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2018.12.14 選手強化

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催(写真:アフロスポーツ)
世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
上野広治JOC選手強化本部常任委員がオープニングメッセージ(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、選手強化事業ジュニア対策の一環として、JOCが認定したオリンピック有望選手及びその指導者を対象とした「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を12月1、2日の2日間にわたって味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 本プログラムは、JOC選手強化本部スローガンである「人間力なくして競技力向上なし」のもと、他競技選手・指導者との交流を通じ、世界に通用するアスリートを育成するとともに、さらなる競技力向上を目指すものです。過去には競泳の北島康介選手、同じく萩野公介選手、体操の内村航平選手、卓球の福原愛選手ら後のオリンピックメダリストも参加。今回はオリンピック有望選手、指導者ら合わせて101名が参加しました。

 午後からスタートした第1日目では、最初にオープニングメッセージとして上野広治JOC選手強化本部常任委員が登壇。東京2020大会までこの日で601日であること、また、今のアスリートに求められているのはまさに「人間力」であることを伝えると、「他の競技から学ぶことは非常に多い。この2日間でもう一度、人間力とは何なのかを自分なりに考え、持ち帰ってもらいたい」と参加者に呼びかけました。また、日本代表選手団がこれまでのオリンピックでメダルを獲得した競技、メダルの総数の推移をスライドで示し、「ぜひともこの中から一人でも多く2020年、22年、24年へとつなげてほしい。北島康介さん、吉田沙保里さんらオリンピックのメダリストもこの研修会の卒業生です。皆さんも頑張って、先輩たちのようになってもらいたいと思います」と期待の言葉を送りました。

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
選手たちは室伏広治さんが考案した「New Mo!」を通してスポーツの価値を議論し、交流を行った(写真:アフロスポーツ)
世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
リオデジャネイロオリンピック柔道男子100kg級銅メダリストの羽賀龍之介選手が講話(写真:アフロスポーツ)

■柔道・羽賀龍之介選手から学ぶ

 オープニングメッセージが終わると、最初のプログラムである「チームビルディング」がスタート。これは他競技の選手たちとの交流を深めることで、本研修会全体の効果を高めることを目的としています。

 ここでは日本アンチ・ドーピング機構のスタッフが講師を務め、まずアンチ・ドーピングの理念を説明。それを踏まえアンチ・ドーピングにおける目標の1つである「アスリートがアンチ・ドーピングの理念や、ベースにある『スポーツの価値』を理解し体現すること」を目的に、「New Mo!」というスポーツプログラムが実施されました。「New Mo!」とは、2004年アテネオリンピック陸上男子ハンマー投の金メダリストである室伏広治さんが考案した新スポーツ。相撲をベースとしており、土俵に見立てた四角の枠の中にバランスボールを置き、そのボールや相手を押し合いながら、自分の体が土俵から出たら負け、ボールが土俵から出た際に最後にボールに触れた人(当たった人)は負け、最後に土俵に残っている人は勝ち、というのが基本的なルールです。

 また、「New Mo!」は「Fair for All、Respect、Fun」の3つを理念としており、従来のスポーツと違うのは、それらの理念のもと自由にルールを変更できること。今回のチームビルディングでは、選手は9チームに分かれ、それぞれのチームに吉見譲さん(競泳)、池田めぐみさん(フェンシング)、齋藤里香さん(ウエイトリフティング)、阪本章史さん(自転車)、黒須成美さん(近代五種)、鈴木靖さん(スピードスケート)、三宮恵利子さん(スピードスケート)、橋本小百合さん(スピードスケート)、桧野真奈美さん(ボブスレー)の9名のオリンピアンも参加して「New Mo!」を体験。さらにチームごとに「目が不自由な人」「片腕しか使うことができない人」という設定が追加され、どのようなルールにすればチーム全員が「New Mo!」の3つの理念を実現しながら、平等にゲームを楽しむことができるかについて選手とオリンピアンが一緒に考え、意見を交換しながら「スポーツの価値」を体現しました。

