OLYMPIAN2017
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35せんでした。(アジア選手権の)準々決勝は、厳しい状況から挽回して逆転で勝てたんですけど、準決勝と決勝は完全に自分のペースでできましたし、勝てるという自信が持てた。そこが全く違いました。——リオデジャネイロオリンピックでは補欠として悔しい思いをされたと思います。その後、卓球スタイルを攻撃的に変え、中国へ武者修行に行かれました。自分の中で何か変化を感じていますか。平野 はい。中国のスーパーリーグで今回破った3人の選手全てと対戦しましたし、中国ナショナルチームの選手と一緒に生活もしました。以前は中国の選手と当たるだけで、「強くて怖いな」と感じていましたが、中国人選手も緊張することが分かりました。「あ、意外と普通の人間なんだ」と身近に感じられたので、試合をするときに怖くなくなりました。卓球のスタイルを変えたこと以上に、そこが大きかった気がします。——世界の卓球界に「平野美宇」という名前が知れ渡りました。今度は、追われる立場になるプレッシャーもありますね。平野 中国の選手たちに1回勝ちましたが、何回も勝たないと完全に超えたとは言えないので、まだまだ向かって行く立場かなと思います。でも、相手は今回の石川選手のように「絶対に勝ってやる」という気持ちで向かってくると思うので、(5月の)世界選手権に向けてしっかり準備したいです。同世代ライバルの存在——卓球を続けてきて、始めた当時と今で卓球の楽しさに変化はありますか。平野 3歳で競技を始めた頃は、コーチを務めていた母とただ一緒にいられることが楽しかったんです。でも、今の楽しさは違います。練習を頑張ったら成績として返ってくる感覚もあるし、でもその頑張り方が間違っていたら結果はついてこない。そこが難しいけど楽しいところです。勝っていろいろな方に喜んでもらえるのはうれしいですし、強い選手に勝てると楽しい。その喜びがあるからつらさに耐えらことは、自分が成績を出せているからだと思うので、ポジティブに考えるとうれしいです。東京オリンピックで金メダルを取るためには日本で一番にならないといけないですし、中国選手にも勝たないといけないので、とにかく全員を倒すつもりでやりたいです。対中国選手への手応え——アジア選手権では、本当に強い中国人選手3人を相手に、劇的な勝利を重ねました。ご自身はどんな感覚でしたか。平野 誕生日だった4月14日の準々決勝、その相手が(世界ランキング1位の)丁寧選手でした。「誕生日まで試合をして終わりだな」と思っていたので(笑)、思い切ってやりました。いつもだったら負けたらしょうがないという感じですし、今回も(ゲームカウント)0|2から(第3ゲームでカウント)5|9で負けていて厳しいかなと思いました。でもそこで、絶対に負けたくないと思ってやったら勝つことができました。——翌日の準決勝、決勝はどんな気持ちで戦ったのですか。平野 丁寧選手に勝ったから優勝できるという雰囲気もありましたが、「中国選手相手に簡単に勝てるわけがない」とも思いました。勢いに乗って思い切りやったら勝てたので、すごく良かったです。——戦いの中で、自分の力になった言葉はありましたか。平野 「丁寧選手に勝ったからには勝つしかない」と考えていましたが、監督に「中国選手が相手なんだから自分の力を出し切ればいい」と言われて、そこからは自分の力を出し切って勝とうと思えるようになりました。そもそも力を出し切らないと勝てませんが、「出し切って勝つ」ということに集中できた。自分の力も出して、その上で勝とうとする気持ちも忘れず、両方できたことが良かったと思います。——これまで中国選手と戦ってきたときと何が違ったのでしょうか。平野 今までは完全に相手ペースで勝てる気がしまれる、という感じです。——競技をどんどん好きになっている感じがします。平野 そうでもないですよ(笑)。でも、昔よりは好きかなとは思います。ただ、普通に学校に行って遊んで生活していたら、もう少し楽というか、ここまで忙しくはなかったかなとも思います。——エリートアカデミーでの生活はいかがですか。平野 やはり同じ卓球の子と話すことが多いですけど、他競技の子とも喋りますよ。レスリングの須﨑優衣選手なども、アカデミーに入ったのが同時期なのでよく話しますね。——伊藤美誠選手との関係もとても注目されていますが、ライバルの存在はどう感じていますか。平野 同世代のレベルがすごく高くて、小さい頃は「この学年じゃない方が良かったのに」とか「もう少し違う時代に生まれていたらずっと優勝できたんじゃないか」と思ったこともありました。でも、そうではなくて、この学年に生まれて切磋琢磨できたからこそ、こうして今回中国人選手に勝つことができたし、みんなが強くなれたんじゃないかなと。だから今は、この学年に生まれて恵まれているなと思うようになりました。——昨年のリオデジャネイロオリンピックでは、試平野 美宇(ひらの・みう)2000年4月14日生まれ。山梨県出身。3歳で卓球を始め、小学5年で全日本ジュニア準優勝。13年、中学1年でJOCエリートアカデミーに入校。幼少時よりダブルスを組む同い年の伊藤美誠選手とのペアでITTF ワールドツアーに参戦。14年ドイツオープンでは女子ダブルスで史上最年少優勝、同年末のグランドファイナルでも優勝を果たす。16年リオデジャネイロオリンピックでは日本代表のリザーブメンバーとして帯同。16年10月の女子ワールドカップで史上最年少優勝。17年1月の全日本選手権女子シングルスで史上最年少優勝。同年アジア選手権では、世界ランキング上位の中国選手を次々と破り日本人選手21年ぶりとなる女子シングルス優勝を果たす。大原学園高校2年。JOCエリートアカデミー所属。合に出られなかったつらさもあって「すごく悔しかった」とおっしゃっていました。平野選手はオリンピックという大会をどのようにとらえていますか。平野 ロンドンオリンピックは観客席で見ていました。「オリンピックはすごいな」「出たいな」というくらいでしたが、リオデジャネイロオリンピックで補欠として行くとやはり違って。練習場など選手たちの行動も見えますし、改めて、スポーツの中で一番大きな大会で、影響力や名誉もすごくあって、「これがオリンピックなんだ」と実感できました。悔しさも大きかったですけど、その分「いいな」と思えました。——注目される分練習以外の部分で力を注がないといけないことも増えて大変だと思うのですが、今、強化していきたい点は。平野 注目していただくのはうれしいことですが、しっかりと練習もしないといけないのでバランスが取れるように気をつけます。まずは、フットワークなどを中心に、全体的にレベルアップしたいです。——2020年東京オリンピックに向けて、目標を教えてください。平野 東京オリンピックでは金メダルを2個、シングルス・団体両方で取りたいです。頑張ります!Road to Tokyo 2020Photo/Xinhua/AFLO

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