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2018.06.21 選手強化

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
平成30年度JOCコーチ会議を開催(写真:フォート・キシモト)
平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
橋本聖子JOC副会長(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は6月11日、「平成30年度JOCコーチ会議」を開催しました。JOCの役員、選手強化本部をはじめ各専門委員会の委員や、ナショナルコーチ・専任コーチ、国内競技団体(NF)の関係者ら、強化に関わる約280名が参加。本会議は2部構成で行われ、第1部では山下泰裕JOC選手強化本部長による重点施策の説明、東京2020大会組織委員会からの進捗報告、国立スポーツ科学センター(JISS)による東京2020大会に向けた特別プロジェクトの報告、第2部では「第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)から学ぶ」をテーマにJOCによる大会総括、日本スケート連盟と全日本スキー連盟からのプレゼンテーションなどが行われました。

 プログラムに先立ち、主催者を代表して橋本聖子JOC副会長(選手強化担当)が開会の挨拶。平昌オリンピックを振り返り「大変良い成績を挙げることができまして、東京2020大会に向けてバトンを渡すことができます」と、冬季オリンピック史上最多となる13個のメダルを獲得した日本代表選手団の活躍を称えました。その一方で「まだまだやるべきことはたくさんあったと思います」と気を引き締めると、「選手、スタッフの声を聞き、どのように前に進めていくか。また、夏と冬のさらなる連携もいっそう大切な強化施策の一つでありますので、ご協力をお願いいたします」と呼びかけました。

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
スポーツ庁の籾井圭子競技スポーツ課長(写真:フォート・キシモト)
平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
山下泰裕JOC選手強化本部長(写真:フォート・キシモト)

 続いて、来賓を代表してスポーツ庁の籾井圭子競技スポーツ課長が登壇。スポーツ庁として、東京2020大会に向けた競技力向上はもちろん、それ以降もしっかり続いてく持続可能な支援プランの構築を目指していることを、具体例と合わせて報告しました。また、味の素ナショナルトレーニングセンターの拡充整備により、オリンピック競技とパラリンピック競技の共同利用が促進されることを踏まえ、「政府としても共生社会を作っていくことを掲げています。ぜひ東京2020大会を一つの契機として、率先してスポーツの世界からオリンピック・パラリンピック一体ということをぜひ発信していただければと思います」と述べました。

■JOC選手強化本部が掲げる5つの重点施策

 第1部の最初のプログラムは「JOC選手強化本部の重点施策について」と題し、山下本部長が登壇。重点施策としている5つの柱、(1)アスリートファースト、(2)東京2020大会金メダル30個達成に向けた日本スポーツ界の結集、(3)夏季・冬季競技一体となったサポート体制の確立、(4)東京2020大会の成功に向けたオリンピック・パラリンピック一体となった連携強化、(5)インテグリティ教育の普及・啓発について、それぞれ説明しました。その中で「力を合わせて東京2020大会、それ以降もアスリートが夢にチャレンジできる環境を作っていきたい」「オリンピック、パラリンピック両方の成功なくして、東京2020大会の成功はない。一体となってJOCもまい進してまいりたい」と、オールジャパン体制を強調した山下本部長。スピーチの最後にも重ねて「皆さんとともに力を合わせて、心を一つにして東京2020大会成功に向けて頑張っていきたい」と力強く述べました。

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
JISSスポーツ研究部の中村大輔さん(左)、同じくメディカルセンター コンディショニング課の立谷泰久さん(写真:フォート・キシモト)
平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
JISSの客員研究員でもある枝川宏えだがわ眼科クリニック院長(写真:フォート・キシモト)

 日本アンチ・ドーピング機構の片岡彰結果管理・インテリジェンス部部長によるアンチ・ドーピングに関する注意喚起、また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の小林亨国際局NOC/NPC部長による東京2020大会に向けた進捗状況についての説明に続いて、「JISS特別プロジェクトに関するプレゼンテーション:東京2020大会に向けて」が行われました。
 まず、暑さ対策(暑熱対策)について、JISSスポーツ研究部の中村大輔さんが報告。アスリート、指導者を対象に行ったアンケートの回答によれば、暑熱対策に対する意識は高いものの、JISSとして「さらに情報発信していく必要があります」とコメント。また、競技現場で実際に行っているサポートの経験から「選手の感覚を大事にし、さらにパフォーマンスを上げることが大切。そして、暑さ対策の情報をしっかり持つことが重要です」と述べ、対策を十分に行うことで日本人選手は、日本特有の夏の暑さに慣れていない外国人選手に対して有利になると、言葉に力を込めました。
 続いてメンタル面の対策について、JISSメディカルセンター コンディショニング課の立谷泰久さんが説明しました。同課では「自国開催」を重要キーワードにし、1964年東京オリンピック、72年札幌オリンピック、98年長野オリンピックにおいて日本が実施してきたメンタル対策を研究。また、自国開催のオリンピックに出場したオリンピアンにもインタビューを実施するなど、現在、東京2020大会に向けたメンタル対策の研究を進めていることに言及しました。これらをもとに立谷さんは「実力を発揮するためには、日ごろから自分自身を理解し、やるべきことに集中できる状況が重要。万全の準備のためにぜひ心理サポートを活用していただければと思います」と呼びかけました。

