OLYMPIAN2018
19/44

19——ポーランドやフィンランドでは、葛西選手をたたえた歌があります。世界各国・地域で「レジェンド」と呼ばれる気持ちは。葛西 「レジェンド」と言われ出したのはソチオリンピック前くらいからだったと思います。海外のメディアがそう名付けてくれました。初めは「すごい言葉をつけてもらって……」と恥ずかしさもありました。日本でも発信されるようになってから、自信に満ちあふれた気持ちになり、今は本当にうれしく思っています。その呼び名にふさわしい選手になれるように、もっと努力をしたい気持ちでいます。——4年後の北京オリンピックについて、どのように考えていますか。葛西 娘が生まれ、「平昌に連れて行きたい」という強い気持ちを持ちました。今回、妻も娘も初めてオリンピックを見に来ましたが、メダルをとるところを見せられませんでした。北京オリンピックではメダルをとる姿を家族に見せたいですね。 次は僕にとって9回目のオリンピックです。僕は「9」という数字が嫌いなので、そこは通過点に、10回目のオリンピックを目指したいと思っています。レジェンドの挑戦は終わらない葛西 紀明平昌オリンピックでは8回目となるオリンピック出場を果たし、日本代表選手団の旗手も務めた。目標としていた2大会連続のメダル獲得はならなかったが、その挑戦意欲はとどまることがない。世界中から敬意をもって「レジェンド」と呼ばれる46歳のベテランの本音を聞いた。葛西 紀明(かさい・のりあき)1972年6月6日生まれ。北海道出身。92年19歳の時に初出場を果たしたアルベールビルオリンピック以来、リレハンメル、長野、ソルトレークシティー、トリノ、バンクーバー、ソチ、平昌と冬季オリンピック8大会連続出場を果たす。94年リレハンメルオリンピックでラージヒル団体銀メダル、2014年ソチオリンピックで男子ラージヒル個人銀メダル、男子ラージヒル団体銅メダルを獲得。18年平昌オリンピックでは男子ラージヒル団体6位入賞。土屋ホームスキー部所属。PyeongChang 2018Special InterviewText/Olympic Channel Photo/AFLO SPORTスキー・ジャンプNoriaki Kasai「負けず嫌い」が原動力——平昌に来てみて、どのようなお気持ちですか。葛西 100%、ハッピーです! ——46歳にして世界トップレベルのアスリート。一流でいられることの秘けつは何でしょうか。葛西 毎朝早起きして、ランニングをした後にイメージトレーニングをしていますが、秘けつは……特にないと思いますね(笑)。他人よりも自分には素晴らしい能力があると思っているのですが、そういう負けず嫌いな人が最後まで生き残っているのではないでしょうか。——もっと若い頃に知っていれば良かったと感じることや、このアドバイスのおかげで今の自分がある、と感じることはありますか。葛西 メンタル面で昔より強くなってきたと感じますが、今のメンタルの強さを若い頃から発揮できていたら、もっとメダルをとれていたと思いますね。 小さい頃からトレーニングが大好きで、どんなにきつい練習でもこなしてきました。僕が今の会社に入った2001年、フィンランド人のコーチから「休むこともトレーニングだ」と言われ、内容を組み立ててもらったんです。初めは物足りなさも感じましたが、頭の中がリフレッシュできて「こういう考えもあるんだ」と教えていただきました。今はそのことを念頭に置いてトレーニングに励んでいます。レジェンドと呼ばれて——空中を飛んでいる時の感覚とは。葛西 飛距離が出るとすごく気持ちが良くて、飛んでいる快感は言葉で表せないほどすごいものです。また、簡単にできないスポーツをしているという優越感もありますね。

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る