OLYMPIAN2017
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11はありました。ただ、それを乗り越えた先に強い自分がいると思うと、絶対この練習をこなしてやろうという気持ちになれるんです。相手と対戦する競技ではないので、自分との戦いをテーマに取り組んでいます。——お休みのときは、どのように過ごすのが楽しいですか。髙梨 オフはほとんどないですね。遊ぶ時間といって思いつくのは、大学でお昼ご飯を食べる休憩時間くらいです。(1年飛び級で入ったため)年齢的には1個上の先輩に当たる同級生と話しながらご飯を食べるのですが、それがとても楽しいです。——大学生活は楽しめていますか。髙梨 はい。みんな、すごくよくしてくれて。周りのお姉さんたちはとても優しいです。遠征が多くてなかなか授業に出られないのですが、ノートを貸してくれたり、分からない部分を教えてくれたりしています。上下関係は厳しいところもありますが、「タメ口でいいよ」という感じで気を遣わせないようにしてくれますし、すごく優しいです。大きな期待に応えたい——いいジャンプができて負けるのと、歯がゆさの残るシーズン——オリンピック前、最後のシーズンを振り返ってみて、ご自身はどんな手応えをお持ちですか。髙梨 自分の思い通りにいかない難しいシーズンでした。平昌オリンピックに向けて、良くも悪くも学びが多く、自分の弱さを再確認できたシーズンでもあったので、しっかり改善できるように練習をしていきたいと思います。——ライバルがいいジャンプをして勝つときもあると思いますし、もどかしさを感じることもあると思いますが、髙梨選手ご自身、ワールドカップ総合優勝も果たすなど成績は十分残していると思います。髙梨 成績というよりも内容が良くなかったですね。飛んでいて、自分のジャンプができていると感じる試合は少なかったと思います。シーズン当初は、まだ飛び始めなので、この時期でこの内容なら、という感覚だったのですが、そこからずっと調子を上げていくことができませんでした。細かいミスが積み重なって自分の感覚が狂い始めていることは自分でも分かっていながら、シーズン中に直すことができませんでした。——そうした課題については、今、これを試してみようという解決方法は見えているのですか。髙梨 踏み切るまでのアプローチで、後傾のまま体重を板に乗せ切れず、テイクオフのときに自分の足で立つというよりも、上半身を跳ね返した勢いだけで飛んでしまっている感じでした。ですから、スピードも出ませんし、ジャンプの高さも出ないですし、ロスが大きかったと思います。ただ、その根本的な原因はどこかとチームの中で話し合って見えてきたので、そこを今後の課題として直していきたいと思っています。——この1年間は、そうした課題を自分の中で調整していく試行錯誤の1年間ですね。髙梨 直さなくてはいけない課題があるので、トレーニングでも特に意識をするところを決めて一つずつ直していきたいと思います。空を飛ぶ喜び——髙梨選手はこれまでにワールドカップで53勝を挙げていますが、全て覚えているものなのでしょうか。髙梨 記憶に残るものもありますし、そこまで残ってないものもあります(笑)。私はラージヒルが好きなので、オスロ(ノルウェー)や、オーベストドルフ(ドイツ)などのワールドカップはよく覚えています。ラージヒルは、滞空時間が長い分、空を飛んでいる感覚になれるんです。——そもそも、競技はどのようなきっかけで始めたのでしょうか。髙梨 兄がスキー・ジャンプをやっていて、周りにも競技をしている友達が多く、家のすぐ隣で練習をしていたので、それを見て私もやってみたいと思って始めたんです。田舎ならではかもしれませんが、そういう環境でした。——そのとき、恐怖心のようなものはなかったんですか。髙梨 ありました。みんながやっているし、何となく始めようと思ったものの、実際は怖かったですね。自分ではスタートを切れず、後ろから押されて飛んで(笑)。——それが楽しさに変わるのはいつだったのですか。髙梨 初めて飛んだときです。実際には、飛んだというよりも落ちた感じですけど、そのときに感じた浮力感は地上では味わえないものでした。それが、気持ちよくて楽しかったんです。——競技を辞めたいと思うことはなかったですか。髙梨 辞めたいと思うほどつらい練習

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