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2016.05.02 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
プレゼンを行った7選手。後列左から小田選手、村上選手、大石選手、倉林選手、前列左から木村選手、林選手、吉田選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
星野一朗JOC理事(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は4月18日、味の素ナショナルトレーニングセンターで、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに75社/団体103名(2016年4月18日時点)の採用が決まりました。
 今回の説明会は、新経済連盟の会員を対象に行われ、31社45名が参加しました。

 最初に主催者を代表し、JOCの星野一朗理事があいさつに立ちました。星野理事は冒頭に熊本地震で被災された方々にお悔やみとお見舞いを述べたあと、「この3月を持ちましてアスナビが開始してから100人目の採用が決まりました。現在75社103名のトップアスリートが採用され、皆様方のサポートを受けて競技生活を行っております。それでもまだ取り巻く環境に苦しみ、明日の練習もままならない選手が数多く存在していることもまた事実です。本日は2018年の平昌冬季オリンピック、そして4年後の東京オリンピック・パラリンピックで主役になる可能性を秘めた選手7名が登壇します。未来のメダリストを目指す諸君のサポートをしていただければと心より願っています」と話しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
新経済連盟の植野伸一幹事(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
テクマトリックス株式会社の由利孝代表取締役社長が自社の事例を紹介(写真:アフロスポーツ)

 続いて新経済連盟の植野伸一幹事が「採用していただいた企業の方々からは、アスリート採用について、社員みんなでアスリートを応援することで一体感が増していくということや、選手の努力する姿が社員にとても強い影響力を与えるということ、社会貢献度の高い企業であるという評価を形成することができるといったポジティブな意見をたくさんいただいています。今日は会員各社の皆様に、アスリートの皆様、そしてJOCの皆様と直接お話ししていただきまして、何かを感じていただければと思います」とあいさつしました。

 次に八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターが、雇用形態や給与水準、勤務スケジュール、配属部署、国際大会での社名の使用などの概要を、資料をもとに説明しました。

 続けて行われた採用事例紹介では、フェンシングの下大川綾華選手を採用したテクマトリックス株式会社の由利孝代表取締役社長が採用の経緯と勤務状況、会社にもたらす影響について説明を行いました。
 下大川選手はアスナビの初年度に採用されたうちの1人。まだまだ採用事例の少ない時期で、由利社長も当初はアスリート採用は「お金がかかるという印象を持っていた」と明かしました。しかしアスナビの制度の説明を聞いていくうちに、「社員としての採用なのでそれならば可能だと。知名度は低いけれど、国際的に頑張っているスポーツを応援したくてフェンシングに興味を持ちました。下大川選手とは個別の面談もさせていただきましたが、素直で努力家で人柄が良かったので採用することにしました」と採用の経緯を説明。下大川選手が出社するのは月に数回ではあるものの、「国際大会の報告を常に書いてもらって社内に発表しています。目標から逆算して取り組むところなどはビジネスでも同じで、その頑張りをみんなも参考にしてもらいたい」と会社における貢献度を強調。「遠征費など、社員プラスアルファの費用はあるが、貢献してくれていることを考えれば、われわれのような企業でも採用が可能です」と、参加企業に対してアスリート採用の拡大を呼びかけました。

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
北京・ロンドンの両オリンピックに出場した朝日健太郎さん(写真:アフロスポーツ)

 次に、オリンピアンからの応援メッセージとして、ビーチバレーボールで北京・ロンドンの両オリンピックに出場した朝日健太郎さんが登壇。朝日さんもアスナビを活用して企業への就職が決まった1人で、「アスナビを通して株式会社フォーバルにご縁をいただき、ロンドンオリンピックに行けるかどうかというところで、企業のバックアップをいただいて最後まで走り切ることができました」と採用企業とアスナビへ感謝の言葉を述べ、「最も会社に貢献ができたのはロンドンオリンピックに出たことで、日本で行われた最終予選には社を挙げてみんなで応援に来てくれました」と現役時代の会社貢献について言及しました。
 また、引退後については、「アスリートは世界に挑戦している姿に価値があり、私は日本一を取っていたのでその価値を認めていただいていたのだと思います。だから、引退して3年半ほど経ちましたが、最初に取り掛かったのは社内研修で、そこではプロ意識を話させていただきました。幹部候補の方の研修でも話をさせてもらったり、会社説明会にも積極的に出ていっています」と現在の業務について説明。最後に、「私がオリンピック出場を決めたときのフォーバルの盛り上がりは異常でした。ぜひそういう未知の体験をこのアスリートの皆さんと共有していただきたい」と後輩たちの採用を訴えました。

 最後に就職希望アスリート7名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、デモンストレーションを行ったりと、それぞれが自身の思いをアピール。また、説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、懇談会が行われました。

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
大石利樹選手(左)と吉田朱音選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
林優季選手(右)と木村沙耶佳選手(写真:アフロスポーツ)

■大石利樹選手(フェンシング)

「目標は東京オリンピックで金メダルを取ることです。大柄でフィジカルの強い外国人選手に勝つためには相手の倍以上動く必要があり、私は試合の終盤になるにつれて体力が切れて逆転されることがありました。そのため、現在はフィジカル強化を重点的に行っています。また、最高のパフォーマンスを維持するために、ウォーミングアップの改善など勝つために細かいところまで追求するようにしています。
 目標達成のために必要なことを分析する力、困難なことも忍耐強く続けることができる継続力は私の強みであり、企業で生かすことができると思います。オリンピックに出場するには国際大会に出場して世界ランキングを上げる必要があります。そのためには企業のサポートが不可欠です。私は常に向上心を持って競技に取り組んできました。採用いただける企業でも何ができるか自ら考えて行動していきたいと思います」

