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2018.11.09 選手強化

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)を実施(写真:フォート・キシモト)
「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
福井烈JOC常務理事が開会のあいさつ(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を10月27日、28日の2日間、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で開催しました。

 この研修会は、JOCが支援する全国各地のタレント発掘・育成事業の受講生を対象に各種プログラムを提供し、将来世界で活躍できるトップアスリートを目指す意識を醸成するとともに、スポーツを通した人間形成と競技力向上を図ることを目的としています。今回は「日本トップレベルを感じよう!」をテーマに、JOCが支援する15事業のうち9事業から集まった中学1〜3年生の受講生18名と、指導者・引率者10名が参加。また、JOC加盟オリンピック実施競技団体(NF)の強化担当者、育成担当者なども参加し、未来のオリンピアン候補たちに熱い視線を送りました。

 プログラム開始に先立ち、主催者を代表してあいさつに立った福井烈JOC常務理事は冒頭で「現在のスポーツ界は、勝利が全て、強ければ何でも許される、そんな時代ではないと思います」と述べ、競技以外にさまざまな文化・教育プログラムが行われるユースオリンピックの理念を紹介。また、同時にJOC選手強化本部のスローガンである「人間力なくして競技力向上なし」を合わせて説明すると、「人間力の高いアスリートになっていただきたい。今回の研修はこの人間力というものを考える機会にもなります。人間力はアスリートとしての成功にも大きく関わってくると思います。そして皆さんには、成功より成長を楽しむようなアスリート人生を歩んでいただきたいと思います」と話しました。

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
2人1組での腹筋運動、柔軟体操などでまずは受講生同士の距離を縮めた(写真:フォート・キシモト)
「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
ハイパフォーマンスジムでは跳躍力を測定(写真:フォート・キシモト)

■柔軟講習、ハイパフォーマンスジムで体力測定

 今回の研修会は、10月13日〜14日に行われた小学生の研修会同様、初日は2部構成で行われ、第1部のテーマは「ハイパフォーマンスセンターでの取り組み」。最初に受講生たちは共用コートに移動し、JOC専任コーチングディレクター(NTC担当)体操(新体操)の吉岡紀子さんを講師に迎え、アイスブレイクと柔軟講習を受けました。
 吉岡ディレクターから「何事にもチャレンジすることの大切さ」を教えられた受講生たちは、まず互いに10人と握手して自己紹介、2人1組でのアップ運動などを通して仲を深めると、続いて何種類もの腹筋運動、体をねじる柔軟運動などを実施。これらの運動は今後の体作りやトレーニングにも役立つ内容とあって、吉岡ディレクターは「けがのない自分を作るには準備運動が大事です。また、クールダウンも含め、体をほぐすストレッチは忘れないで行うようにしてください」とアドバイスを送りました。

 次に受講生たちは「スポーツ科学を活用した体力の把握」を目的に、国立スポーツ科学センター(JISS)にあるハイパフォーマンスジムに移動。ハイパフォーマンスセンターのハイパフォーマンス戦略部・スポーツ科学部の皆さんを講師に迎え、同ジムの最先端のトレーニング機器・施設などを見学しました。
 その後、トップアスリートはスポーツ科学を用いてどのような体力テストを行っているかを体験する一環として、2種類の垂直跳び測定を実施。まず、通常の体力測定と同様にヤードスティックを使用した垂直跳びを行い、続けて、体の重心・力がどの方向へかかっているかが可視化される「フォースプレート」という機器を用いた垂直跳びを行いました。また、それらの結果から出た自身の数値と、日本トップアスリートの平均値などを比べることができるなど、受講生にとっては貴重な体験となりました。

■指導者とインテグリティ教育の共有、意見交換

 体力測定が終わると、受講生たちはアスリートヴィレッジへ移動し夕食と入浴。その間、指導者・引率者は研修室に移動し、「インテグリティ教育について」をテーマとした指導者向け研修会に参加しました。上田大介JOCインテグリティ教育ディレクターが講師を務め、JOCの教育プログラムやスポーツ界で昨今起こっている問題などを指導者と共有。「アスリートを取り巻く環境は目まぐるしく変化し、その周囲にはリスクがたくさんあります。スポーツ界が生き残るためには、この変化に対応しないといけない」と訴えた上田ディレクターは、今考えるべきこととして「なぜ教育が必要か?」「日本ではどのような教育が必要か?」「スポーツの価値とは?」などの項目を挙げると、最後に「誰が何をやるべきか」についてディスカッションし、それぞれの立場から意見を交換しました。
 まとめとして、上田ディレクターは「指導者が率先して学び続け、それを指導に生かし続けなければいけない。ぜひ皆さんと一緒に情報を共有しながら、共に学び続け、共にスポーツの価値を守っていければと思います」と呼びかけました。

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
リオデジャネイロオリンピックのシンクロナイズドスイミングで銅メダルを獲得した箱山愛香さんが講話(写真:フォート・キシモト)
「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
箱山さんの講話をもとに受講生たちはグループワークを行った(写真:フォート・キシモト)

