プロテインの効果的な使い方
第3のプロテインは、余計なカロリーを摂らずにタンパク質だけを摂るための食品だ。牛乳あるいは大豆を原料にして、脱脂してパウダー状にしたものが多い。スキムミルクのようなものだ。このパウダーを牛乳や水などの飲み物に溶かして飲むが、消化・吸収が他のタンパク質の豊富な食品よりも速い。
図2は、アメリカで行われた研究データであるが、運動直後と3時間後にプロテイン飲料を摂取させたところ、直後のほうが、筋肉へのグルコースの取り込みも、筋でのタンパク質の合成量も高くなったことを示している。グルコースはブドウ糖の英語で、これを取り込むと筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄積することになる。
そして、筋タンパクの合成は、筋肉をつくることそのものだ。図を見ると、タイミングがとても重要であることがわかる。運動直後にタンパク質を摂取するのが良いのだが、肉などのおかずを食べるわけにはいかないので、牛乳にプロテインを混ぜて飲むことで、筋肉の材料補給をするのである。
この方法で、カラダづくりに成功した例を図3に示す。これは女子高校選手のデータだが、運動後とともに、夜寝る前にプロテインを飲んだ。そのココロは、夜中に熟睡して成長ホルモンが活発に分泌される時に、利用できるタンパク質が体内にあるように狙ったものである。
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●高校女子バスケットボール選手に栄養調査と栄養指導を行ない、1日に2回プロテインを飲むことにより、一般人の約2倍のタンパク質摂取を目指した。 ●13ヵ月間の取り組みの結果、チームの平均体重が3kg増加したが、これは除脂肪体重の3kg増加によるものであり、筋力も著しく向上した。 ●試合日の栄養摂取についても教育により改善が図られ、結果的に競技力も向上した(県下ベスト8から県大会優勝、インターハイ初出場へ)。 |
タンパク質だけでいいのか
タンパク質は、筋肉だけでなく、肝臓などの内臓も、血液も、骨も、髪の毛も爪も皮膚もつくっている。さらに酵素もホルモンもつくる。そして、免疫の本体もタンパク質なので、不足すると感染症にかかりやすくなる。風邪も引いてしまうのだ。
でも、タンパク質だけでもいけない。トレーニングの時に、体内に充分なエネルギー、つまり糖質がないと、自分の筋肉を分解してタンパク質にし、さらに分解してアミノ酸にしてエネルギーとして燃やしてしまうということが起こる。
いくらタンパク質を補給しても、糖質がないと筋肉は燃えてしまう。これではいけない。つけた筋肉を燃やしていては効率が悪い。3歩あるいて2歩下がるようなものだ。
だから、すきっ腹でトレーニングしてはいけない。食事から何時間も経っているなら、バナナでもまんじゅうでもいいから、少し糖質補給をしておこう。
ほかにもビタミンやカルシウムなどが必要だが、今回は糖質、と念を押しておく。いわゆる低炭水化物ダイエットは、どうも筋トレには向かないのである。
杉浦 克己(すぎうら かつみ)
日本オリンピック委員会 情報・医・科学専門委員会科学サポート部会員。ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ所長。明治製菓株式会社に勤務するかたわら、日本陸上競技連盟科学委員、全日本柔道連盟科学研究部員や2002年日韓ワールドカップ栄養担当を務めるなど、専門分野で幅広く活動している。1998年にスポーツ栄養の研究で東京大学より学術博士を取得。近著に『勝つカラダをつくる!プロテインBOOK(スキージャーナル 2000)』がある。