OLYMPIAN2018
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23 例えば、オランダの国立トレーニングセンターではオリンピックとパラリンピックの選手が一緒にトレーニングできる環境が整っており、ジュニア世代は、併設された学校に通いながら日常的に練習に励むことができる。また、カナダでは元オリンピック選手がノルディックスキーのコーチを務めるようになったことが躍進につながっている。 日本では、東京2020大会開催が決定し、パラリンピックの強化指定選手が国立スポーツ科学センター(JISS)を利用できるようになり、科学的なデータに基づき、最良のトレーニング方法を構築する。これまで選手個人の模索に委ねられるところが大きかった部分が、飛躍的に改善されたのである。 もちろん、JISS利用によるトレーニング環境の改善は若い世代に限られたことではない。38歳のベテラン2人の活躍ぶりも光った。 1998年長野パラリンピックから6大会連続での出場となった新田佳浩選手は、クロスカントリースキー立位の男子10 kmクラシカルでバンクーバーパラリンピック以来2大会ぶりとなる金メダルを獲得。男子1.5 kmスプリント・クラシカルの銀メダルと合わせて2個のメダルを獲得した。また、2002年ソルトレークシティーパラリンピックから5大会連続で出場している森井大輝選手も、アルペンスキー座位男子滑降で銀メダルを獲得。パラリンピック4大会連続のメダル獲得となった。 日本国内におけるパラスポーツへの関心が高まっていることも、今大会の日本代表選手団の活躍を後押ししている。平昌パラリンピックは、障害者スポーツを取り巻く環境整備の成果を象徴する大会だったと言えるだろう。 今大会の収穫を今後にどう生かしていくのか。2020年東京パラリンピック、そして2022年の北京パラリンピックに向けて、戦いはすでに始まっている。 3月9日から18日まで開催された平昌冬季パラリンピック大会で、日本は10個(金3、銀4、銅3)のメダルを獲得した。 中でも大活躍を見せたのが、21歳のアルペンスキー座位の村岡桃佳選手。女子大回転の金メダルをはじめ、回転、滑降で銀メダル、スーパー大回転、スーパー複合で銅メダルと、計5個(金1、銀2、銅2)のメダルを獲得した。また、24歳の成田緑夢選手はスノーボード(下肢障害LL2)の男子バンクドスラロームで金メダル、スノーボードクロスで銅メダルと2個のメダルを獲得。平昌の舞台で、冬季パラリンピック初出場を果たした日本の若い力が躍動した。 新しい世代の躍進は、世界的にも顕著だった。アルペンスキー座位男子で金、銅メダルを獲得したジェスパー・ペデルセン選手(ノルウェー)、同じく金メダルを獲得したユーロン・カンプシャー選手(オランダ)はともに18歳。またクロスカントリースキー立位女子で金メダルを獲得したナタリー・ウィルキー選手(カナダ)は17歳と10代の金メダリストが続出した。 パラリンピックはオリンピックとは異なり、必ずしもジュニア世代から競技のエリートコースを歩めるとは限らない。事故や病気など人生の途中で障害を負ってからパラスポーツに取り組み始めることが少なくないからだ。 とはいえ、若い世代が急成長してきた背景にあるのは、ジュニア世代を含めた強化環境がオリンピック同様に充実してきたということにある。Text/宮崎恵理 Photo/PHOTO KISHIMOTO森井 大輝(もりい・たいき)アルペンスキー座位男子滑降 銀メダル成田 緑夢(なりた・ぐりむ)スノーボード(下肢障害LL2)男子バンクドスラローム 金メダル男子スノーボードクロス 銅メダル新田 佳浩(にった・よしひろ)クロスカントリースキー立位男子10kmクラシカル 金メダル男子1.5kmスプリント・クラシカル 銀メダル村岡 桃佳(むらおか・ももか)アルペンスキー座位女子大回転 金メダル女子滑降、女子回転 銀メダル女子スーパー大回転、女子スーパー複合 銅メダル若き力とベテランの躍動平昌パラリンピック10日間の熱き戦いPyeongChang2018ParalympicGamesReviewofTeam Japan

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