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2018.02.18 オリンピック

【メダリスト会見】羽生選手「本当に誇りを持ってオリンピックの金メダリストになれた」

【メダリスト会見】羽生選手「本当に誇りを持ってオリンピックの金メダリストになれた」
記者会見に出席した羽生結弦選手(左)と宇野昌磨選手(写真:アフロスポーツ)

 平昌オリンピックのスケート・フィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得し、大会2連覇を果たした羽生結弦選手と、初出場で銀メダルの宇野昌磨選手が18日、平昌JOCジャパンハウスで記者会見を行い、メダル獲得から一夜明けた心境を語りました。

【メダリスト会見】羽生選手「本当に誇りを持ってオリンピックの金メダリストになれた」
質問に答える羽生選手(写真:アフロスポーツ)

■羽生選手「やるべきことはやれた」
――メダル獲得から一夜明けて、金メダルを首にかけた今のお気持ちを教えてください。

 まず、(4年前の)ソチオリンピックの時とは違って、非常にたくさんの思いを込めてこの金メダルをとりに行きました。そして最終的に自分が思い描いていた結果になり、自分が思い描いていたメダルをかけていることが本当に幸せです。

――一般的にスポーツでは人間力が競技力に結びつくと考えられていますが、旅や勉強など、競技以外でこれから挑戦してみたいことは?

 とりあえずまだスケートをやめる気はないです。でも、先ほども言ったように夢がかなったという気持ちは絶対にありますし、やるべきことはやれたなという実感もあります。すがすがしい気分でもいます。ただ、言ってみれば、まだやりたいことはスケートの方では残っていると思います。スケート以外のことで何か(やりたいこととして)話せることと言えば……(しばらく考える)うん、いちおう今考えましたけれど、一周回ってきてやっぱりスケートのことだったので(笑)。本当に今まで人生をスケートに懸けてきて本当に良かったって、心から言えますし、これからもうちょっとだけ自分の人生をスケートに懸けたいなと思っています。

――フィギュアスケートであともう少しやってみたいこととは、(以前より意欲を語ってた)4回転アクセルもあると思いますが、それも含めてどういったことか教えてください。

 質問にも出たように、4回転アクセルはやりたいなと思っています。小さい頃の自分だったら、(挑戦したい理由は)「前人未到だから」と、多分言うと思います。でも今の僕の気持ちとしては、自分にとって最後の最後に支えてくれたのは、トリプルアクセルですし、やはりアクセルジャンプに懸けてきた思い、時間、練習、質も量もすべてがどのジャンプよりも多い。何よりも僕の恩師の都築(章一郎)先生が「アクセルは王様のジャンプだ」と言っていたので。そのアクセルジャンプを自分は得意として、そして大好きでいられることに感謝しながら、4回転アクセルを目指したいなと思っています。

――「夢がかなった」とおっしゃっていますが、ソチ大会後に「こうやっていこう」といった青写真を頭の中に描いていて、その通りにいったのでしょうか。また、もう少しスケートに(人生を)捧げるということですが、それが終わった後はどういったことをやりたいのか教えてください。

 まず、キャリアを終えてからの自分のやりたいことを。僕は、まだまだ英語はへたくそだしもっと勉強しなきゃいけないこともあるし、もちろん日本でも学ばなきゃいけないことがたくさんあると思いますが、世界中でいろいろなところを回りながら、スケートで本気で1位になりたいと思っている人に何か手助けをしたいなと思っています。僕はこうやって幸いにも最初は日本で練習して、最終的にはカナダで練習することになって、いろいろなことを学べたし、何よりも今現在のフィギュアスケートの技術や演技といった分野の中で、幸いにも一番上のところに来たと今、胸を張って言えるので、そういった経験をみんなに伝えるお仕事ができたらなと。それはコメンテーターなのかもしれないけれど、テレビというよりは直接、選手の手助けがしたいと思っています。

 4年前から今日まで(青写真通りにいったのかという質問)については、全然ですね(笑)。19歳の時に(金メダルを)とって、あれからすぐに世界選手権があって。あの時一番覚えているのは、メディアでもたくさんとり上げられて、自分もたくさん見たので覚えていますが、「一番最初にしたいことは何ですか?」(というメディアからの質問に対して)「練習、(4回転)サルコウの練習」と言いました。フリーのリベンジがしたくて臨んだ世界選手権で、サルコウの練習ばかりをしていたら、ショートで絶対の自信を持っていた4回転トウループでミスをしてしまって、非常に悔しかった。そしてフリーで何とか挽回して優勝できた。そういう記憶があります。その1番最初の試合から、(選手との衝突事故で負傷した2014年11月の)中国(杯)があって、そして手術もあって、ねんざをし……本当にケガと病気と、そういったものにずっと苦しみながらこの4年間を過ごしてきたわけですけれど、それは思い描いていなかったですね。はっきり言って、思い描けなかったですし(笑)。でも、正直に言えるのは、(昨年11月の)NHK杯でケガをするまで本当に順風満帆(まんぱん)で何もなくて、(仮にその後も)うまくいっていたとしたら多分オリンピックでは金メダルをとれていない。やっぱりそういういろいろな経験があったからこそ、いろいろな勉強ができたし、いろいろなことを学べたし、それを生かせたのが今回のケガからの復帰だと思っています。

――4回転アクセルに挑戦したいとのことですが、(先のNHK杯で負傷した)右足への負担は怖くないのか。また、どれくらいで習得できると現時点で想定していますか?