 続いてのプログラムでは、講師に2016年リオデジャネイロオリンピック柔道男子100kg級銅メダリストの羽賀龍之介選手を講師に迎え、「メダリストから学ぶ〜これから世界で戦う選手に伝えたいこと〜」をテーマに講話が行われました。

 羽賀選手は小学校3年生から始めた柔道について、そのきっかけや柔道にまつわる学生時代の思い出、またオリンピックで得た知見を紹介。悔しさをモチベーションに変え、自身初の世界一に輝いた経験に触れ、「皆さんもこれからの競技人生で悔しい思いをすると思いますが、そうした経験をして良かったと思う時期が必ず来ます」と羽賀選手。さらに、オリンピックを目指す上でのアドバイスとして「目標と現状の差を意識、把握できる人が強い」と述べると、「練習は目標を達成するための『手段』であり、練習が『目的』になってはいけないことを皆さんには心得てほしい」と伝えました。

 また、このオリンピック有望選手研修会で出会った選手とは今でも仲が良いというエピソードを披露すると、最後に「他競技の選手と横のつながりができるとモチベーションも上がる。皆さんもこの研修会を通じて色々な交流をしてほしい」とメッセージを送りました。

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
スポーツを通して英語のコミュニケーションを学ぶ選手たち(写真:アフロスポーツ)
世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
選手たちは鈴木靖さんらオリンピアンの体験談を聞きながら「自分はどのような選手になりたいか」を発表した(写真:アフロスポーツ)

■「自分はどのような選手になりたいか」を自分自身の言葉で発表

 次に、場所を共用コートに移し、外国語トレーニングを実施。このプログラムでは日本語禁止のルールのもと、外国人を含む講師陣も英語で指示を出し、選手たちも英語でコミュニケーションをとりながらスポーツやゲームに挑戦しました。

 ウォーミングアップでは、選手たちはまだ照れや恥ずかしさからか、英語での掛け声やコミュニケーションでも小さい声しか出ませんでしたが、じゃんけんやバレーボールを使ったゲーム、リレーなどを通じて体と心がほぐれてくると、外国人講師に積極的に英語で話しかけるなど、次第に英語での会話も活発に弾むようになりました。

 そして、最後に行われた英語でのインタビューでも、照れることなく自分が話せる範囲の英語とボディランゲージを使って会話。選手の短時間での成長ぶりに、講師は「皆さん、ちゃんと英語を理解していましたし、皆さんの言葉がしっかり伝わってきました。コミュニケーションってこういうことなんです。文法が完璧じゃなくてもコミュニケーションを取ることができますし、英語に苦手意識を持たなければ十分に伝わります。ぜひ今日をきっかけに、外国人選手と交流する勇気、意識を持って、今後の活動に生かしてください」とアドバイスしました。

 外国語トレーニングの後は夕食の時間を挟み、1日目最後のプログラム「オリンピアンから学ぶ(ワークショップ)」が行われました。

 ここでは、チームビルディングと同じ9チームに分かれ、9名のオリンピアンも再び参加。ファシリテーターを務めた上田大介JOCインテグリティ教育ディレクターの進行のもと、選手たちは「自分はどのような選手になりたいか」を自分自身の言葉でより具体化することをゴールに設定し、グループワークを行いました。これまでのプログラムで学んだことを振り返り、現時点でどのような選手になることを理想としているかを思い描いた選手たち。その上で各チームに参加したオリンピアンの思い、経験したことを聞き、また質問し、アドバイスを受けることで、改めて「自分はどのような選手になりたいか」を自分自身の言葉でまとめ、最後にそれを一人ひとりがオリンピアンに発表。これらのグループワークや第1日目のプログラムを通じ、選手たちは将来の目標、理想像について、より明確にする貴重な機会となりました。

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
第2日目の朝はコンディショニングヨガからスタート(写真:フォート・キシモト)
世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
リオデジャネイロオリンピックのシンクロナイズドスイミング銅メダリスト三井梨紗子さんが「メディアとのコミュニケーション」をテーマに講義(写真:フォート・キシモト)