■オリンピックメダリストの箱山選手から学ぶ

 一方、受講生たちは夕食、入浴後は研修室に移動し、ここからはプログラム第2部「オリンピックメダリストから学ぶ」がスタート。オリンピアン講話として、2016年リオデジャネイロオリンピックのシンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)チームで銅メダルを獲得した箱山愛香さんから体験談を聞きました。
 シンクロナイズドスイミングを始めたきっかけ、学生時代、ロンドンとリオデジャネイロのオリンピック2大会で得た経験などを伝える中で、特に強調したのが夢・目標の持ち方。子供のころからオリンピックに出場することを目標にしていた箱山さんは、2012年ロンドンオリンピック出場で念願をかなえましたが、5位入賞でメダルに届かず、他国の表彰式を見たときに「なんでオリンピック選手になるのが夢だったんだろう」と自身の目標の持ち方を後悔したそうです。
「リオに向けてはオリンピックでメダルをとることを目標に頑張ろうと変わりました。オリンピック選手になること、オリンピックでメダルをとること、この2つはすごく似ているように思えるかもしれませんが、全然違います。やっぱり夢、目標はギリギリの詰めたところまで考えなきゃいけない。もし私が小学校6年生のときにオリンピックでメダルを獲得することが夢だったら、もっと違う練習、生活の仕方だったかもしれないので、みんなも夢と目標をもう1度、見直してみてください。本当にそれでOKか、もっとギリギリまであるんじゃないか、自分でよく考える機会にしてもらえればと思います」と箱山さん。
 最後に受講生に伝えたいこととして「1人では何もできないこと」「夢・目標を持つことの大切さ」「好きなことを続けることができたこと」の3つを挙げ、「皆さんのことをすごく応援しています」とエールを送りました。

 この講話を受けて、受講者たちは「メダリストの強みから自分たちに必要なこと」をテーマにグループワークを実施。4つのグループに分かれた受講生たちは、自分の弱み、箱山選手の強みを比較し、どうすれば自分の弱みを克服できるか、自分の弱みを箱山さんの強みにどうつなげていくかについてディスカッションし、それぞれの意見をまとめてグループごとに発表しました。

 このグループワークをもって、1日目の全プログラムが終了。受講生たちは箱山さんに練習方法や気持ちの持ち方などを質問し、またメダルを触らせてもらうなど、オリンピアンとの交流を最後まで楽しみました。

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
本格的なバスケットボールの練習を体験した受講生たち(写真:フォート・キシモト)
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2日間の研修を振り返り受講生はアスリート宣言を行った(写真:フォート・キシモト)

■バスケットボールの本格的な練習を体験

 2日目はまず、「トップアスリートのトレーニング」をテーマにしたバスケットボール体験からスタート。オリンピック女子日本代表の大山妙子さん(96年アトランタ大会、04年アテネ大会出場)、岡里明美さん(96年アトランタ大会出場)、永田睦子さん(96年アトランタ大会、04年アテネ大会出場)の3名を講師に迎え、ボールを使った体幹トレーニングをはじめ、パス、ドリブル、シュートの基礎練習、実践を意識した応用練習、本格的なゲーム形式と、約2時間にわたりたっぷりとレクチャーを受けました。
 岡里さんは、実際に競技をやっている受講者からの「3ポイントシュートのフォームがぶれてしまう」という相談に「まずは無理のない距離で練習を繰り返し、フォームをしっかり身につけること。あとは自分の良いシュートのイメージを持ち続けましょう」と具体的にアドバイス。大山さんは成長段階にある受講者たちに対して「まずはしっかりご飯を食べることと、体を休めること」、永田さんは「今の自分ができるベストなことを一生懸命頑張ること」が大切だと伝えました。

 全力で体を動かしたあとは、研修室でこの2日間の振り返りを行いました。研修を受けて自分がどう変わったか、地域に帰って自分が取り組めることは何かを考えた後、「アスリート宣言」として、これから取り組んでいきたいことを一人ずつ発表。「諦めずにチャレンジし続ける」「挨拶をしっかりする」「学んだことをチームのみんなに伝える」など、さまざまな「宣言」が力強く飛び出しました。

「平成30年度JOC地域タレント研修会(中学生)」を開催
クロージングセッションでは中森康弘JOC強化部強化第二部部長が激励のあいさつ(写真:フォート・キシモト)

 クロージングセッションには中森康弘JOC強化部強化第二部部長が登壇。「今回の研修がきっかけでできた横のつながりを大切にして、お互いの悩みや目標に向かって進む過程を全国の皆さんと共有して下さい」と述べ、高く設定した目標をどのように達成するかを考えてほしい、と呼びかけました。
 そして、近代オリンピックの提唱者であるピエール・ド・クーベルタン男爵の言葉を引き合いに出し「オリンピックの頂点に達するためにいかに努力をするか、いかに戦ったが重要だと彼は言っています。これはスポーツだけでなく人生においても同じです。勝っても負けても良いのでいかに努力をしたか、いかに正々堂々と戦ったかを将来の糧にしてほしい」と訴え、それぞれの地域に戻っていく受講者たちを激励。最後に「先ほど発表した宣言を、帰ってから早速友達や両親、親戚の皆さんに明確に伝えて下さい。そうすると、協力してくれる人、応援してくれる人が増えて、さらに目標に近づくことができると思います。是非そのような好循環な人間関係を作って下さい」とアドバイスを送り、研修を締めくくりました。

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