OLYMPIAN2017
6/40

06しみです。——競技力も上がっていますが、ライバルとの争いをどのように感じていますか。羽生 男子選手のピークは、実はそれほど早くないです。10代の選手たちが、さまざまな種類の4回転ジャンプを跳んでいて、若さが注目されやすいですが、実際には20代後半までしっかりトップで滑り続けられます。挑戦することが楽しい競技ですし、だからこそ、まだまだこんなもんじゃないと言いたいですね。もっともっと、競技全体のレベルも高くなります。まずは平昌オリンピックのときに自分が健康でいて、120パーセントの力を出し切れる状態にしておくことが今の目標ですね。より高みを目指して——羽生選手は94年生まれです。同世代のアスリートも多いと思いますが、活躍で刺激を受ける選手はいますか。羽生 北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手は、今はケガなどで苦しんでいますが、新境地を切り拓いているところにすごく憧れをもって見ています。苦しんでいる境遇も自分と重ね合わせながら、いつも応援しています。——浅田真央選手が引退を発表されました。以前、羽生選手は、日本のフィギュア界を引っ張ってきてくれたのは女子選手で、「今度は、男子が引っ張っていかないと」とおっしゃっていましたが、日本のフィギュア界をどのように感じていますか。羽生 日本では今が絶頂と言っていいくらい人気が高まっていますが、フィギュアスケートは元々マイナーなスポーツです。佐野稔さん、伊藤みどりさん、そういった方々が活躍していた時代から思い起こせば、すごくたくさんの方々に支えられているスポーツになっていると思います。それでも、競技人口を考えれば、まだまだマイナーかもしれません。 でも、皆さんがこのスポーツにすごく関心を持ってくれて応援をしてくれるようになったのは、浅田さんの活躍があったからだと思うんです。だからこそ、彼女のスケートは素晴らしかった。一人のスケーターとしてだけじゃなく、一人の人間として素晴らしかった。 誰かがそれを受け継げるというものではないと思うので、みんなで一生懸命頑張って、たくさんの方々が、「フィギュアスケートって面白いな」と思えるようにしていくことが、僕たちの使命だと思っています。——羽生選手の姿や言動を見て、影響を受けている方も多いと思います。羽生 ありがとうございます。フィギュアスケートは、タイムを争う競技や、球技のように点数を取り合う競技とルールも含めてだいぶ違いますが、最終的には、選手が演技に対してどれだけ思いを持っているかが一番出やすい競技だと思うんです、スポーツなのに。いろいろな選手の個性が出やすいというか。フィギュアスケートに携わる者としては、そうしたところも含めて楽しんでほしいと思います。 フィギュアスケートは360度どこからでも見られるエンターテインメントで、加えて技術力もないとだめで、その技術があるからこそ表現ができる。スポーツなのに芸術的でミュージカルに近いかもしれません。そこがフィギュアの面白さであり、難しさでもあります。自分で表現していく、というのは日本人向きではないかもしれませんが、選手の数だけ新しい表現が生まれるので、興味を持ってフィギュアを楽しんでくれる子どもたちが増えることは楽羽生 結弦(はにゅう・ゆづる)1994年12月7日生まれ。宮城県出身。4歳でスケートを始める。2008年全日本ジュニア選手権初優勝。09-10シーズンジュニアグランプリファイナルでは史上最年少(14歳)で総合優勝、全日本ジュニア選手権2連覇、世界ジュニア選手権優勝。12年世界選手権では初出場で銅メダル獲得。同年全日本選手権で初優勝、以後4連覇を達成。グランプリファイナルでも13年の初優勝を皮切りに以後4連覇を果たす。14年ソチオリンピックでは、新種目団体で男子ショートプログラム1位となり総合5位入賞に貢献。男子シングルでは、日本人男子初となる金メダルを獲得。同年世界選手権初優勝、17年には3大会ぶりの優勝を果たす。ANA所属。Photo/尾関 裕士

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る