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2019.11.18 選手強化

日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催

日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催(写真:アフロスポーツ)
日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
上田大介JOC選手強化本部インテグリティ教育ディレクター(左)がインテグリティ、人間力をテーマに講義を実施(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化事業ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手及びその指導者を対象とした「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を11月9、10日の2日間にわたって味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 本プログラムは、JOC選手強化本部テーマである「人間力なくして競技力向上なし」のもと、他競技選手・指導者との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、さらなる競技力向上につなげることを目指すものです。過去には競泳の北島康介選手や萩野公介選手、体操の内村航平選手、卓球の福原愛選手ら後のオリンピックメダリストも参加。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて81名が参加しました。

■スポーツ・インテグリティから人間力を学ぶ

 第1日目の最初のプログラムは「スポーツ・インテグリティ入門〜日本を代表するアスリートに求められるモノとは〜」と題し、上田大介JOC選手強化本部インテグリティ教育ディレクターが講義を行いました。

 本講義の冒頭に、過去にオリンピック有望選手研修会に参加した経験を持つカヌーの羽根田卓也選手、競泳の入江陵介選手からのメッセージを紹介。続けて、スポーツやアスリートの価値、どうすれば人間力を高めることができるのかなどについて説明しました。特に人間力に関して、最もそれが表れたシーンとして2018年平昌オリンピックのスピードスケート女子500mを滑り終えた直後の小平奈緒選手を挙げると、「その選手がなぜこの行動をしたのか。その根幹に人間力が詰まっています。そこに思いをはせて、自分のモノにしてほしい」と呼びかけました。

 また、オリンピック有望選手が身を置く世界は、競技のライバルと戦う世界でもあると同時にリスクとの戦いの世界でもあると説明した上田ディレクターは、様々なリスクの例を挙げると、「自分の判断基準をしっかり持つことがリスクマネジメントの根本原則です。自分の価値、バリューを守るために、この2日間で自分の判断価値を高めてください」と述べました。

日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
チームビルディングを通じて選手たちは交流、絆を深めた(写真:アフロスポーツ)
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日本体操協会の水鳥寿思男子体操強化本部長が指導者向けに自身の経験談やアドバイスを伝えた(写真:アフロスポーツ)

■チームビルディングで築く仲間の絆

 次に、選手たちは「チームビルディング〜今日から仲間、同期の絆〜」を行いました。

 (株)チームビルディングジャパンのスタッフが講師を務め、選手たちは各チームに分かれ、手をつないで1つの輪になり、そのまま全員がフープを何秒でくぐることができるかというゲームを実施。初対面同士の選手が多い中、最初は遠慮や恥ずかしさからか各チームともに記録は伸び悩んでいましたが、回数や試行錯誤を重ねるにつれてアドバイスしあう声も大きくなり、1時間経ったころにはすっかりと意気投合。その結果、最初は40秒以上かかっていたタイムも、最終的には12秒でクリアするチームも出てくるなど、プログラムのタイトル通り、2時間で仲間の絆を築き上げていました。また、選手からも「しっかり意見交換する雰囲気づくりが大事だと思った」「話し合ううちにフープのくぐり方も工夫することができて楽しかった」といった感想が聞かれました。

 選手たちがチームビルディングを行う一方で、指導者たちは別室で日本体操協会の水鳥寿思男子体操強化本部長を講師に招き、指導者向けプログラム「コーチング論〜指導者として金メダルへ〜」を受講しました。

 水鳥強化本部長は選手として2004年アテネオリンピックの体操男子団体で金メダルを獲得し、また指導者としても2016年リオデジャネイロオリンピックにおいて、監督として男子体操競技を金メダルに導くなど、豊富な経験をもとに、ティーチングとコーチングの違いや、現状の課題などを受講者と共有しました。まとめとして「監督としてはいかに客観的に物事を見ることができるかが重要。そして、戦略はロジカルではあるけれど、常識にとらわれないで色々な発想で挑戦していき、かつ、自分が選手より頑張っているんだというくらいの取り組みをしていくことが必要だと感じています」と述べました。

日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
オリンピアンの小口貴久さんがオリンピズム、オリンピックバリューなどについて講義(写真:アフロスポーツ)
日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
選手たちは理想のアスリート像をグループワークで話し合った(写真:アフロスポーツ)

