イベント

ジュニア作文オリンピック

おまえのせいで、負けたんだ。

東京都・中野区立江古田小学校4年 窪田成悟

僕は江古田サンダースサッカークラブのゴールキーパーだ。練習試合で、十点も入れられて大負けした時、何人かが
「おまえのせいで負けたんだ。」
と、僕をせめた。僕もヘタクソだけれど、敵のFWに追いつけないDFも、点を取れないFWもヘタクソだ。キーパーがやたらにいそがしい試合で勝てるわけがない。僕は、すっかりやる気をなくしてしまった。
六年生の藤野君は、失点してもみんなが、
「ドンマイ」
と、はげましてくれると言った。それを聞いて、僕はますます落ち込んだ。何で僕だけせめられるのだろう。コーチに相談したら、
「六年位になれば、少しは相手の気持ちを思いやれるようになるけれど、三、四年はまだまだ自分のことしか考えられないからね。気にしないで言い返せ。お前がキーパーするのが、他のだれよりも良いのだから。」
と、言ってくれた。スッと気が軽くなった。
しかし、六年の試合に応援出場した時のことだ。六年生は、足が速くて、シュートも強いから、どんどん点を入れられてしまった。ハーフタイムでベンチにもどる時、
「おまえが、あそこであーすれば、あーなって勝てたんだよ。もっとまじめにやれ。」
と言われた。思わず、
「そんなに言うなら、おまえがやれよ。」
と言い返してしまった。がんばっているのに悲しかった。でも、すぐに後悔した。あいつにはできないとわかっているのに、言わなければよかった。しょげていたら、コーチが、
「前に出るなら、思いきり出る。出ないなら出ない。はっきり決めてやれ。」
と言ってくれた。僕は、くやしくて、心の中で『後は、絶対に点を取らせないぞ。』と思っていたから、後半は、思いきり前に出て、敵とぶつかっても、けられてもボールに飛びついた。そうしたら、負けたのにみんながすごくほめてくれた。うれしかった。試合の後、右足のこうが真っ赤にはれていた。
負けてくると、ふん囲気は、どん底へ向かってまっしぐらだ。そしてポジションがどんどんくずれ、ワンパターンのこうげきになる。僕の位置からはよく見える。
「おまえが、あそこであーすれば、あーなって勝てたんだよ。」
と僕の方こそ言いたい。でも、待てよ。試合中に声をかけてみようかな。「もっと右。」とか、「前に出ろ。」とか。六年生の先輩には言いにくいから、「しまっていこう。」かな。「ウォー。」と言うことができたら、カーンみたいでかっこいいけれど、はずかしくて声が出ないだろうな。四年生は、区大会でベスト四まで進んでいる。僕が守りきれば、チャンスが広がる。僕が声がけして、明るいふん囲気を作ろう。
 試合の後、いつものFWのみずきがトイレにさそってくれる。僕たちは、何も言わないで連ションする。仲間がいるから楽しいのだ。

< JOCジュニア作文オリンピック・2005入賞者発表にもどる >



ページトップへ