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2014.11.19 その他活動

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
藤原庸介JOC理事のあいさつ【写真:アフロスポーツ】
第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
石井周悦秋田市副市長のあいさつ【写真:アフロスポーツ】

 日本オリンピック委員会(JOC)は5日、JOCパートナー都市である秋田県、秋田市のにぎわい交流館AUで「第10回JOCスポーツと環境・地域セミナー」を開催しました。本セミナーはスポーツ界における地球環境保全の必要性について考え、その活動をどのように実践に移していくかを学ぶことを目的に平成17年度からJOCパートナー都市で行われ、今年度は地元のスポーツ関係者ら170名が参加しました。

 はじめに、藤原庸介JOC理事があいさつに立ち、スポーツと環境の関わりを考えるきっかけとなったのが1972年の札幌オリンピックであったことや、オリンピック冬季大会に立候補できる環境を持つ都市が減っている現状を説明。「秋田市は環境について非常に面白い試みをいろいろとやっておられ、日本では環境における先進都市ではないかと思います。本日ご参加いただいた皆様にとって、有意義な意見交換の場となりますことを願っております」と参加者に呼びかけました。

 続いて、秋田市の石井周悦副市長が登壇。「秋田市では平成20年に『はずむスポーツ都市宣言』を行い、市民の誰もがいつでも、どこでも、いつまでもスポーツを楽しむことができるよう、様々な環境整備に取り組んでいます。本市にはプロスポーツチームが3つあり、多くの市民が応援していますが、チームの皆様には地域貢献活動、環境活動のみならず多大なお力添えをいただいております。スポーツを通じた環境に対するメッセージが非常に大きなものとなるよう期待しています」と述べました。

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
基調対談では、トップアスリートとして活躍してきた3名のオリンピアンが参加【写真:アフロスポーツ】
第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
JOCスポーツ環境アンバサダーを務める大林素子さん(バレーボール)【写真:アフロスポーツ】

■アスリートの目線から環境問題を考える

 第1部は、JOCスポーツ環境アンバサダーの大林素子さん(バレーボール)と宮下純一さん(競泳)そして仁川アジア大会金メダリストの上田藍選手(トライアスロン)が登場。JOCスポーツ環境専門部会長を務める大塚眞一郎理事のコーディネートで、「アスリートから見た環境問題」というテーマで基調対談が行われました。

 まず、それぞれの競技団体で実施している環境啓発活動をゲストの3名が説明しました。大林さんは、日本国内で不要となったボールやネットなどの用具を集めてそれを必要とする海外の団体などに寄付をしたり、バッグや財布などの素材として再利用する「バレーボールバンク」を紹介。宮下さんは日本水泳連盟の取り組みとして、エコ活動に関するポスターデザインを公募する「エココンテスト」の事例を挙げるとともに、「生きていく中で必要な水を使うスポーツとして、水の大切さを小さいころから教育することが必要」と述べました。現役アスリートの上田さんは、日本選手権が行われる東京・お台場で「グリーントライアスロン」と銘打ったビーチの清掃活動をはじめ、海や湖の水質改善に向けた活動をお客さんに知らせていく必要性を訴えました。

 大林さんは、地球温暖化がスポーツに及ぼす影響について「温暖化で海面が上昇すると、ビーチバレーができる会場が無くなってしまうのではないかという危機感もありますし、現在では砂浜が熱すぎて、選手は靴下を2枚重ね履きして練習しています」と屋外スポーツであるビーチバレーの現状を明らかにしました。また、エコに関する取り組みの例として、オリンピックの応援グッズを空き缶で手作りした経験を披露。「そういうところからリサイクルを考えるのもありではないでしょうか」と述べ、「リサイクルグッズは地域から提案していただいて東京で採用するのもありなので、秋田からもぜひご提案いただければと思います」とアピールしました。

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
大林さんらとともに環境アンバサダーを務める宮下純一さん(競泳)【写真:アフロスポーツ】
第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
2020年東京オリンピック出場を見据えている現役の上田藍選手(トライアスロン)【写真:アフロスポーツ】

 宮下さんは、「選手村の食堂は選手がいつ大勢来てもいいように、24時間体制で食事が並んでいますが、結構な量が残っていたのが気になりました。また、ゴミ箱もひとつしかなくて分別されていないことが多かった」と現役時代の体験を振り返り、「入村時にルールを徹底することや、表示の多言語対応も必要。スタッフがオリンピアンに対して注意できないと困るので、気兼ねなく言える環境作りも大切です」と語りました。環境問題に取り組む各自治体や団体に対しては「皆さんから『私たちはこんなことをしてこんな成果が出ました』と良い点をアピールされることが多いのですが、『ここができなくて困っているのですが、どうしたらいいですか?』と相談していただいたほうがアドバイスしやすいので、ぜひ改善が必要な点などを聞かせてください」とメッセージを送りました。

