んでほしいと思います」とメッセージが送られました。

■国立競技場・オリンピックミュージアム見学

 翌日の第2日目は、味の素ナショナルトレーニングセンターウエストから移動し、国立競技場とオリンピックミュージアムの見学を行い、2日間に渡った研修会が締めくくられました。

※この活動はスポーツ振興くじの助成金を受けて実施されました。

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