 右足の負担は正直言って、大きなものになるとは思っています。実際にここまで来るのにあたって、4回転ループが跳べたのが(平昌に)移動する前日。4回転ルッツに関してはまったくやらず、もう……トリプルルッツが跳べたのも本当にギリギリだったので、痛みとの戦いの中、何とか跳べるようになったというジャンプでした。これからそのジャンプたちをどうしていくかは分からないですけれど、4回転アクセルに関しては右足の状況を見ながら習得を目指していきたいと思っています。正直に言ってしまうと、やっぱり今、自分に若干満足してしまっているので。今幸せだから、きっと不幸がたくさん来て、きっとすぐにまたつらい時期が来るんだろうなと思っています。ただ、それは次の幸せのためのステップだと思うので、ケアも治療もリハビリも、すごくつらい時だというのは分かりますけれど、そういうものに専念できる時間が取れたらなと思っています。

――もう少し現役で滑りたいという中で、次に進むモチベーションはすぐに出てくるものでしょうか? ソチオリンピックの時は全く休まずに次のシーズンからこの連覇に向けての挑戦を続けてきましたけれど、この後も休むという選択肢はなく続けるのでしょうか?

(右の)足首次第です。(今大会でも)注射を打てれば本当は良かったですけれど、注射が打てないような部位だったので、痛み止めを何とか飲んでという感じでした。はっきり言って今、(足首の)状態がちょっと分からないです。ただ、はっきりと言えることは、痛み止めを飲まない状態では到底ジャンプが下りられる状態でもないし、跳べる状態ではないということは分かっています。なので、治療の期間がほしいとは思います。ただ、それがどれくらい長くなるのか。アイスショーとの関連もありますし、せっかく金メダルをとったからこそ、いろいろな方々にすぐに伝えたい、すぐにみんなに笑顔になってもらえるような演技をしたいというふうにも思っているので、そこは前向きに検討はしています。ただ、競技としてということを考えると、やはり治療の期間が必要だなと思っています。

 モチベーションに関しては、スケートをもうやめたいということは全くないです。何よりモチベーションはすべて4回転アクセルだけなので。もうとるものはとったり、やるべきこともやったと思っています。後は、自分が小さい頃に描いていた目標……夢ではなく目標をかなえてあげる。それだけかなと思っています。

――ケガをしてからは足の状態はどんな状態で、どこまで回復したのでしょうか? この3カ月間、どのような心理状況だったのか教えてください。

 ケガの状態については、はっきり言って詳細がよく分からない状態です。検査もちゃんとしたんですけれど、元々じん帯が損傷してしまっていた部位で、またその時(ケガをした瞬間)にやってしまった方向があまりにも複雑すぎて、簡単には(ケガの状況が)分からなかったというのもあり、いろいろな痛みが出てきてしまって、正直言ってどれがどこまで痛んでいるか、何の治療が最適なのか、ちょっと分からない状態です。まぁ、これくらいにしようかな(苦笑)。

 3カ月間のメンタルに関しては、自分の頭が先導してネガティブな方向に引っ張られることはなかったですけれど、環境、状況、状態、条件、そういった外的要因にすごくネガティブな方向に引っ張られました。やっぱりそれだけスケートにいろいろなものを懸けたし、いろいろなものを捨てたし、スケートだけでいいやって本当に思っているんで。だから、「あ、これでスケートをやめなきゃいけなくなったらどうしよう」とまでも思っていましたし、今もどうなるか分からない状態なので、少し複雑な状況でした。

 ただ、こうやってスケートを滑れて本当に幸せです。オリンピックのマークがあって、こんなにたくさんの方々に応援してもらえて。本当に本当の気持ちは、嫌われたくないってすごく思うし、いろいろな方に見られれば見られるほど、いろいろなことを話せば話すほど嫌われるし(苦笑)、いろいろなことを書かれるし、うそみたいな記事がこれからもっと出てくるんだろうなと思います。ただ、僕が話したこと、僕がつくってきた歴史、それは何一つ変わりません。自分の中で、今回は本当に誇りを持ってオリンピックの金メダリストになれたと思っているので、これからの人生、オリンピックの金メダリストとしてしっかりまっとうしたいと思います。ありがとうございました。

【メダリスト会見】羽生選手「本当に誇りを持ってオリンピックの金メダリストになれた」
宇野選手は今後に向けての課題も挙げた(写真:アフロスポーツ)

