OLYMPIAN2017
24/40

24カーリングに感謝——日本代表選手団の主将として出場した札幌アジア大会を振り返っていかがでしたか。本橋 試合ではあまり緊張しないんですが、選手宣誓はしっかり務めないといけないなと思いました。またホスト国としてやる気を感じた大会で、プレッシャーはありました。——本橋選手やチームメートの中で変化した部分はありますか。本橋 2回経験しているオリンピックからブランクもあったので、久々に日本代表選手団の一員になって、私自身もビックリしたのは、「このチームを平昌に連れて行きたい」という気持ちが芽生えたこと。それが大きかったですね。オリンピック前のシーズンを乗り越えた人にしか味わえない楽しさがオリンピックにはあります。今までは使命感だったのが、今は心からあの舞台でプレーしたいなと思えているので、やっと地に足がついてきたという感じがします。——今大会の後に「カーリングが好きなんだと実感した」と話されていました。本橋 産休を終えて、年齢の違うメンバーと同じ目標に向かって、真剣に話して、泣いて、笑ってという、そんな時間って人生の中でどれだけあるんだろうと考えました。そのとき、カーリングに自分の人生を育ててもらったという感謝の気持ちが芽生えてきました。考えるカーリング——2度のオリンピックの中で印象に残っている出来事はありますか。本橋 トリノとバンクーバーで金メダルをとったスウェーデンチームが、今のチームづくりの原点になっています。チームの雰囲気が、初戦から女王としての、自信と信頼でできているようなチームだったんです。私たちは全力なのに向こうはなぜか余裕があるというか、見据えている先が違うなと思って焦りましたね。同じチームでオリンピック連覇を果たしましたが、ただ勝つためのチームじゃなくて、みんなで支え合うチームをつくらないといけない。彼女たちを見ていて、このキャプテンには勝てないと思わされました。——スウェーデンチームが今のチームづくりの原点とのことですが、2010年にロコ・ソラーレ北見を結成した当時の思い出を教えてください。本橋 カーリングを辞めようかと迷っていた時期だったと思います。バンクーバーが終わったらもう一度地元の北海道に戻ろうと心に決めていました。好きで始めたカーリングを辞めるなら好きなままで終わりたいと思って。チームのスタイルとしても、個々のキャラクターが際立ったチームをつくりたいなと思っていました。——本橋選手が日頃からチーム内で心掛けていることはありますか。本橋 個々の能力は自由に発揮させるようにしています。チームに必要なのは選手5人とコーチ、スタッフの考え。意見が言えなくなってしまうチームは成長しないと思います。発言できる空気をつくり出したり、他人の意見を一回飲み込んで、それを熟考したりできるメンバーが集まったのは、強みだなと思います。また、夢を追うのは楽しいということをメンバーには忘れてほしくないですね。——本橋選手から見たカーリングの面白さは何でしょう。本橋 自分の生き様を表現できるのもカーリングの魅力だと思います。また、チームの5人中4人が氷上でプレーできて、個々のキャラクターがすごく浮き彫りになるような競技なので、メンバーへの信頼感がそのままショットに直結するスポーツです。体格差がそんなに影響しないので、自分のスキルとハートと能力で戦えるところが面白いところだと思います。——平昌オリンピックに向けて、改めて抱負をお聞かせください。本橋 (準優勝した)全日本選手権で泣いているメンバーを見て、もう泣かせたくないと思ったので、次は笑って平昌のスタートラインに立てるようにしたいですね。コーチが私たちに「考えるカーリング」を教えてくれたので、それが身についていることをプレーで証明したいです。笑顔が似合うチームなので、メンバーが笑って、そしてお互いの手を取り合って戦いたいと思います。本橋 麻里(もとはし・まり)1986年6月10日生まれ。北海道出身。チーム青森として2006年トリノオリンピック初出場。10年バンクーバーオリンピックでは8位入賞に貢献した。同年、チーム青森を脱退し、ロコ・ソラーレ北見を結成。結婚・出産を経て、16年12月に現役復帰。17年2月の札幌アジア大会では銅メダルを獲得。出場権を獲得している平昌オリンピックへの出場チームは、9月の代表決定戦後に決定。NTTラーニングシステムズ(株)所属。手を取り合い笑顔で平昌へAthlete‘s Voice2017 SAPPORO ASIAN WINTER GAMESText/編集部本橋 麻里カーリングMari MotohashiPhoto/PHOTO KISHIMOTOPhoto/PHOTO KISHIMOTO

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る