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トリノ2006


スペシャルコラム

勝機を逃すな

長田渚左さん

あれよ あれよという間に、前半戦が終わったが、日本にはまだメダルがない。
オリンピック前にあった楽観ムードを思うと、その落差の大きさが際立つ。
どの競技団体にもテレビ局にも、こんなはずではなかったという湿った感じがぬぐえない。
これほどまでにもメダル圏突入への厳しさを誰が予期しただろうか。
ともあれ、あの楽観ムードには’04年アテネオリンピックの大勝イメージが底流にあったように思う。
結果には、いつも巾がある。その上限が出るか、下限がでるかで、印象が異なる。


写真提供:アフロスポーツ

メダルの期待が大きかったスピードスケートの加藤条治選手の6位は例外としても、その他の選手の結果はワールドカップの成績に准じている。
女子モーグルの上村愛子選手は、演技内容は良かったが、点数がのびずに5位。スキーの複合も6位。スピードスケートの岡崎朋美選手はわずかな差で4位。同じく及川佑選手も4位。女子のパシュートも4位。フィギュアの橋大輔選手は8位。
ハーフパイプで期待された成田、今井の両選手が活躍したワールドカップには、米国勢は出場していなかった。
兄妹の転倒は想定外だったとしても、気合だけでは、どうにもならないことを事前にもっと噛みしめておく必要があっただろう。

今一番気にかかるのは、選手村の雰囲気だ。落胆ムードが漂ってはいないだろうか。
何とかして、嫌なムードを断ちきってほしい。
選手は自分の事で精一杯だから、他競技をじっくり見ているヒマはないだろうが、メダルには置き換えられていなくても、充分に自己表現をしている競技もある。例えば女子のカーリング。強いカナダを破った冴えには、目を見張った。


写真提供:アフロスポーツ

このままでは終わらないでほしいという期待は大きい。むしろ、この沈滞ムードを誰がひっくり返すのかという注目もある。
容易ではないが、まだチャンスは残されている。

あえていう。メダル圏内突入には、何かが足りないのだ。振り返ると’04アテネオリンピックで、女子の柔道は大躍進をとげた。
7階級の内、6つのメダル。その内5つが金だった。
練習中にコーチも監督も、こちらの耳にもタコができそうなぐらい同じ事を言っていた。「力を出し切れ、ワザをかけ切れ、試合で勝ち切れ」である。
試合で良い所があったのに惜しい……ということはよくある。試合の流れ、展開はほとんど、こちらが握っていたのに、ちょっとしたことで勝機を逃してしまうことも少なくない。
だから99パーセント勝っていても1パーセントで負ける、それが大舞台、4年に1度の大会だからこそ、それがある。


写真提供:アフロスポーツ

諦めないでほしい。ほとんど負けていても残り2秒で勝利の女神が微笑することもある。たとえ結果でメダル獲得が「ゼロ」に終わろうとも、今はまだまだ前むきに闘ってほしい。
どんな状況であっても、ポジティブに闘いぬくことからしか、次は生まれないものだから。

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