■吉田朱音選手(ウエイトリフティング)

「ウエイトリフティングの魅力は頑張れば頑張るほど成果が記録として見えることです。昨日まで上がらなかった重量が上がるときのなんとも言えない達成感、それが次へのモチベーションをかき立ててくれます。私は小さいころは自発的に何かをするような子供ではなかったのですが、ウエイトリフティングを始めてからはもっと強くなりたいという意志が出て、練習をするようになりました。自分でも変わったなと思います。
 栄養面を考えて捕食を工夫したり、けがをしてもただ治療を受けるだけではなく、自分でそのけがに対してどこまでアプローチできるかを聞いて実施してきました。この自己管理能力は私の強みだと思っています。社会においても自分で考え行動し会社業務に生かしていきたいと思っています」

■林優季選手(セーリング)

「オリンピック種目の4メートル70センチの船(470級)にペアで乗っています。私はスキッパーというポジションで、舵を操り、戦略を組み立て、刻々と変化する風、波、他のヨットの位置を素早く判断する体力と頭脳が必要なポジションです。
 大学1年生から木村選手とペアを組み、3年連続でジュニアの世界選手権の権利を獲得でき、今年6月に開催される大会で良い成績が残せるようにトレーニングに励んでいます。
 セーリングで学んだ判断力、逆境にも負けない忍耐力、ペアで学んだ協調性を生かし、社内を活気付けることができるアスリートを目指すとともに、競技で活躍することで精一杯企業に貢献したいと思います」

■木村沙耶佳選手(セーリング)

「大学1年から林選手とペアを組み、3年連続でジュニアの世界大会の出場権を獲得するまでに成長することができました。世界大会に出場を重ねることで自然と気持ちがオリンピックに向かい、東京オリンピックに出たいという気持ちが芽生えてきました。先日、リオデジャネイロの選考に通った選手は高校からヨットを始めて3年あまりでオリンピックの出場を決めました。私たちにも勝つチャンスは十分にあると思っています。東京オリンピックに出場できるよう日々練習に励んでいます。
 アスリートとして成績を残すことでイメージアップにもつなげ、会社の皆様やお客様に会社の一員として信頼されるように努めていきたいと思っています」

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
小田卓郎選手(左)と倉林巧和選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
村上右磨選手(写真:アフロスポーツ)

■小田卓郎選手(スケート/スピードスケート)

「高校3年生のときに全日本距離別選手権で優勝し、世界選手権に出場することができました。高校卒業後は早稲田大学に進学しソチオリンピックを目指していましたが、腰の故障を抱え、選考会は5位で出場はかないませんでした。スケートを辞めようと思ったこともありましたが、父の『もっとやれるんだろう、だったらもっと本気でやればいい』という言葉に後押しされ、故障を乗り越え、いまではナショナルチームに選出されてトレーニングに励んでいます。
 昨シーズンは全日本距離別選手権の1500メートルで大会新での優勝。ワールドカップ(W杯)を転戦し、チームパシュートでは世界5位となりました。さらに世界距離別選手権では、1998年の長野オリンピック以来の一桁順位となる9位で終えました。スピードスケートの1500メートルではオリンピックのメダルはまだありません。悲願の初のメダルを獲得し活気あるニュースを届けたいと思っています。しかし、私は所属先がなく、大学を卒業しても満足に競技を続けられる環境ではありません。ぜひ企業に所属し、企業の一員として大会に出場することを強く希望しています」

■倉林巧和選手(自転車)

「チームパシュートでオリンピック出場を目指しています。この種目は4人1組で交代で先頭を走りながら4キロを走り、タイムを競います。日本のナショナルチームは世界ランキング16位で、この種目で東京オリンピックに出場してメダルを獲得することが目標です。個人の力では、強豪国に劣る部分もありますが、チーム戦では世界の強豪とも引けを取らずに戦えると考えています。
 私は大学3年のときに学生日本一になり、日本代表に選出されました。個人の成績は、長崎国体での優勝、全国都道府県対抗レースの優勝、海外では2大会連続でアジア選手権で優勝することができました。W杯ではチームパシュートで日本記録を更新できました。海外のレース経験が少ない中でこのような成績が残せたことは大きな自信になり、今後、海外のレースを多く重ねることで更なる技術面のレベルアップが図れると考えています。
 ケイリンの選手やロードの選手と違い、中距離選手は競技をしながら生活をしていくことができません。昨年度2名、私と同じ競技の選手がアスナビにエントリーし、企業に所属しながら活動しています。私も3人目の選手として、オリンピックでは“チームアスナビ”として頑張っていきたいと思います」

■村上右磨選手(スケート/スピードスケート)

「私が得意としている500メートルは日本のお家芸といわれ、多くのメダリストを輩出しています。ですが、前回のソチオリンピックはオランダ勢に惨敗するという結果になってしまいました。次は、自分が日本の男子500メートルの復活を成し遂げないといけないと強く思っています。そのために本格的なウエイトトレーニングを行い、パワーは世界のトップ選手に負けないくらい強くなりました。精神面においても、次はオリンピックの舞台で活躍するという強い意思を持ちジャパンカップでは3連勝して総合優勝することができました。昨年度の全日本スプリントでは3位に入り日本代表としてW杯に参戦しました。
 得意としているのはスタートからの100メートルで、W杯のレースでは100メートルは全体の1位で、世界記録保持者にも勝っていました。課題である後半のタイムを伸ばせばオリンピックでメダルが狙えると思っています。
 今後の目標としてはW杯でのメダルの獲得、来年2月の冬季アジア大会での優勝です。このスタートの速さを武器に平昌オリンピックでメダルを獲得し、日本の表彰台の復活を成し遂げたいと思っています」

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