■宇野選手「やり残したことはあまりない」
――メダル獲得から一夜明けた今の気持ちを聞かせてください。

 メダルをもらってからしばらく経ちますが、変わらずオリンピックでの2位という結果にあまり実感はないですが、2位という結果はうれしいと思います。

――これからはどういう目標を持ちたいですか? しばらく休むか、すぐに競技に取り組むか教えてください。

 まだ今シーズンが終わっていないので、今日(日本に)帰るので、(3月の)世界選手権に向けてまた明日、明後日から練習に取り組んでいきたいなと思っています。今回見つかった課題は、羽生結弦選手だったり、ハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)のようなジャンプの完成度の高さというものが僕に一番足りていないと実感したので、そういったところを来シーズンに向けても、そして今季の世界選手権に向けても取り組んでいくところかなと思います。

――今回のオリンピックで何に勝って、何に負けたのか。4年に1度の大会ではあるが特別な大会ではないとおっしゃっていましたが、オリンピックで残った宿題があれば教えてください。

 オリンピックに残したものは何もないかなと思っていて。今回見つかった課題はもちろん、先ほども言ったとおりにあるんですけれど、それはオリンピックでの課題ではなくて、ひとつの試合としての、今後に必要な課題であって、やり残したことはあまりないかなと思います。

――周りの方の反応は? まず弟さんはどんな反応をされたのか? コーチやご家族ですごい反応をされた方がいたら教えてください。

 まず、弟とは全く連絡を取っていなくて、何も来ていなくて、会ったとしても何も言われないと思います。多分家族のみんなは、オリンピックで銀メダルをとったことより、オリンピックで練習してきたことを出せたということにすごく喜んでいると思いますけれど、まだ連絡はありません。多分、(自分自身が)連絡を返さないので連絡が来ないのだと思います(笑)。友達からはたくさん「おめでとう」という言葉をいただきました。(お祝いの連絡には)なるべく手短に返させていただきました。

――日本に帰ったらいろいろな人に注目されて、声をかけられることと思います。メダリストとして見られることに対してどう感じますか?

 うーん……そんなに何も変わらないかなと思います。メダリストになったからと言って何かが変わるとは思っていないですし、僕も何も変わらないですし。実際、人と会う機会も、リンクと家を移動するだけであまり(人には)会わないので、本当に日常生活は何も変わらないんじゃないかなと思います。

――自分の演技の前に他の選手の演技をご覧になったとおっしゃっていましたが、印象に残った演技、印象に残ったことがあれば教えてください。

 これは(実際には)見ていなかったので、結果を聞いてすごくうれしかったことですが、ネイサン(・チェン選手/アメリカ)がショートで思うような演技ができなかったけれど、フリーであれだけの点数、あれだけの演技をしたという結果(編注:フリーでは1位となる215.08点をマーク)を聞いた時に、今回のオリンピックで一番感動しましたね。他の選手もたくさん良い演技をしている中で、僕がやはり一番印象的で感動したのはネイサンのフリーでの演技でした。

――ネイサン選手のフリーを受けて、何か刺激を受けたことはありますか? 自分はこうしてみたいと思ったことがあれば教えてください。

 単純に僕はうれしかったし感動したという気持ちはありましたけれども、刺激といったものは特にないですね。ネイサン選手の実力が、本来ああいう演技だと僕は思っているので、僕は刺激というよりも、ショートがあまりうまくいかなかった時にフリーがうまくいったことがうれしかったです。

――「羽生結弦選手に勝つことが僕の唯一のスケートの目標」と去年から話されています。今回銀メダルになって悔しいのか、まだ羽生選手を追いかけられるワクワクがあるのか、どちらの気持ちでしょうか。また、勝てそうだなという手応えをそろそろ感じているのか教えてください。

 今回の結果について僕はあまり悔しいとは思っていなくて、実力の差が完全に結果に出たと思っていますし、追いかける立場というのはとても楽なんですけれど、いずれもう少し実力が近くなったら、もっと僅差で競い合えるような選手に早くなりたいなと思っています。ただ、やはりまだまだ僕の実力が羽生選手に劣っていると今大会中にあらためて実感しました。

――2連覇した羽生選手は今後、スケート界でどういう存在になっていくと思いますか? また宇野選手自身にとってどういった存在か、あらためて教えてください。

 これまでと変わらないのではないでしょうか。これまでもずっとトップで走っているのが、あらためてトップということを証明した試合だったと思いますし、それを追いかけ続けるということにこれからも変わりないと思います。

――今、首からかけている銀メダルは、日本に帰ったらどなたかかにかけてあげたいとか、どのように保存したいなどあれば教えてください。

 かけたい人がいればみんな、かければいいかなと(笑)。特に大事に扱おうとは思っていないので、触りたい人は触ってくださいっていう感じですし、保存方法にしても僕は家族に渡してお任せします。


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