OLYMPIAN2018
28/44

28 オリンピック・パラリンピックの大会運営を支えるのがボランティアの存在だ。多くのボランティアスタッフの尽力がなければ、大規模な大会は成立しないのが現実である。ボランティアにはさまざまな活動が求められる一方、オリンピックという世界最大のスポーツイベントの顔として関わることができる貴重なポジションである。 2018年平昌冬季オリンピックへ、日本オリンピック委員会(JOC)は、強化部の鈴木和馬さんと藤沢奈津美さんをボランティアスタッフとして派遣した。 国内・地域オリンピック委員会(NOC)を担当するボランティアスタッフ『NOCアシスタント』として、2人がリーダー役となり、平昌2018冬季オリンピック組織委員会から割り当てられた12人のボランティアを含む14人のチームで1カ月間活動をともにした。現地の日本語が話せるスタッフを中心に、大分県在住のポーランド人など、国際色豊かなメンバーが集まった。 オンラインによる事前研修を受けて、1月25日に現地入り。その後、3日間程度の現地研修を受け、ボランティアの基礎知識、オリンピックに関する専門用語、現地でのドライビングなどについて学び、2月9日の開会式に向けて準備をしながら、続々と現地入りする選手や関係者を待ち受けた。14人のメンバーは、選手村内の受け入れ準備に始まり、大会期間中に選手や役員を車で送迎したり、選手村や競技会場での接客対応をしたりするなど、早朝から深夜までさまざまな業務に従事した。 「大会が始まるまでは地味な作業や力仕事も多く、『こんなことをするためにここに来たわけじゃない』と訴えるメンバーもいた」(鈴木)というように、モチベーションの維持も厳しい状況だったという。しかし、大会が開幕し日本代表選手団の躍進が始まると、スタッフにも元気がみなぎった。選手の気さくな対応に癒やされたメンバーも多かったという。「誕生日を迎えた選手やメダリストへのお祝いメッセージを書いた紙を、選手村の施設内の壁に張っていたのですが、それを心待ちにして喜んでくださったり、『ありがとうございます』と返事を書き込んでくれた選手がいたりして、それは私たちも含めてうれしく感じました」(鈴木) 業務は簡単なことや楽しいことばかりではない。しかし、4年に1度のオリンピックで、ハードな経験をするからこそ深い思い出に残る経験だとも言えるだろう。 「ボランティアがいて大会が成り立っていると頭では分かっていましたが、関わってみてそのことを実感しました。家族を説得して来た人、会社の理解を得て来た人、さまざまな想いを持って、世界中から集まったボランティア一人一人が大会をつくっているのです」(鈴木) 「仕事は多岐にわたるので、私たちが体験したのもごく一部ですが、オリンピックという大きな舞台を肌で感じられる貴重なチャンスとなるはずです。観客席やテレビで観戦するのとは全く違った体験ができるのでおすすめです」(藤沢) 「Game‘s hero is you.(オリンピックの主役はあなた)」 ——これは組織委員会に繰り返し言われた言葉だという。オリンピアンだけではない、ボランティアは、オリンピックを演出するのに不可欠な存在だと言っても過言ではないだろう。【東京2020大会ボランティア募集要項(案)】■概要・募集期間:2018年9月中旬~12月上旬予定・募集人数:8万人・活動分野:案内、競技、移動サポート(運転等)、 アテンド、運営サポート、ヘルスケア、テク ノロジー、メディア、式典等※7月下旬に正式発表予定PyeongChang to Tokyo 平昌オリンピックボランティアレポートオリンピックを支える存在「ボランティア」の魅力競技会場周辺で誘導するボランティアスタッフ。オリンピック期間中、藤沢さん(前列左端)、鈴木さん(前列左から3人目)ら「NOCアシスタント」のボランティアスタッフも日本代表選手団をサポートしていた。Photo/AFLO SPORTPhoto/AFLO SPORTPhoto/JOC

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る