OLYMPIAN2013
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24家族とともに戦う——今大会を振り返っていかがですか。水谷 シングルスと団体戦でのメダルを獲得することができて、本当に素晴らしい大会になったと思います。——3度目の出場でしたが、北京オリンピック、ロンドンオリンピックと比べて違いはありましたか。水谷 北京オリンピックは初出場で、少しワクワクしながら臨んだ大会。世界ランキングも低かったですし、出ることで満足していました。ロンドンオリンピックのときはメダルの期待を力に変えることができず、本当に悔しい思いをしました。今回はそんなに緊張することもなく、いいパフォーマンスができました。——2回のオリンピックで得た経験で、今回一番生かされたことは。水谷 メンタルの部分です。オリンピックの舞台はメンタルが一番大事と言われてきましたし、他のどんな大会と比べてもオリンピックでのプレーは相手も自分も違うと感じました。今回は本当に最初の1球から最後の1球まで1本も気を抜かずに、そして諦めずにプレーできたと思います。——メダルを手にした瞬間はどうでしたか。水谷 オリンピックの表彰式は、テレビで見るか雑誌で見るかしかなかったので、実現できると想像していなかった。本当に奇跡のメダルだと思います。——一番の力になったものは何ですか。水谷 ロンドンの後、敗戦を引きずってどん底まで落ちました。そういう中で結婚をして、子どもが産まれて、また頑張ろうと決意したからこうやって這い上がって来られたと思います。苦しくても家族が喜んでいる姿を想像すると頑張れる。自分のためだけに戦っているときとは、また全然感情が違います。東京で夢の金メダルを——これまでは女子が注目されることが多かったですね。水谷 女子はロンドンでメダルもとって、男子もそれに負けないぞという気持ちで頑張ってきました。本当に感謝しています。(福原)愛ちゃんも石川(佳純)さんも、小学生から一緒に日本代表として、友人として、世界を相手に戦ってきたので彼女たちが活躍するのは自分のことのようにうれしい。今回、男子もオリンピックでメダルをとればこれだけ注目してもらえるんだと分かりました。——男子チームをまとめる立場でした。水谷 引っ張っていく気持ちは強かったですね。年齢的にもそうですし、オリンピックは3回目で男子の中では一番出場していますし、2人(丹羽孝希選手、吉村真晴選手)にも、「オリンピックは過去の対戦成績や世界ランキングは全く関係なく、執念や気迫が上回っている選手が勝つ。気持ちの部分で絶対に相手に負けるな」と何度も話しました。 フィジカルやテクニックではどうしても中国に劣ってしまいますが、メンタルで上回れば絶対に中国にも勝てると信じていたので、それを証明することができてよかったです。ここ5年ほど世界のトップ10でプレーしてきましたが、大きな大会でのメダルが自分にはなかった。やっと本当の意味で世界のトップ選手になれたと思います。——子どもたちに向けてメッセージを。水谷 卓球は本当に奥が深くて難しいんですけど、すごく素敵なスポーツなので、卓球でプロになろうという選手がひとりでも多く出てきてくれるとうれしいです。 卓球人口は多く、卓球で食べていける人は一握り。ただ、強い人はそれだけいろいろなものが得られることも分かってほしい。競技にも集中しつつ、テレビなどで積極的に卓球をアピールしていきたいと思います。——東京オリンピックに対する思いは。水谷 東京オリンピックが決まり、運命だと思ってそこまで絶対にやると決めたんです。リオでこうして最高の成績を残すことができ、東京では金メダルが見えてきました。金メダルをとっていないので、そこを目指したいです。中国との距離は着々と縮まってきているので、ぜひ東京で越えたいですね。水谷 隼(みずたに・じゅん)1989年6月9日生まれ。静岡県出身。天性の柔らかなボールタッチと高い身体能力をいかした、サウスポースタイルのオールラウンド型プレーヤー。全日本選手権男子シングルスでは5連覇を含め8度制覇。2009年、13年の世界選手権では男子ダブルスで銅メダルを獲得。16年リオデジャネイロオリンピックでは男子シングルス銅メダル、男子団体銀メダルを獲得。beacon.LAB所属。Interview & Text:編集部/Photo:PHOTO KISHIMOTO、編集部(Interview)Jun Mizutani卓球をもっとメジャーに水谷 隼

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