■オリンピズムから考える理想のアスリート像

 次に、第1日目の最後のプログラムである「オリンピズムから考える理想のアスリート像〜オンリーワンのアスリートへ〜」をテーマとしたグループワークを行いました。

 講師はリュージュで02年ソルトレークシティ大会、06年トリノ大会、10年バンクーバー大会と3大会連続で冬季オリンピックに出場した小口貴久さんが担当。はじめに近代オリンピックの始まり、「近代オリンピックの父」と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵の想い、オリンピックを開催する意義やオリンピックバリューなどについての座学を行った後、選手たちはこれら学んだ内容をもとに10チームに分かれてのグループワークを実施しました。マインドマップという手法で自分が思う理想のアスリート像を作成し、それぞれが思う理想のアスリート像をチームメンバー同士で共有。最後にそれらをまとめたものを1本の木のイラストで表現しました。各チームともに個性的な「木=理想のアスリート像」が生まれ、選手たちはこれらの「木」について「根は忍耐力、下から吸収して上に持っていく力」「幹は継続力や学ぶ力」「草、土は環境。雨はアドバイス」など、1つ1つの意味を発表し、理想のアスリート像に近づくための手段や周辺サポートに対する理解を深めていきました。

 また、プログラムの最後に小口さんは、選手たちに向けて「この研修を一つのきっかけに、自分がどうなればオリンピックや世界選手権、夢に近づいていけるのかということを、自分できちんと模索するステージに来ていることを認識してほしいと思います。また、何か物事を選ぶとき、やるときに、自分の夢につなげるための選択をしてください。自分の競技だけをやっていればいいとは思いません。自分の中でどう考えて、どう競技に生かすかが一番大事だと思います」とアドバイスを送り、研修会の第1日目を締めくくりました。

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初めてのライフル射撃に挑戦(写真:アフロスポーツ)

■勝負力を磨いて ライフル射撃に挑戦

 第2日目のプログラムは、「異競技トレーニング(ライフル射撃)〜誰にも負けない一瞬の勝負力〜」からスタート。日本ライフル射撃協会の講師から射撃の概要や各種目の説明、基本のルールなどの講習を受けた後、カメラガンと呼ばれるシミュレーターを使い、3人1組のチームに分かれてピストル射撃に挑戦。試射を終えたあとは、予選・決勝の試合形式でポイントを競い合いました。はじめはなかなか的に弾を当てられなかった選手たちでしたが、集中して取り組むうちにコツをつかむと次々に命中。自分が撃たない時は励まし合ったり、成功したらハイタッチで喜ぶなど、大いに交流を深めた様子でした。

日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
講話を行った千田健太さん(写真:アフロスポーツ)
日の丸を背負う一流アスリートを目指して「令和元年度オリンピック有望選手研修会」を開催
選手たちは真剣な表情で話に聞き入った(写真:アフロスポーツ)

■フェンシング・千田健太さんから学ぶ

 続いて、2日間の最後のプログラムとして、2012年ロンドンオリンピックのフェンシング男子フルーレ団体銀メダリストの千田健太さんを講師に迎えて「メダリストから学ぶ〜これから世界で戦う選手に伝えたいこと〜」をテーマに講話が行われました。

 千田さんはフェンシングの魅力や13歳で競技を始めたきっかけ、2度のオリンピック出場を経て2016年に引退するまでの過程で学んだことなどを紹介。その中で、初出場となった2008年の北京オリンピックでは、オリンピックならではの緊張感やピーキングの難しさ、対戦相手の研究不足などを痛感したと言います。一方、この大会でともに戦った太田雄貴日本フェンシング協会会長が2度目のオリンピック出場にして男子フルーレ個人で銀メダルを獲得し、「ピークを合わせるのに(オリンピックを)知っている人と知っていない人とでは、すごく差があると感じた」と振り返りました。そして、この経験を踏まえて「皆さんは有望選手として東京2020大会を迎えると思いますが、できるだけ現場に近いところで見て、ある程度シミュレーションしてほしいと思います」とアドバイスしました。

 質疑応答のコーナーでは、「メダルを獲るために何を一番努力しましたか?」「競技以外で大切にしていることは何ですか?」「緊張とプレッシャーとの戦い方はありますか?」など幅広い質問があり、選手たちは千田さんの言葉一つ一つに耳を傾けていました。そして、最後に千田さんから「より高い目標を目指してほしいです。私がメダルを獲れたのも、メダルを目指していたからだと思います。そして、それに関わってくださる色々な人たちとの人間関係を大切にしてください。そうすれば自分に跳ね返ってくることもありますし、自分自身を高めていけるのではと思います。それが『オリンピックの価値』の『エクセレンス(卓越)』『フレンドシップ(友情)』『リスペクト(敬意/尊重)』にも表れていると思います。皆さんの競技活動を私も心から応援しています」とエールを送り、2日間にわたるプログラムを締めくくりました。

※この活動はスポーツ振興くじの助成金を受けて実施されました。

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