OLYMPIAN2018
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31たのはもったいなかった。チームが敗れた2試合(グループリーグのイングランド戦と準々決勝の韓国戦)は自分が負けた試合。自分が勝たないとチームに迷惑をかけてしまうことを肌で痛感した大会でした。——2020年の東京オリンピックまで2年あまりとなりました。張本 世界ランクで日本人選手2位までに入り、代表メンバーに選ばれることが目標です。大会本番では金メダルをとりたい。自分の一番大きな課題はフォアハンドです。正しいフォームで威力のあるボールを打つために、ウエイトトレーニングやフットワーク練習に取り組んでいます。メンタル面や戦術面も強くしていきたいですね。——オリンピックで金メダル、という話もありましたが、いつから意識するようになったのでしょうか。張本 昨年、世界選手権に初めて出場してシングルスでベスト8に入り、あと3勝で世界一になれると思った時から、オリンピックの金メダルを意識するようになりました。4年に1回のオリンピックですが、東京で開かれるのはおそらく一生に1回。17歳になって勢いがあり、実力もついていると思うので、チャンスはあると信じています。勝ちも負けも成長の糧に——卓球を始めたきっかけを教えてください。張本 地元の仙台で両親が開いている卓球教室で始めました。最初にラケットを握ったのは2歳の時。始めた時のことはほとんど覚えていませんが、気付いたら楽しくなっていて。特に、試合に出て勝ったり負けたりするようになってから、卓球が面白くなりました。——勝った試合と負けた試合、どちらがプラスになりますか。張本 負けた試合からも学ぶことは大きいですし、強く印象に残っていたりしますけど、今は勝ったほうが自信になると感じます。卓球の面白さを感じるのもやはり勝った試合ですね。——今までで印象に残る試合とは。張本 何年か前の全日本卓球選手権大会ジュニアの部の予選。マッチポイントを握られてから逆転勝ちして本戦に出場した試合は、卓球にのめり込むスイッチが入った一戦でした。——卓球の魅力とは何でしょう。張本 一見分かりにくいボールの回転などです——友達といる時や卓球以外で楽しく感じる時のことを教えてください。張本 笑わせてくれる友達がいて、自分はそこに乗っかっていくタイプですかね。友達といる時間はやはり楽しいです。また、野球が好きなので、プロ野球の結果もネットで見ています。地元が仙台なので、東北楽天ゴールデンイーグルスを応援しています。史上最年少全日本王者の決意——今年の全日本選手権では、14歳で史上最年少の王者となりました。何か変化はありますか。張本 全日本での優勝は大きな自信になりました。ただ、その後はあまりいい成績を残せていません。実力自体はだいぶ上がっていると思うのですが、それをどう発揮するかが課題です。自分のいいところが出せなくても、技術が足りなかったとしても、勝つしかないと思っています。 去年あたりから練習に対する意識も変わりました。以前は、ただコーチに言われた通りにやっていたのですが、自分で考えるようになりました。最終的に試合をするのは自分。苦しい場面で自分の強さが試されるので、練習の時から意識してやっています。——世界選手権団体戦では日本男子代表チームはベスト8でした。張本 目標は金メダルだったので、メダルをとれなかったことが悔しいです。韓国との準々決勝で1番手に起用されて、フルゲームの末負け張本 智和(はりもと・ともかず)2003年6月27日生まれ。宮城県出身。16年世界ジュニア選手権最年少優勝。17年6月、世界選手権シングルスで最年少ベスト8。同年8月、チェコオープンでITTFワールドツアー男子シングルス最年少となる14歳61日で優勝。18年全日本卓球選手権ジュニアの部と一般の部で史上最年少優勝を記録。JOCエリートアカデミー所属。世界を驚かせ続ける14歳の少年、張本智和選手。東京オリンピックまで約2年となった今、彼は日本卓球界のエースになろうとしている。さまざまなプレッシャーと向き合いながら、東京オリンピックでの金メダルを狙う張本選手の素顔に迫る。ね。自分が打てて相手が打てないボールがあるのが楽しいです。でも、今は勝たなきゃいけないプレッシャーがあり、昔のほうが楽しんで卓球をやっていたように思います。もともと楽しくて始めたことなので、これからも卓球本来の楽しさを忘れずにやっていきたいと思います。世界が注目する14歳の素顔——今や世界中から注目されています。ご自身はどう感じていますか。張本 最初はちょっと戸惑いがありましたが、最近は注目してもらってうれしいです。取材などで「何て答えたらいいんだろう」と困ることも多かったのですが、今は自分の言いたいことを頭の中でまとめて言えるようになってきました。そういう面で、昨年あたりから少し大人に近づいてきたかなと。僕は卓球選手ですけど、卓球だけじゃなく人間性や人間力も大事だと思っています。実際、卓球を通して身についていることは多いと思います。——学校や勉強は楽しいですか。張本 学校は楽しいです(笑)。勉強では社会が好きで、歴史が楽しいです。特に戦国時代、織田信長が好きです。信長は、他の武将がしないことをしているところに共感します。僕の最終的な目標はオリンピックでの金メダルですが、そこに行き着くまでに、他の選手ができない技術を少しでもマスターできたら一歩上へ行けると思うんです。Photo/魚住貴弘

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