コラム/インタビュー

オリンピックに向けたコンディショニング

最終回 トリノ、北京へ向けて

和久貴洋(国立スポーツ科学センター)

アテネオリンピックにおいて、日本選手団は、過去最多タイの金メダル16個、そして過去最高となる37個のメダルを獲得するという歴史的な好成績を収めた。このオリンピックに向けた準備が進められるなかで、オリンピックにおけるコンディショニングについてさまざまな情報を提供することが出来たことは、我々にとって非常に光栄なことである。連載を終えるにあたって、まず、このような機会を与えていただいた日本オリンピック委員会の皆様に深く感謝したい。

さて、オリンピックという場は、これまでの我が国の国際競技力向上に向けた取組の成果を検証し、何がよかったのか、何が悪かったのかを分析する機会であるとともに、次の4年間(あるいはそれ以降)の強化方策を考えるための材料となる情報の宝庫でもある。
世界各国もまた、我が国と同様に、さまざまな準備や対策を講じて、アテネの舞台に臨んできた。オーストラリア、イギリス、中国、アメリカ、ドイツなどは、アテネの環境対策やオリンピック対策を講じて乗り込んできた。アテネの舞台のシミュレーションや暑熱対策、アテネのレースコースをシミュレーションし、レースペースの配分やそれに応じた水分補給計画を立てるなど、各国の徹底振りには学ぶところも多い。
また、ドイツでは、アテネに備えて、新しいテクノロジーを活用した競技用具の改良・開発を行うなどの準備を行っていた。

2008年のオリンピック開催国である中国は、自国開催での成功のために次世代の中心となる若手選手を起用し、これまで弱点種目とされていた種目においてもメダル獲得に成功した。次世代の育成に成功を収めたことは、2008年に向けて我々の脅威となるであろう。
アテネオリンピック後、世界各国もまた、アテネの検証と北京に向けた戦略策定に力を注いでいる。さまざまな分野で連携体制を強化し、それぞれがもつ知識や経験を交換し、相互活用を図るという取組が行われているようである。すでにある国では、夏季種目と冬季種目の連携による合同トレーニングが行われている。
こうした世界各国の動向を踏まえ、次の強化方策と計画を十分に練り、実施していくことが重要である。

一方、我々のプロジェクトは、日本オリンピック委員会医学サポート部会と共同で、アテネ日本代表選手団を対象としたコンディショニングの実態調査を実施した。すでにプロジェクトメンバーは、トリノオリンピック、さらには北京オリンピックに向けたコンディショニングに役立つ知見を見出そうと、調査結果の分析を進めている。これらの分析結果についても、のちにご紹介できる機会があれば幸いである。

これまでの連載を通して、オリンピックに向けたコンディショニングについての知識や経験を、分野や立場、種目を超えて交換することのできる場を設定することが、我々に課せられた次の課題かもしれないと考えている。

(2004.10.28 掲載)


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