OLYMPIAN2018
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33もプレッシャーに負けない強さを身につけていきたいと思います。世界選手権、そして東京へ——目標にしている選手はいますか。阿部 レスリングの須﨑優衣選手です。昨年、柔道とレスリングの合同合宿に参加した際、正面から楽しそうに競技と向き合っていて、その姿勢や意識からは見習うことが多いと感じました。いつも穏やかですが本当に強い。違う競技の選手ですが、すごく憧れます。——いよいよ、2020年東京オリンピックが近づいてきました。どのように臨んでいきたいですか。阿部 「想像以上のプレッシャーが掛かる」と周りからも言われるので、試合同様のプレッシャーを感じながら練習に取り組むことと、常に平常心で臨める心の強さを意識しています。 まず、今年の世界選手権で優勝したいです。世界選手権は大きなプレッシャーを感じる試合になると思いますので、オリンピックに向けて大きな経験になると思います。そして来年の世界選手権、東京オリンピックとつなげていきたいと思います。兄の背中を追って——柔道を始めたきっかけを教えてください。阿部 5歳の頃、柔道の道場に通っていた兄(阿部一二三選手)について行ったのですが、そこにいろいろな学年の人たちがいてさまざまな話ができる道場の雰囲気を見て「楽しそう」と感じたことが、始めたきっかけです。——柔道にのめり込むターニングポイントはありましたか。阿部 試合で勝つことは楽しかったのですが、最初はそれほど勝ちたいと思ってもいなかったですし、大会で3位になれればそれで十分うれしかったんです。でも小学2年の時、まだ優勝したことがないと気づきました。その年初めて優勝できたのですが、それから全く勝てなくなりました。そして小学5年になり、この学年から参加できる全国大会に出たいという気持ちから柔道にのめり込むようになりました。——お兄さんと比較されることも多いですよね。ですね。また、やはり投げて勝つ爽快感はたまらないです。——勝利と内容、どちらを重視していますか。阿部 試合によって、柔道の内容も変わると思います。もちろん勝ち方にこだわる試合もありますが、大事な試合になればなるほど、勝ち方にこだわっている余裕はなく、何が何でも勝てばいいという考え方になります。シニアのトップ選手と戦うようになり、自分自身、成績を残し結果がついてくるようになって、そういう考え方に変わってきたと思います。——敗戦から得たことはありますか。阿部 高校1年のインターハイの時に、初めて1回戦で負けました。反則負けでした。微妙な判定に、当初は「何で?」と思ったのですが、振り返ってよく考えてみれば、全て自分が悪いと思うようになりました。試合に対する意識や試合に臨むまでの過程がだめでした。どの試合に向けてもしっかり心を整えて最高の準備をして試合に臨まないといけないと気づかされたのです。常に追いかける挑戦者という気持ちで向き合うことができるようになり、その後は徐々に結果がついてきました。自分を見つめ直すいい機会になったと思います。——現状感じている課題は。阿部 組み手です。うまく組めず焦って頭が真っ白になってしまうことが多いので、課題として取り組んでいます。少しずつ追いかけられる立場になっています。他のシニアの選手は経験も多く、落ち着いてしっかり戦っている印象。私阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日生まれ。兵庫県出身。17年世界ジュニア柔道選手権女子52kg級、男女混合団体戦ともに金メダルを獲得。グランドスラム・東京2017、グランドスラム・パリ2018を連覇。17年世界選手権金メダリストの阿部一二三選手は実兄。夙川学院高校所属。天才とも称される兄・一二三選手とともに、東京オリンピックでの活躍が期待されるのが阿部詩選手だ。輝かしい勝利と悔しさあふれる敗戦を繰り返し、着実な成長を実感しながら2020年TOKYOへと続く道を歩み続ける阿部選手に今の思いを聞いた。阿部 初めは全く強くなかった兄が徐々に勝ち始めて注目されるようになり、自分の中で少しずつ悔しさが芽生え始めました。そこから練習に対する向き合い方が変わったと思います。——どのように変わったのでしょうか。阿部 小学生の頃から夙川学院で練習をさせてもらっていたのですが、本当に練習に行くのがイヤでした(笑)。ただ、練習するのが嫌いでも3位になれていたので「練習をしなくても勝てる」と思い込んでいたんです。でも、優勝するには練習が大事だと次第に感じるようになり、自ら練習に行き、本気で取り組むようになりました。今は、兄が常に先に行っているので、その背中を追いかけて頑張っています。柔道に全力で挑む——遠征も多いと思いますが、学業はいかがですか。阿部 正直なところ、勉強はあまり得意じゃないです(笑)。遠征もありますし、授業は待っていてくれないのですが、友達がノートを見せてくれて支えてくれています。柔道部以外の友達とも仲良くしていて学校は楽しいです。——柔道以外の楽しみは。阿部 うーん……思いつかないですね。友達と遊ぶ時間もないですし、今は柔道のことで頭がいっぱいです。——では、阿部選手が感じている柔道の楽しさとは。阿部 ラスト1秒まで勝負が分からないところPhoto/米岡伸剛/写真ナガセ

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