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2018.12.20 その他活動

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
高崎市で「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を開催(写真:アフロスポーツ)
「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
JOCスポーツ環境専門部会長の野端啓夫理事(上)、高崎市の富岡賢治市長(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は11月28日、群馬県の高崎シティギャラリーで「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を開催しました。

 JOCは平成13年度からスポーツ環境専門部会を設置し、スポーツと環境に係わる啓発・実践活動を推進してきました。その活動の1つとして、今回はJOCパートナー都市の高崎市で本セミナーを開催。同市のスポーツ関係者を対象としてスポーツ界における地球環境保全の必要性について改めて考え、どのように実践に移していくかを学ぶことを目的としています。当日は高崎市やJOCパートナー都市関係者など227名が参加し、熱心にオリンピアン、発表者の話に耳を傾けていました。

 始めに、主催者を代表してJOCスポーツ環境専門部会長の野端啓夫理事より、JOCが取り組んでいる環境問題や本セミナーの主旨を説明するとともに、「環境問題は地球規模のものから日常、一般の生活に関わるものまで多岐に渡っており、ゴールの見えない難しい問題であると我々も感じております。これから先、しっかりと考えて手を打たないと、対応がますます遅れてしまいます」と述べ、「50年後、100年後の子供たちに今のスポーツを楽しめる環境を残すことが大事。ぜひ今日をきっかけに、今後それぞれのスポーツ団体で活動する上で、環境問題に目を向けた活動を続けていただけることを期待しております」と開会の挨拶を行いました。

 続いて、共催者を代表して登壇した高崎市の富岡賢治市長より、JOCパートナー都市の主旨や役割、また、東京2020大会の事前トレーニングキャンプ等の施設利用に関する協定書を締結したポーランドとの交流の様子を紹介。今後もスポーツを通した国際交流を進めていきたいと説明し、「高崎市は何人ものオリンピアンが歩いている、そのような街になればこんなに嬉しいことはありません。スポーツはみんなで応援できる分野ですので、東京オリンピックに向けて市民の皆さんといっしょに協力していきたい」と参加者へ呼びかけました。

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
コーディネーターを務めたJOCスポーツ環境専門部会員で東海大学の大津克哉准教授(写真:アフロスポーツ)
「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
JOCスポーツ環境専門部会員で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の荒田有紀持続可能性部長(写真:アフロスポーツ)

■「スポーツと環境」「地球温暖化」をテーマに意見交換

 第1部は「スポーツと環境の関わり」をテーマに、NPO法人気象キャスターネットワーク代表の藤森涼子氏と、いずれもJOCスポーツ環境専門部会員である、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会総務局の荒田有紀持続可能性部長、オリンピアンでJOCスポーツ環境アンバサダーの宮下純一氏、オリンピアンの上田藍選手がパネリストとして参加。JOCスポーツ環境専門部会員の大津克哉東海大学准教授がコーディネーターを務め、それぞれの立場から環境に対する取り組みや、スポーツの現場から経験したことを共有しました。

 第1部開始後、大津准教授がスポーツと環境には、「スポーツが環境から影響を受ける」被害者の側面と、「スポーツが環境に影響を与える」加害者の側面があることを理解することが重要であると説明。続いて荒田部長より、「東京2020大会を持続可能性に配慮したものとするために」と題して東京2020大会のビジョンやコンセプト、持続可能性の意味やそれに配慮するために取り組んでいる主要の5つのテーマ、(1)気候変動、(2)資源管理、(3)大気・水・緑・生物多様性、(4)人権・労働・公正な事業慣行等への配慮、(5)参加・協働、情報発信(エンゲージメント)などを紹介しました。また、これら東京2020組織委員会が立てた計画、目標について「絵に描いた餅ではいけない。進捗状況をしっかり把握した上で公表していきます。うまく行かないところもあるかもしれませんが、そこは正直に皆さんにご説明をして、きちんと分析して、次の大会や今後の大きなイベントが行われる際の参考にしていただきたいと考えています」と話し、不要になった携帯電話などの金属からメダルを作る「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の進捗について報告。「金、銅はかなり多く集まっています。銀は少し足りない状況ですが、引き続き募集していますので今の集まり具合から見ると、ちょうど間に合うのではないかと思います」と報告しました。

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
JOCスポーツ環境専門部会員の宮下純一さん(写真:アフロスポーツ)
「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
JOCスポーツ環境専門部会員の上田藍選手(写真:アフロスポーツ)

 次に「スポーツと環境」について、宮下氏、上田選手がオリンピアンの立場からスポーツの現場で経験したエピソード、また取り組んでいることなどについて紹介。宮下氏は、「室内でのスポーツということもあり、現役時代は環境問題について正直あまり考えたことはなかったが、引退後、JOCスポーツ環境専門部会に入ったことをきっかけに環境問題の深刻さについて考えるようになりました」と話し、スキーやスノーボードをはじめ、自然を舞台とする様々な競技の選手に取材した経験から、「この20年で温暖化が進んだことで、もう長野では冬季オリンピックを開催するのは難しいという話も聞きました。50年後にはスキーができなくなるかもしれない。環境問題は音を立ててはっきり進んでくるわけではなく、気付いたときには迫ってきている。環境が悪くなっている足音が、僕たち室内競技の選手には分からないくらいヒシヒシと近づいていることが理解できました」と伝えました。

