OLYMPIAN2018
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05いという欲は出てきます。そうした「でしゃばる自分」をどう抑えるのか。自分自身が目指す滑りをするために、自分を冷静にコントロールできるようになることが目標ですね。——小平選手の姿からは決して逃げない、強い覚悟のようなものを感じます。小平 オランダに行った1年目に、父から「奈緒の人生は神様がくれた時間だから悔いのないように思う存分使い思いの詰まったメダル——メダル獲得おめでとうございます。小平 どうもありがとうございます。——最初の1500mでは6位入賞、続く1000mでは銀メダルを獲得しました。そこから金メダルをとった500mのレースに向けて、どのように切り替え、準備したのでしょうか。小平 ゆったりとしたリズムで滑る種目から500mのレースに臨むにあたって、もちろん滑りの内容を切り替えることは意識しました。 メンタル面でいうと「金メダルをとりたい」ではなく「私が目指している究極の滑りを皆さんに見てもらいたい」という気持ちが大きかったです。——500mのレースを拝見していて、小平選手のスタート直前、一瞬体がピクッと動いたように見えました。小平 はい。私も、スタートの態勢を整えてからピストルが鳴るまでの時間が、いつもより長く感じました。いつでも出られる準備ができていたので、会場内の何かの音に反応してしまったように思います。瞬間的に「フライングをしてしまったかもしれない」と感じました。正直なところ迷いもあったのですが、(フライングの合図である)2度目のピストル音が鳴らなかったので、「もう前に進むしかない」とすぐ気持ちを切り替えました。——結果、オリンピックレコードの素晴らしいレースになりました。小平 ありがとうございます。自分自身でも、納得のいく滑りができたことに満足しています。——1000mでは、銅メダルを獲得した髙木美帆選手とともに表彰台に上がりました。彼女の活躍を見ていて、どんな思いをもっていますか。小平 髙木選手が15歳で初めてバンクーバーオリンピックに出場した時は、スピードスケート史上最年少ということでメディアにもすごく注目されていました。あの大会では結果が伴わず、髙木選手にとってスケートというスポーツが苦いものになってしまわないかと心配していました。でも今こうして、彼女自身の力で困難を乗り越えて強くなり、自分の目標をかなえていっていることをとてもうれしく思います。 私より年下ですが、同士というか仲間というか、私も彼女を見て学ぶことが多い存在で感謝しています。——バンクーバーオリンピックでもチームパシュートで銀メダルを獲得しています。平昌オリンピックでは個人で金銀2つのメダルを獲得しましたが、何か違いを感じていますか。小平 チームパシュートでのメダルは、普段からそのチームで練習していたわけではなかったこともあり、単に3人のメンバーでつかんだメダルという感覚でした。 一方、今回の平昌オリンピックでは、私、小平奈緒を支えてくださっている皆さんの思いがいっぱい詰まったメダルであることを実感しています。自らと戦う覚悟——レース翌日の記者会見で、「オリンピックの舞台でベストなレースをしたいと思って練習を積んできたし、そういうレースができる自信があった」とおっしゃっていたことが印象に残っています。500mではワールドカップで連勝を続けてきましたが、負けていないことでかえってプレッシャーに感じることはなかったですか。小平 私は「誰かに勝つこと」よりも「自分の滑りが究極であるか」に価値を感じているので、勝たなければならないということに対するプレッシャーはなくて、自分自身と向き合う戦いのほうがむしろ難しくシビアに感じています。——小平選手は自らを「求道者」とも評しているように、自らの道を極めていくのは終わりがない旅のようです。達成したいゴールのイメージはあるのでしょうか。小平 もちろん人間ですから、勝ちた

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