ナショナルトレーニングセンター委員会福田富昭委員長に聞く
日本のスポーツ界における味の素トレセンの意義と果たす役割
1月21日より味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)が本格的に始動した。計画段階から関わった、JOCのナショナルトレーニングセンター委員会委員長でもある福田富昭常務理事/選手強化本部長(2009年4月より副会長)に、設立の経緯から味の素トレセンの意義、役割や今後の活用計画、展望までをお聞きした。
- 目次
- 1964年東京オリンピック以前からの悲願
- 「チームジャパン」のまとまりを育てる施設
- 世界で勝つために、味の素トレセンはある
- 味の素トレセン設立を契機に、スポーツの持つ「チカラ」にもっと力を
- 素晴らしいパフォーマンスに期待してほしい
1964年東京オリンピック以前からの悲願
日本スポーツ界の悲願であった味の素トレセンが完成し、本格的に始動しました。まずは味の素トレセンへの思いや、これまでの経緯を改めてお聞かせください。
1964年の東京オリンピックの前から、諸外国がナショナルトレーニングセンター(NTC)による選手強化を行っている状況を見て、なぜ、日本にはないのかという声がスポーツ界から出ていました。それを受け、何回も構想や計画書が作成され、NTC設立委員会が発足したこともあったのですが、いずれも構想や計画書段階にとどまり、具体化するには至らなかったのです。
今から考えると、どの構想も意気込みは高いのですが、構想そのものが大き過ぎて具体性に欠けていました。何しろそれらは、トップの選手から一般の人までを対象に、さまざまな施設や機能を盛り込んでいて、まるで社会のしくみを変えるかのような計画となっていたからです。また、各競技団体が自分たちの都合を主張し、スポーツ界がひとつにまとまっていなかったことも原因に挙げられるでしょう。
それに対して今回は、スポーツ界の総意であることを示し、利用するのはトップ選手、目的は国際競技力の向上に絞って、必要な施設・設備を計画しました。それが実現に結びついた要因と考えています。
いずれにしても味の素トレセンの建設は、日本のスポーツ界にとって50年来の悲願。それが、ようやく実現することになったのです。
目前の北京オリンピックに向けた選手強化に、大いに力を発揮することが期待されます。北京に間に合うように建設するには、さまざまな調整が必要だったのではないでしょうか?
アテネオリンピックの成績報告のため首相官邸を訪ねた際に、当時の小泉純一郎首相にNTCがスポーツ界の悲願であることを説明し、早期建設を直訴したのです。小泉元首相は、これに応えて建設を確約してくださっただけでなく、当初の計画を1年前倒しして、北京オリンピックに向けた選手強化に間に合うようつくることも決断されました。
アテネオリンピックで、16個の金メダルを含めて合計37個のメダルを獲得するという好成績を残すことができたので、首相に直訴することも可能になったわけです。その意味では、選手や監督・コーチなど、関係者の努力と頑張りが味の素トレセン設立を実現させたといえますが、小泉元首相の勇気ある決断と指導力も大きかったといえます。
もっとも、370億円を超える巨費が投じられる事業でしたから、建設から供用開始に至るまでには、スポーツを管轄する文部科学省や、当初味の素トレセンの敷地を持っていた財務省をはじめ、東京都や地元自治体など、関係する官庁や機関との折衝も多く、非常にエネルギーを使いました。それだけに、無事に完成を迎えて、感慨深いものがありますね。
味の素トレセンは国立スポーツ科学センター(JISS)に隣接する形で建設されています。両者の違いを教えてください。
一言でいうと、JISSは一般の人たちも利用できるスポーツ情報・医・科学研究センターという位置づけですが、国際競技力の向上を目的に設立される味の素トレセンは、あくまでトップ選手が中心となって使用する、JOCと競技団体専用のトレーニングセンターです。しかし、年に1〜2回は地域のために開放する日を設けたいと考えています。開放日には、トップ選手と地域の皆さんとが交流する機会を設けるなど、地域に愛される施設を目指して、いくつかプランを用意するつもりです。

福田富昭
ナショナルトレーニングセンター委員会委員長
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JISSや西が丘サッカー場などとともに、日本のスポーツ界の一大拠点を形成する味の素ナショナルトレーニングセンター。

隣接したJISSとの連携でより一層の選手強化が図られる。
写真提供:フォート・キシモト
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