MENU ─ ニュース
2014.03.20 その他活動

平成25年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 コンプライアンスとファンドレイジングを学ぶ

平成25年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 コンプライアンスとファンドレイジングを学ぶ
今回のセミナーにはJOC役職員、加盟団体関係者ら136人が参加(写真:アフロスポーツ)
平成25年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 コンプライアンスとファンドレイジングを学ぶ
冒頭のあいさつを行った青木剛JOC副会長兼専務理事(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は14日、味の素ナショナルトレーニングセンターで「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催しました。このセミナーは国民の求める社会的価値観に応え、より支持されるスポーツ団体としての組織力の強化を図る事を目的に行われるもので、今回はJOCオフィシャルパートナーのデロイトトーマツコンサルティング株式会社協力のもと、JOC役職員、加盟団体関係者ら136人が参加しました。

 冒頭、JOCの青木剛副会長兼専務理事があいさつを行い、「我々スポーツ団体の多くは、公益法人として税制優遇を受けて活動していることから、国民からの信頼なくしては成り立ちません。不適切な組織運営は指摘を受けた団体のみならず、スポーツ界全体への信頼を損なう可能性があります。我々スポーツ界においても、組織運営の透明化を図り、説明責任を果たすことに積極的に取り組まなければなりません」と述べ、今セミナーの重要性を説明しました。

平成25年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 コンプライアンスとファンドレイジングを学ぶ
「コンプライアンスの母」と紹介され登壇した達脇恵子さん(写真:アフロスポーツ)

■スポーツ団体として取り組むべきコンプライアンスとは

 第1部は「改めてコンプライアンスを考える」というテーマで、有限責任監査法人トーマツの達脇恵子さんが講義を行いました。達脇さんは、まずコンプライアンスの定義について「法規範だけではなく、社会規範と内部規範を合わせた3つの規範の遵守が必要」と述べ、さらに法令や諸規則の遵守だけでなく、「社会からの期待に応える」という意味も持つと説明。社会がスポーツ団体に期待していることとして、誠実な行動をとることがスポーツの品位やスポーツ界の信頼の向上につながるとの考えを示し、コンプライアンスの実践に必要な「しない風土」と「させない仕組み」について解説しました。

 続いて、事前に各加盟団体に対して実施したアンケート結果を発表。コンプライアンス体制の全体的な傾向として、(1)責任者を置くなどの組織体制づくりや、行動規範・規定に関する文書の整備は他の項目と比べて進んでいる、(2)運用面では「必要が生じたら都度実施」「実施していない」の割合が高い、(3)多くの競技団体でコンプライアンス計画が作成されていない、という3点を挙げ、各団体が実践している具体例とともに課題を明らかにしました。

 また、コンプライアンスを実現するためのポイントとして、組織リーダーの役割を説明。メンバーを正しい方向に導き、万が一コンプライアンス違反が起きた場合の適切な対応が重要だと述べました。そのほかにも行動規範の制定と浸透、リスクマネジメント、現場の状況を把握するための意識調査、内部通報制度の確立など、様々な施策を紹介しました。

 不正や不祥事を防止するために、それらが発生するメカニズムと、発生の芽をチェックする方法について、「店長による横領が監査で発覚した」というケーススタディを使い、不正の背景にあるとされる「3つのリスク要因(不正のトライアングル)」と、不正の芽をチェックするための「5つの窓」という視点で問題を解説。(1)やるべきことの徹底、(2)同じ組織の仲間への信頼、(3)活発なコミュニケーション、という「組織の3大基礎体力」の低下が、不正・不祥事の温床になると述べました。

平成25年度「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催 コンプライアンスとファンドレイジングを学ぶ
ファンドレイジングについて解説する長川知太郎さん(写真:アフロスポーツ)

■一般のファンから寄付を募る「ファンドレイジング」の基礎を学ぶ

 第2部では、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社の長川知太郎さんが登壇し、「ファンドレイジング」について講義をしました。ファンドレイジングとは、広義では「民間の非営利団体が活動のために資金を個人、法人、政府などから集める行為の総称」。一般的に寄付や会費、助成金などの財源獲得手段を指しますが、今回のセミナーでは一般のファンから寄付金をいただいて、スポーツ団体の運営や選手の強化に役立てることがテーマとして設定されました。

 長川さんはまず、ファンドレイジングという言葉そのものはあまり知られていないものの、「一般のファンから寄付をいただいて選手強化に役立てたい」と考える競技団体は少なからずいる、というアンケート結果を発表。一般生活者への対価として何を提供できるかがカギになるとし、芸能文化・スポーツに対する個人寄付市場の規模は約153億円と決して小さくなく、寄付をしたいと考える一般生活者は意外と多いと述べました。

 続いて、ファンドレイジングを成功に導くために、(1)支援者は誰でどういう人なのかを正確に理解する、(2)支援の見返りとして何をお返しできるかを常に意識する、(3)潜在的な支援者の呼びかけ方を考える、(4)「いくらでもいいから下さい」というのはご法度である、(5)新規獲得よりも既存の支援者を大事にする、という5つのポイントを解説。導入にあたり「何を、どんな順番で、どのくらいの期間で準備すればいいのか」をアドバイスするとともに、実例としてアメリカオリンピック委員会(USOC)が主催している寄付プログラムや、日本サッカー協会、日本障害者スポーツ協会の取り組みなどを紹介しました。

 そして、アンケートに寄せられた各競技団体の声から、ファンドレイジングに取り組む際の個別課題をピックアップし、取り組みにおけるPR方法や組織体制の整え方に関する質問に答えました。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を好機と捉え、競技者とファンの交流活性化に関心が高い団体が多いことから、ファンドレイジングの成功が期待できるとした反面、組織運営の透明性向上に向けては、団体の効率的な運営が大前提となるが、その点については、まだ課題が残ると指摘しました。

 最後は、進化論を説いたチャールズ・ダーウィンは、「生き残るのは最も強い者ではなく、最も賢い者でもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」と考えたと言われていると紹介。
「ファンドレイジングに興味はあるけれどなかなか手が出ないと思っている皆さんも、明日から1つでも2つでもいいので、今日とは違うことを試して、変化する団体になって下さい」とメッセージを送り、講義を締めくくりました。

ページをシェア

関連リンク


CATEGORIES & TAGS


その他活動 の最新ニュース

    最新ニュース一覧