 競技をする上でさまざまな自然条件に左右されることが多い上田さんは、自身が現在拠点にしている千葉県の手賀沼がトライアスロンの大会を誘致するために水質改善を行ってきた事例を紹介。「手賀沼は1970年代全国でもワースト1位と言われるくらい汚かったのですが、町の人たちがトライアスロンに興味を持って努力したことで、2006年に大会を開けるまでの水質になりました。1つ1つの積み重ねでこうしたことも実現できるので、行動に移す人やそれに理解を示す人がつながっていければ」と、今後の展開に期待を寄せました。また、現役アスリートによるコメントの影響力の高さに触れ、「東京は海外と比較してすごく街がきれいなので、オリンピックはそこをPRする絶好のチャンスだと思います。なぜきれいなのかを1人1人説明できるようにしたいですね」と語りました。

 大塚理事は地球温暖化対策の一環である「カーボン・オフセット」について説明を行いました。カーボン・オフセットとは、事業活動や日常生活で排出される温室効果ガスについて削減努力を行った上で、どうしても削減できなかった温室効果ガス排出量を、他の場所で行われた温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)でオフセット(埋め合わせ)し、自らの排出に責任を持つ取り組みのこと。

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
セミナーのコーディネート役を務めた大塚眞一郎JOC理事【写真:アフロスポーツ】
第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
第2部ではまず秋田市の環境活動について発表が行われた【写真:アフロスポーツ】

「このシステムを分かりやすくできればもっと認知が広がるかもしれません。今後、環境庁がさらに推進していくと思うので、皆様も意識していただきたいと思います」と述べ、「今回のセミナーや配布資料を、スポーツと環境について子どもたちに話す機会に利用してください」と総括しました。

■秋田市における環境活動を紹介

 第2部では、秋田市における「スポーツを通した環境保全の啓発・実践活動」に関してプレゼンテーションが行われました。まず、秋田市環境部環境総務課地球温暖化対策担当の三浦勉課長が登壇。「環境立市秋田の実現」を成長戦略の1つとして掲げ、「秋田市地球温暖化対策実行計画」と合わせて策定した基本方針に沿って同市が取り組む環境活動を紹介しました。

 基本方針は、(1)環境にやさしいライフスタイル・ワークスタイルの推進、(2)低炭素型まちづくりの推進、(3)循環型社会の構築、(4)再生可能エネルギーの普及および利用推進、(5)環境と経済が好循環する社会システムの構築、の5つ。三浦課長は、自動車を使わず徒歩や路線バス、自転車での通勤を奨励する「エコ通勤」や、市民のエコ活動に応じてポイントを付与し、取得ポイントに応じてエコ関連賞品と交換できる「e-市民認証システム」といった暮らしに直結する取り組みから、市有施設の省エネルギー化を進める「あきたスマートシティ・プロジェクト」、住宅用太陽光発電や木質バイオマス(木材から作る燃料)の利用促進に関する補助、メガソーラー発電所の稼動など大規模な事業まで、さまざまな事例を説明しました。

第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
秋田県初のプロスポーツチームとして発足し5年目を迎えた秋田ノーザンハピネッツ。選手も地域活動に積極的に参加している【写真:アフロスポーツ】
第10回JOCスポーツと環境・地域セミナーを秋田県、秋田市で開催
(前列左から)大塚理事、石井副市長、藤原理事、(後列左から)三浦課長、大林さん、宮下さん、上田選手、高畠専務【写真:アフロスポーツ】

 続いて、バスケットボールbjリーグの秋田ノーザンハピネッツを運営する秋田プロバスケットボールクラブ株式会社の高畠靖明専務取締役が、チームが行っている環境活動を紹介。はじめにチームが掲げる3つの理念と7つのビジョンについて説明し、「秋田から全国へ、世界への情報発信源に」「地元密着主義で誇れる秋田を未来へつなぐ」という2つのビジョンが環境保全に当てはまると述べました。

 高畠専務は試合会場における例として、ホーム会場に設置したごみ箱に地元企業の協力を得て秋田杉の間伐材合板を使用していることや、ホームゲーム8試合でウォームシェア(家庭や近所の人々が一カ所に集まって過ごすことでエネルギー消費を減らす取り組み)を実施し、秋田市全域で達成した約11.6トンのCO2削減に貢献したと同時に、試合会場がウォームシェアスポットとしてコミュニティの醸成に寄与したことを挙げました。また、秋田県内での活動事例として、地域の清掃活動や広葉樹の植樹活動に選手が参加しているところを紹介し、今後も「県民球団」という意識を強く持ち、地域の環境保全のために地元企業や住民と一緒になって活動していきたいとの意向を示しました。

 最後にコーディネート役を務めた大塚理事が閉会あいさつを行い、「オリンピックの目的は世界平和です。世界を平和にすることは、環境問題と切り離せないところにあると認識しておりますので、オリンピックのひとつの柱がこの環境であるということを改めて皆様にご理解いただければと思います」と語りました。そして、「秋田市におかれましては、地域の活動をベースにして、ぜひとも環境保全の“リーダー都市”になっていただき、オールジャパンとして2020年、またそれ以降の日本の発展のためにご一緒できればと思います」と述べ、セミナーを締めくくりました。

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