 上田選手は、大会を開催することで環境が良くなった事例を挙げ、毎年5月に開催される「ITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会」は、山下公園に臨む海上がスイムのコースとなっており、2015年から地球温暖化対策として「横浜ブルーカーボン事業」を実施していることを紹介。本事業は、参加者の会場までの移動等により生じる二酸化炭素排出量を金額に換算し、参加者から集めた環境協力金をわかめなどの海洋資源の育成、海の水質改善につなげていることを説明しました。また別大会の事例として、ロンドン大会開催2年前の2010年プレ大会では、スイムのコースが競技者の体に絡むぐらいたくさんの藻が海に浮いているような状態だったが、清掃活動を行い、大会本番ではきれいになっていたというケースも紹介。「環境が悪くなっていることも理解しつつ、トライアスロンなどの競技開催を通じて環境をきれいにすることもできるということをお伝えしたいです」と述べました。

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
NPO法人気象キャスターネットワーク代表の藤森涼子さん(写真:アフロスポーツ)
「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
100年後の天気予報が紹介されると会場からは驚きの声が上がった(写真:アフロスポーツ)

 これらオリンピアン2人が共有した経験、取り組みを踏まえ、藤森氏より「2100年、未来の天気予報」を紹介。このまま何の対策もしなければ、夏に日本各地で40℃を超える猛暑日が当たり前のように続き、およそ12万人が熱中症で病院に運ばれる被害が出る。また、猛烈な台風・大雨による氾濫やがけ崩れ、反対にまったく雨が降らない地域の干ばつも頻繁に起こるようになると、参加者へ警鐘を鳴らしました。また、熱中症以外の地球温暖化が与えるスポーツへの影響として、昔は冬場にアイススケートができた池が、現在は氷が張らずスケートができなくなっていること、水温上昇による水質悪化、普段の生活に密接に関わる食べ物への影響や海の生態系の変化、海面上昇の影響による高潮・高波の脅威を例として挙げ、この環境変化に対する方法として、「適応(地球温暖化に備える)」と「緩和(二酸化炭素を出さない)」の2つの行動を説明しました。

 藤森氏の説明を聞き、宮下氏より「この環境問題を先の世代に残すのではなく私たちの世代から発信しなければいけないし、スポーツ界から発信して広めていく活動をしていきたいです」、上田氏より「暑さへの適応という点に関して、私はアスリートとして困った状況を作らないように早め早めに準備することを癖付けているのですが、これからは暑さ対策のために事前に天気予報をしっかりチェックするなど、適応するという点でも準備する必要があるんだなと勉強になりました」と、それぞれ感想や今後に向けての取り組みが伝えられました。最後に大津准教授より、第1部のまとめとして「スポーツと環境の新たな関係に向けて、知識を意識に変え、それを行動に移す。そして、次の世代にバトンをつなぐことが重要です」と参加者へ呼び掛けました。

「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
すまいるーぷ協議会会長を務める高崎経済大学の大宮登名誉教授(写真:アフロスポーツ)
「第14回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を高崎市で開催
すまいるーぷ協議会が実施している食品リサイクルプロジェクトを紹介(写真:アフロスポーツ)

■「すまいるーぷ協議会」の活動を紹介

 第2部では「スポーツと環境活動〜すまいるーぷ活動を通して」と題し、「一般社団法人 ぐんま食品リサイクルすまいるーぷ協議会」の活動を紹介。コーディネーターを務めたすまいるーぷ協議会会長でもある高崎経済大学の大宮登名誉教授の進行のもと、パネリストとして参加した同協議会の片亀光理事(株式会社環境評価機構代表取締役社長)、広瀬雅美事務局長(株式会社ヒロセプランニング代表取締役社長)、臼田信加寿氏(IRM株式会社部長)が、すまいるーぷ活動の概要や具体的な内容、また群馬県が抱える環境面の3つの課題などを報告しました。

 すまいるーぷ協議会は、地元の食品廃棄物を良質な飼料・肥料としてリサイクルし、それらで育った家畜や農産品を食材として活用する食品リサイクルプロジェクトであり、先述した東京2020組織委員会が掲げる持続可能性に配慮するための5つの主要テーマのうち、「資源管理」に該当するが、他全ての主要テーマに関わる活動だと、大宮名誉教授より説明。「私たちの住んでいる高崎市の周辺でこうした活動を10年ぐらい、日本ではほとんどやってこなかったことを着々と行っています。皆さんもぜひ、自分たちの手でできる環境にやさしい行動を1つ1つやっていただきたいと思います」と述べると、最後に「スポーツと環境について今日の機会を踏まえて今一度考えて、次の世代の行動に生かしていただきたいと思います。サッカーのワールドカップでは日本のサポーターによる清掃活動が注目されました。あのような行動を当たり前のようにやれる社会をぜひ作っていきたい。皆さんが作る社会です」とメッセージを送り、第2部のプログラムを締めくくり、セミナーを終了しました。

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