 次に、第1部最後のプログラムとして、JISSの客員研究員でもある枝川宏えだがわ眼科クリニック院長が「視力と競技能力」について講義を行いました。あらゆる競技のアスリートを対象に行った測定と研究の結果、視力は競技力向上にはとても重要であり、視覚から競技能力を向上させるには「正確な視力矯正、各種目の専門的な競技訓練、眼のコンディション作り、この3つが重要であると考えています」とまとめました。

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
伊東秀仁JOC選手強化本部常任委員(写真:フォート・キシモト)
平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
皆川賢太郎JOC選手強化本部常任委員(写真:フォート・キシモト)

■平昌オリンピックから学ぶ

 第2部最初のプログラムは「第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)から学ぶ」をテーマに、まず日本代表選手団総監督を務めた伊東秀仁JOC選手強化本部常任委員が平昌オリンピックを総括しました。
 冬季オリンピック史上最大規模で行われた大会において、13個のメダル獲得、入賞43は日本代表選手団として冬季では過去最高となる好成績。この原動力の一つとして挙げたのが、前回大会のソチオリンピック後に立ち上げたJOC平昌対策プロジェクトでした。伊東常任委員は、同プロジェクトの一環として実施したJOCとNFによる現地合同調査、他競技の選手同士がチームジャパンとしての連携と絆を深めることを目的とした「The Building up Team JAPAN」(合宿形式の研修会)、現地サポート施設である「JOC G-Road Station」、「ハイパフォーマンス・サポートセンター」などについて、それぞれの目的、効果を報告。また、今回の好結果を受けて「リオからいただいたバトンを次の東京に引き渡すことができたかなと思います。そして、東京2020大会の活躍が、我々冬季競技にとっては北京で行われる次の冬季オリンピックへの糧となります。ぜひ、東京2020大会に参加される競技の方々は精一杯頑張っていただきまして、我々にまた新しいバトンを渡していただければと思います」と述べました。
 また、ここでは日本スケート連盟の湯田淳スピード強化部長からソチ大会から平昌大会にかけてのスピードスケート選手強化の取り組みに関する報告、小林芳子フィギュア強化部長からフィギュアスケートにおける代表選考の仕組みに関する報告が行われました。

 続いて、全日本スキー連盟常務理事・競技本部長を務める皆川賢太郎JOC選手強化本部常任委員よりスキー競技について、2017-2018シーズン総括、平昌オリンピックの結果と総括、2022年北京オリンピックの対策と目標などが報告されました。スキー競技はソチオリンピックで7個のメダルを獲得しましたが、平昌オリンピックでは4個と後退。「反省を生かして4年後に向かいたい」と語った皆川常任委員は、オリンピックは例え個人種目であってもチーム力が必要だと痛感したことから、全日本スキー連盟競技本部長の立場として、まず競技本部を「組織からチームへ」の考え方のもとピラミッド型からサークル型へと組織変更した点などを説明しました。また、マーケティングとの連携について、スノーボードも含めたスキー競技全種目の選手を同じ雪の上で活動する一つのグループとしてブランディングし、その価値を高めるために、全日本スキー連盟強化指定選手の通称“SNOW JAPAN”を用いた今後のプロモーション活動、商品展開などの取り組みについて詳細を述べました。

平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
平成29年度JOCナショナルコーチアカデミー修了式(写真:フォート・キシモト)
平昌から受け継いだバトンを東京2020大会へ「平成30年度JOCコーチ会議」を開催
福井烈JOC選手強化副本部長(写真:フォート・キシモト)

■平成29年度JOCナショナルコーチアカデミー修了式

 JOC事務局より第18回アジア競技大会(2018/ジャカルタ・パレンバン)について、選手村、宿泊施設、輸送などに関する説明が行われたのに続き、平成29年度JOCナショナルコーチアカデミー修了式が行われました。37名の修了者のうちコーチ会議に出席していた21名が登壇。修了者を代表して日本ラグビーフットボール協会の宮崎善幸さんに、山下本部長から修了証書が贈られると、宮崎さんは「『人間力なくして競技力向上なし』という言葉は、『コーチの人間力なくして選手の競技力向上なし』だと、あらためて同期の仲間から学びました。このナショナルコーチアカデミーで学んだことをそれぞれの現場で生かして、各フィールドで選手のために結果を出していきたいと思います」と抱負を語りました。

 最後に、閉会の挨拶に立った福井烈JOC選手強化副本部長は「平昌オリンピックの勢いを受け継ぎ、つなげていけるように、まさにオールジャパン体制で取り組んでいかなければいけません」とコメント。そして、今回のコーチ会議で学んだことを各競技団体に持ち帰り、情報共有してほしいと呼びかけると、「JOCは皆さんとともに『人間力なくして競技力向上なし』をテーマに、本日発信させていただいた重点施策の実現に向けて、競技間連携をさらに深め、サポートの充実、環境整備に努めてまいります。我々ができる最高の準備をして、アジア大会、東京2020大会を迎えていきましょう」と述べ、平成30年度JOCコーチ会議を締めくくりました。

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