日本オリンピック委員会(JOC)は12月13日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、「平成28年度JOCアスリート専門部会・NFアスリート委員会合同フォーラム」を開催しました。
アスリートを取り巻く環境が日々変化する中、アスリートはこの変化に対応する力をどのように身につけていくのか、またスポーツ界の未来を見据えてどのように関わっていくのかなど、アスリートの果たす役割は大きなものがあります。JOCは、それらの役割を果たすためにアスリートの声をくみ上げ、組織の意思決定に意見を反映できる仕組みの構築と、加盟競技団体(NF)とアスリートの意思疎通が行われる環境を整えることが不可欠と考え、NFにアスリート委員会の設置を促しています。本フォーラムではアスリート委員会の現状と課題についてNF間で共有し、より良いアスリート委員会の活動に向けた意見交換を行うことを目的としています。
フォーラムにはJOC役員、JOCアスリート専門部会、NFアスリート委員会などの関係者が参加しました。
最初に小風明JOC理事が開会のあいさつに立ち、2016年の漢字が「金」に決まったことを受け、「金という字が選ばれたのは、それだけ国民のスポーツに対する関心が、オリンピックイヤー、パラリンピックイヤーで高まっているということの表れです。国際大会での日本人選手の活躍は、私たちに誇りと勇気を与えてくれました。それによって日本社会全体の活力が増してきていると思います」と感想を述べました。その上で、「アスリートの発信力、影響力が非常に高まっています。それだけにアスリートの保護、支援も大事ですが、より積極的に見てみると、各競技団体の運営にあたって、アスリートの考え、意見がいかに反映されるかということが、今まさに重要になっているのではないかと思います」と、アスリート委員会の必要性を訴えました。
引き続き、小風理事が「JOCアスリート委員会の設置について」と題し、アスリート委員会設置への経緯報告と説明を行いました。
■各NFのアスリート委員会の現状と課題
フォーラムの第2部では「NFアスリート委員会の現状と課題」と題し、各NFが10のグループに分かれてディスカッションを行い、グループごとにまとめを発表しました。
最初に、荒木田裕子アスリート専門部会長が登壇し、現在JOCに加盟しているNF63団体のうちアスリート委員会が設置されているのが28団体であることを報告。1年前に比べて10団体増えていますが、「おそらく皆さん、アスリート委員会に対して試行錯誤だと思います」と荒木田部会長は現状を述べると、「具体的にお互いの活動や意見を共有し、最後にそれらを集約して、今後のNFにおけるアスリート委員会の活動の役に立てていただきたい。そして皆さんで色んなことを共有して一歩ずつ前に進んでいく活動にしていきたいと思います」と、今回のグループディスカッションの目的を説明しました。また、JOCアスリート専門部会員の伊藤華英さん、小塚崇彦さんもそれぞれグループに参加し、広く意見を交わしました。
グループディスカッションでは、アスリート委員会を設置しているNF、まだ設置していないNFがそれぞれ活動内容や委員設置の利点、浮き彫りになっている課題などについて意見交換。ただ、現状はアスリート委員会を設置していないNFの方が多く、また設置しているNFであっても冒頭で荒木田部会長が指摘していた通り、まだまだ試行錯誤の段階。各グループの発表でも「どのような活動をしていけばいいのか」「日本全国、または海外の各拠点に散らばっている選手の意見をどう集約すればいいのか」「プロとアマが混在する競技はどのように委員会を運営すればいいのか」といった課題の声が多く聞かれました。その一方で、長い経験を持つ日本トライアスロン連合、日本卓球協会のアスリート委員会の運営方法や、冊子を発行して活動内容を伝えている体操、水泳などの活動には関心の声が上がり、各NF担当者は熱心にメモを取っていました。
各グループの発表が全て終わり、荒木田部会長は「1つ誤解しないでいただきたいのは、アスリート委員会を通してアスリートの意見をとにかく理事会に持っていこうということではなくて、自分たちアスリートがいろんなことを自分たちできっちりやっていこう、ということも1つの活動だと思います。自分たちで勉強しながら、情報収集しながら活動していくことも必要だと思いました」と、今後のアスリート委員会の活動方針例を提案。そして「ゆくゆくは全競技団体のアスリート委員会の皆さんが集って、いろんな話し合いができるようになればと思います。またパラアスリートの皆さんも委員会を作って活動を行っていますので、足並みが揃うような活動で2020年に向かっていきたい」と締めくくりました。
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