■「メディアとのコミュニケーション」をテーマに三井梨紗子さんが講義

 第2日目のプログラムは、「コンディショニングヨガ」からスタート。選手、指導者たちはヨガの呼吸法や太陽礼拝のポーズで体と心をじっくりとほぐしていきました。

 朝一番のヨガですっきりと目を覚ました後は、「メディアとのコミュニケーション」をテーマとした講義が行われました。講師を務めたのは、2016年リオデジャネイロオリンピックのシンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)で銅メダルを獲得し、現在はJOC広報専門部会員として選手とメディアをつなぐサポートもしている三井梨紗子さん。現役時代に得た様々なメディアとの関わり、経験から「メディア次第で印象が変わるからこそ、メディアを自分の味方につける、ファンになってもらうことが大事。そうすることで選手の価値が上がると思います」とアドバイスしました。

 続けて、実践トレーニングとして2人1組で互いに自己紹介。第一印象がメディアでの印象になることから、自己紹介で相手をどのような人だと思ったかを選手それぞれがフィードバックしました。また、インタビュー時に好印象を持ってもらえるポイントを学ぶために、仮想インタビューも実施。選手は4人1組となってインタビューする側・される側に分かれ、試合に負けたとき・勝ったときのインタビューを相互に体験することで、事前に書き出した理想の選手像の特徴(雰囲気、見た目、しゃべり方)に近づいているかを確認し合いました。

 プログラムのまとめとして、前述した「メディアを自分の味方・ファンにして選手としての価値を上げる」ことのほか、「メディアに取材してもらえる環境がどれだけありがたいことかを理解してほしいと思います」と語った三井さん。そして、「日本代表である前に、皆さんは競技の代表であることを忘れないでほしい」と付け加えると、「競技力だけではなく人間力を高めることが大事。選手を終えた後に何が残るか、競技以外に自分の中で何が育ったのかという問いかけを常に持ちながら、競技を続けていく中で色々なものを育んでもらえたらと思います」とエールを送りました。

世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
「異競技トレーニング」で新体操、トランポリンにチャレンジする選手たち(写真:フォート・キシモト)
世界に羽ばたく選手を目指し「平成30年度オリンピック有望選手研修会」を開催
星野一朗JOC選手強化副本部長は未来のオリンピアン候補生たちに期待の言葉を送った(写真:フォート・キシモト)

■新体操、トランポリンに挑戦

 講義の後は国立スポーツ科学センターに移動し、「異競技トレーニング」で競技間の交流を図りました。選手は2グループに分かれ、新体操とトランポリンを交代で体験。新体操はボールを使った運動を主に行い、腕や胸の上で転がす基本的な動作をはじめ、ボールを頭上に投げ前転してキャッチするなど、高度な技に挑戦しました。一方、トランポリンでは真上に跳躍する方法や基本姿勢を学んだ後、開脚ジャンプ、伸身の姿勢でひざにタッチするジャンプ、また、180℃横に回転して向きを変えるジャンプなどにトライ。新体操、トランポリンとも見た目以上に難しい技でしたが、選手たちは果敢に挑戦し、成功したときには本人だけでなく周りの選手、指導者からも拍手、歓声が上がるなど、参加者が一体となって異競技ならではの体の使い方を体験し、その魅力を楽しみました。

 すべてのプログラム終了後、クロージングセッションでは星野一朗JOC選手強化副本部長が登壇。2日間に渡って実施されたプログラムを1つずつ振り返りながら、改めてJOC選手強化本部では「人間力なくして競技力向上なし」のスローガンのもと選手強化に努めていることを話すと、「世界で勝つためには技術だけでは足りないと思います。ぜひ皆さんも心と体、どちらも養ってほしい」と呼びかけました。そして、「今回学んだことをここで終わらせるのではなく、これからが皆さんのスタートだと思って、自分自身に厳しく、より高みを目指して活躍してほしいと思います」と期待のエールを送り、2日間に渡った研修会を締めくくりました。

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